マイクロインフルエンサーの動画活用|湘南の直売所が知るべき動向

湘南の直売所でスマートフォンを構えて撮影する発信者と地魚を並べる店主

「うちみたいな直売所は、有名インフルエンサーに頼むお金なんてない」——大磯や平塚で地魚や地場野菜を売る個人店の店主と話すと、こう言われることが多い。だが実際に伸びているのは、フォロワー数百万人の大物ではなく、地域や特定ジャンルに強い「マイクロ・ナノインフルエンサー」による、等身大の動画発信だ。

結論から言えば、湘南のような地域密着型の個人店にとって、マイクロインフルエンサーの動画活用は決して縁遠い話ではない。むしろ大企業のタレント起用よりも相性がいい場面すら多い。

この記事では、インフルエンサーマーケティング市場の最新調査データと、企業側のリアルな成功・失敗の声をもとに、湘南の直売所や個人店がこの波にどう乗ればいいかを、制作者としての現場感覚を交えて整理する。

  • 結論:縦型ショート動画のインフルエンサー活用市場は2024年時点で246億円、2029年には636億円(約2.6倍)まで伸びる見通し
  • 企業のインフルエンサーPRは約7割が「うまくいった」と回答する一方、「購買につながらなかった」が最大の悩みという調査結果もある
  • 湘南の直売所・個人店には、大物より地域や客層とのつながりが濃いマイクロ・ナノインフルエンサーのほうが向きやすい

なぜ今、インフルエンサー動画マーケティングが
急速に伸びているのか

株式会社サイバー・バズと株式会社デジタルインファクトが2024年11月7日に発表した共同調査によると、国内のソーシャルメディアマーケティング市場は2024年時点で1兆2,038億円(前年比113%)に達し、2029年には2024年比約1.8倍の2兆1,313億円まで拡大すると見込まれている。その中でもインフルエンサーマーケティング市場は2024年に860億円(前年比116%)、2029年には約1.9倍の1,645億円に達する見通しだ。

特に伸びが際立つのが、TikTokの普及をきっかけにInstagramやYouTube、LINEにも広がった縦型ショート動画によるインフルエンサー起用だ。同調査では、この「インフルエンサーマーケティング(縦型ショート動画)」の市場規模を2024年時点で246億円(前年比137%)と推計し、2029年には約2.6倍の636億円に達すると予測している。以下に主要な数字を整理する。

区分 2024年実績 2029年予測
インフルエンサーマーケティング全体 860億円 1,645億円(約1.9倍)
うち縦型ショート動画 246億円 636億円(約2.6倍)

この数字が意味するのは、動画広告市場全体の成長(動画広告市場、初の1兆円へで詳しく触れた)の中でも、「第三者が語る動画」への投資が特に加速しているということだ。企業が自ら発信する情報より、実際に使っている人の声のほうが信頼されやすいという消費者心理を、多くの企業が動画の形で取りに行き始めている。


企業のインフルエンサーPR、
成功率とつまずきどころ

縦型ショート動画市場の成長を表す上昇する棒グラフの図解

株式会社PRIZMAが2025年4月1日に発表した「インフルエンサーPRの実態調査」(2025年3月25日〜26日実施、インフルエンサーを事業プロモーションに活用したBtoC企業担当者507人が対象)では、「とてもうまくいった」が18.7%、「ややうまくいった」が55.8%で、合計すると約74%が肯定的な評価をしている。一方で、感じた課題を尋ねると次のような結果になった。

感じた課題 回答割合
認知はされたが購買につながらなかった 31.6%
工数がかかる 25.6%
意図と違う投稿内容になった 24.1%
思ったより拡散されなかった 21.1%

この数字が意味するのは、インフルエンサー起用は「頼めば自動的に成果が出る」施策ではないということだ。特に最大の悩みである「購買につながらない」は、フォロワー数の多さだけでインフルエンサーを選んでしまい、実際の客層とズレが生じたときに起こりやすい。だからこそ、大きなリーチより「誰に届くか」の精度を重視するマイクロ・ナノインフルエンサーの発想が意味を持ってくる。


湘南の直売所・個人店にこそ
「マイクロ」が向く理由

小さな店舗と地域の人々をつなぐマイクロインフルエンサーのイメージ図解

大企業が起用する大物インフルエンサーは、フォロワー数こそ多いが、フォロワーの居住地も興味関心もバラバラなことが多い。一方、平塚や大磯の地魚・地場野菜、湘南グルメを日常的に発信しているマイクロ・ナノクラスの発信者は、フォロワーの多くが実際にその地域に住んでいたり、週末に足を運べる距離にいたりする。つまりリーチの「量」より「質」で、直売所や個人店の商圏とぴったり重なりやすい。

「演出しすぎない動画」が信頼を生む

私たちの撮影チームでは、発信で大事なのは伝えたいことをできるだけ自然体で伝えることだと考えている。現場では常に目立たない場所にカメラを置き、被写体にカメラを意識させない自然な受け答えを撮ることを意識している。台本どおりに演じてもらうよりも、素の会話や素の作業風景のほうが、見る人には「リアルな現場」として伝わりやすい。この考え方は、マイクロインフルエンサーが撮る飾らない動画とも相性がいい。取れたての魚をその場でさばく様子、朝どれ野菜を並べる手元——そうした素の場面こそ、大きな制作費をかけずに信頼を積み上げる素材になる。

口コミ動画の活かし方はお客様の声・口コミ動画の活かし方でも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。


小さく始めるための実践ステップ

湘南の直売所で店主と自然な会話を撮影する発信者

大きな予算をかけずに始めるなら、次のような順番で進めるのが現実的だ。

  1. まずは常連客やSNSで自店を紹介してくれている一般ユーザーを探す(すでに好意的に発信している人が最初の候補になる)
  2. 地域名や商品名(例:「平塚 地魚」「大磯 直売所」)で日常的に発信しているマイクロ・ナノクラスの発信者を検索する
  3. フォロワー数だけでなく、コメント欄の反応や、実際にその地域の内容を発信しているかを確認する
  4. 依頼した投稿であることが分かるよう、PR表記・タイアップ表記を必ず付けてもらう

最後の表記ルールは軽視できない。依頼した投稿であることを隠すと、景品表示法のステルスマーケティング規制に抵触するおそれがある。表示ルールの詳細はステマ規制とは?湘南の事業者がSNS動画で守るべき表示ルールにまとめている。

よくある質問

Q. マイクロインフルエンサーとナノインフルエンサーの違いは何か?

A. 明確な統一基準はないが、フォロワー数が比較的少ない発信者をまとめてこう呼ぶことが多い。湘南の個人店にとっては、フォロワー数そのものより、対象地域や客層とどれだけ近い距離感で発信しているかで選ぶほうが実務的だ。

Q. 個人店でもインフルエンサーに動画を依頼できるか?

A. 依頼できる。大規模なタレント起用に比べ、地域や特定ジャンルに強いマイクロ・ナノクラスは少ない予算感で始めやすいとされ、まずは常連客への協力依頼から試すこともできる。

Q. 自社で動画を作るのとインフルエンサーに任せるのは、どちらがいいか?

A. どちらか一方ではなく、使い分けが現実的だ。商品情報や店の基本情報は自社発信で正確に伝え、第三者としての信頼感がほしい場面ではインフルエンサーの視点を借りる、という住み分けを考えたい。

まとめ

インフルエンサーマーケティング市場、特に縦型ショート動画による活用は今後も伸びが見込まれる分野だ。一方で企業側の調査では「購買につながらない」という悩みも根強く、大きなリーチを追うだけでは成果が出にくいことも分かってきている。

湘南の直売所や個人店にとっては、フォロワー数の大きさより、地域や客層と近い距離感で発信しているマイクロ・ナノインフルエンサーのほうが、むしろ相性がいい選択肢になり得る。次のステップとして、まずは自店をすでに好意的に発信してくれている常連客やユーザーが誰かを言語化することをすすめる。そこから、演出しすぎない自然な動画づくりを一緒に組み立てていけばよい。

工務店の動画制作費用相場|施工事例・SNS発信にいくらかけるべきか

湘南の工務店の建築現場でジンバルを使い動画を撮影する制作者

「モデルハウスに足を運んでくれる人は減っているのに、契約したお客様に聞くと『SNSで見て知った』という声が増えている」——湘南で注文住宅やリフォームを手がける工務店の経営者と話すと、こうした声をよく聞く。動画やSNSに力を入れたほうがいいのは分かっていても、いくら予算をかければいいのか判断できずにいる工務店は少なくない。

結論から言えば、工務店の動画制作は施工事例紹介・お客様インタビュー型で30万〜60万円、完成披露や現場密着を含むドキュメンタリー型で60万〜120万円が一つの目安になる。ただし今の工務店にとって金額そのもの以上に重要なのは、新設住宅着工が減りリフォーム需要が伸びるという市場の変化に合わせて、何を撮り、どこに出すかという「配分」の設計だ。

この記事では、2026年の住宅市場データと工務店の集客チャネル調査をもとに、動画にかけるべき予算の考え方とタイプ別の費用相場を、制作者としての現場感覚を交えて整理する。

  • 結論:施工事例紹介・お客様インタビュー型は30万〜60万円、完成披露・密着ドキュメンタリー型は60万〜120万円が目安
  • 2025年度の新設住宅着工戸数は71.1万戸(前年度比12.9%減)と低水準が続く一方、住宅リフォーム市場は7兆5,119億円(前年比2.5%増)へ拡大しており、工務店が発信すべき内容も変わりつつある
  • 工務店の集客チャネル調査では自社HP(48.5%)・SNS広告(46.3%)・SNS投稿(45.5%)が効果実感の上位で拮抗しており、動画は1本作って複数チャネルに使い回す設計がコストパフォーマンスを左右する

なぜ今、工務店の動画予算は
「新築中心」から見直しが必要なのか

国土交通省の住宅着工統計によると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の新設住宅着工戸数は71万1,171戸で、前年度比12.9%減とリーマンショック後の水準をも下回る低さになった。注文住宅の完成事例を撮って集客するというこれまでの動画の作り方だけでは、母数そのものが縮んでいる状況だ。

一方で、矢野経済研究所が2026年7月16日に発表した「住宅リフォーム市場に関する調査」では、2025年度の住宅リフォーム市場規模は7兆5,119億円(前年比2.5%増)と推計され、2026年度は7.7兆円(同1.9%増)まで拡大すると予測されている。団塊ジュニア世代の持家がリフォームの適齢期を迎えていることに加え、資材費・人件費の高騰による工事単価の上昇、窓の断熱改修を対象とした補助事業の後押しが成長要因として挙げられている。

この数字が意味するのは、工務店が動画で見せるべき対象が「注文住宅の完成事例」だけでは足りなくなっているということだ。断熱改修やキッチン・浴室のリフォームといった、ビフォーアフターが分かりやすい現場も、これからは動画の主役になり得る。


工務店の動画制作費用相場
——タイプ別の価格早見表

新設住宅着工の減少とリフォーム市場拡大という住宅市場の変化を表す図解

工務店のお客様からいただく相談内容をもとに、私たちが提示することが多い価格帯を整理すると次のようになる。以下に相場を整理する。

タイプ 尺の目安 費用相場
施工事例紹介・お客様インタビュー型 2〜3分 30万〜60万円
完成披露・密着ドキュメンタリー型 3〜5分 60万〜120万円
ドローン外観・外構空撮併用型 2〜4分 80万〜150万円
SNSショート動画セット(施工事例・現場密着) 15〜60秒×複数本 20万〜50万円(セット)

まず作るなら施工事例紹介・お客様インタビュー型が起点になることが多い。予算に余裕があれば、外観や立地、外構の見せ方を強化できるドローン空撮併用型を組み合わせると訴求力が上がる。建設業全体の費用感は建設業の動画制作費用相場でも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。

リフォーム現場は「定点撮影」で追加コストを抑えやすい

リフォーム案件は着工前・工事中・完成後を同じアングルで撮る定点撮影を仕込んでおくだけで、追加の撮影日をほぼ増やさずにビフォーアフター動画の素材が手に入る。新築の完成披露に比べて撮影日数がかさみにくいのは、リフォーム動画のコスト面での利点と言える。

工務店の集客チャネル、
動画はどこに効いているか

株式会社ビズ・クリエイションが2026年1月19日〜31日に実施した「工務店集客チャネル調査2026」(住宅会社向けクラウド「KengakuCloud」導入企業134社対象)では、直近3ヶ月で集客に効果を実感した媒体として、自社HPが48.5%(前回2025年7月調査の42.2%から+6.3pt)で最も高く、次いでSNS広告(有料)が46.3%、SNS投稿(オーガニック)が45.5%と続いた。ポータルサイトは26.9%、紙チラシ・DMは33.6%だった。

この数字が意味するのは、上位3チャネルが僅差で拮抗しているということだ。つまり動画は「SNSだけの素材」ではなく、自社HPの施工事例ページ、SNS広告のクリエイティブ、SNS投稿のオーガニック発信という3つの場所に使い回せて初めて、費用対効果が最大化する。1本の動画を撮って終わりにせず、尺やアスペクト比を変えて複数チャネルに展開する前提で予算配分を考えたい。

私たちの撮影チームでも、施工現場のインタビューでは目立たない場所にカメラを置き、職人やお客様にカメラを意識させない自然な受け答えを撮ることを常に意識している。台本どおりに演じてもらうよりも、素の作業風景や素の会話のほうが、検討者には「リアルな現場」として伝わりやすく、演出コストもかからない。


費用を抑えながら発信を続けるコツ

動画制作費用のタイプ別内訳を積み木のブロックで表した図解
  1. まず1件の施工事例を「型」として作り、以降の現場は同じ構成・同じ画角で撮って編集の手間を減らす
  2. お客様インタビューは台本を作り込みすぎず、聞きたい質問を3〜4個決めておく程度にとどめる
  3. リフォーム現場は着工前・工事中・完成後の定点撮影を必ず入れる(追加コストがほぼゼロで説得力が上がる)
  4. ドローン撮影は複数現場をまとめて1回の飛行日に集約すると、機材・操縦者の費用を分散できる

補助金・助成金を動画制作に活用できないか確認するのも、費用を抑える有効な手段だ。制度の考え方は動画制作に補助金・助成金は使えるかにまとめている。

よくある質問

Q. 工務店の動画は新築とリフォーム、どちらを先に撮るべきか?

A. 現在依頼が多い方、または今後注力したい方を優先すればよいが、2026年度のリフォーム市場は7.7兆円まで拡大が見込まれている。リフォームのビフォーアフター事例をまだ持っていない工務店は、優先度を上げる価値がある。

Q. 動画は何本あれば十分か?

A. 決まった本数はないが、まずは施工事例紹介・お客様インタビュー型を1〜2本作り、そこから15〜60秒のSNSショート動画に切り出して自社HP・SNS広告・SNS投稿の3チャネルに使い回す設計が現実的だ。

Q. ドローン撮影は必須か?

A. 必須ではない。ただし外観や立地、外構、周辺環境まで一目で伝えたい注文住宅では、検討効果を重視するなら組み合わせを検討する価値がある。

まとめ

工務店の動画制作費用は、施工事例紹介・お客様インタビュー型で30万〜60万円、完成披露・密着ドキュメンタリー型で60万〜120万円が一つの目安になる。ただし、新設住宅着工が減りリフォーム市場が拡大するという構造変化の中で、金額以上に大事なのは「新築だけでなくリフォーム現場も撮る」「1本の動画を自社HP・SNS広告・SNS投稿の複数チャネルに使い回す」という配分の設計だ。

SNSでの集客術に関心があれば湘南の工務店がSNSで選ばれるにはもあわせて参考にしてほしい。次のステップとして、まずは直近の施工事例のうち「一番お客様に見せたい現場」を1件言語化することをすすめる。そこが定まれば、動画の構成も予算も自然と絞り込めるはずだ。

介護施設の採用難に動画は効くか|湘南のSNS発信術ガイド

湘南の介護施設でスタッフがスマートフォンとジンバルで動画を撮影する様子

「求人を出しても応募が来ない。ホームページには施設の写真を載せているが、それだけでは雰囲気が伝わっている気がしない」——湘南でデイサービスや訪問介護、特別養護老人ホームを運営する人と話すと、こうした悩みをよく聞く。人手不足は介護業界全体の構造的な課題であり、写真とテキストだけの求人票では、他施設との違いがどうしても伝わりにくい。

結論から言えば、介護施設が動画・SNS発信に取り組む価値は年々高まっている。ただし、やみくもに施設紹介動画を撮っても効果は薄い。何を撮り、何を撮ってはいけないかを整理してから始めるかどうかで、成果は大きく変わる。

この記事では、介護業界の最新の人材動向データと、SNS発信の実施率・効果に関する調査結果をもとに、湘南の介護施設がどこから動画発信を始めればよいか、そして利用者への配慮としてどこに注意すべきかを、制作者としての現場感覚を交えて整理する。

  • 結論:介護サービス職の有効求人倍率は3.70倍(2026年6月・厚生労働省)と高止まりが続き、動画・SNS発信で施設の雰囲気を伝える意義は増している
  • SNSで発信する事業所は3年で11.5%→16.3%に増加し、「採用に効果があった」と答えた割合も1年で16.8%→27.6%に急伸している
  • 一方でSNS経由の就職者はまだ0.2%にとどまり、利用者への配慮を守りながら「今から始めても遅くない」段階にある

なぜ今、介護施設にも
動画発信が必要になっているのか

厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況」によると、2026年6月時点の介護サービスの職業の有効求人倍率は3.70倍(パートを除く常用)で、営業職や商品販売職などと並んで高水準の職種のひとつになっている。求職者1人に対して3件以上の求人がある計算で、応募を「待つ」求人票だけでは選ばれにくい状況が続いている。

一方で、介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」では、介護職員の離職率は12.4%で、全産業平均の14.2%を下回り、過去最低水準を維持していることも分かっている。つまり課題は「辞めてしまうこと」より「入口で選ばれないこと」に寄っている。この数字が意味するのは、いったん働き始めてもらえれば定着しやすい業界だからこそ、応募につながる最初の接点=求人情報や施設の見え方の勝負になっているということだ。

写真数枚とテキストの求人票では、職場の空気感、スタッフ同士のやり取り、利用者との距離感までは伝わらない。動画はここを補える数少ない手段のひとつだ。


介護施設のSNS・動画発信は
実際どこまで進んでいるか

介護業界の人手不足と有効求人倍率の高さを表す図解

同じ「令和7年度介護労働実態調査」では、採用活動として「SNSを活用して自事業所のアピールポイントを発信」している事業所の割合が、年々増えていることも示されている。以下に推移を整理する。

年度 SNSで発信している事業所の割合 「採用に効果があった」と回答した割合
令和5年度 11.5%
令和6年度 14.8% 16.8%
令和7年度 16.3% 27.6%

発信している事業所自体は全体の2割弱にとどまるが、発信している事業所の中で「効果があった」と感じる割合はこの1年でほぼ倍増している。まだ取り組んでいる施設が少ないからこそ、先に始めた施設の手応えが際立って伸びている段階だと読める。

ただし同じ調査では、現在の法人に就職した経路として「法人や施設が発信するSNS」を挙げた介護労働者は全体の0.2%にとどまるという数字もある。これは動画・SNSが無意味という意味ではなく、業界全体としてまだ「発信し始めたばかり」の段階であることを示している。だからこそ、今から取り組む施設には十分な伸びしろがある。

何を撮ればいいか
何を撮ってはいけないか

休憩中に会話する介護施設スタッフの様子

介護施設の動画発信で最初につまずきやすいのは、「利用者を主役にした施設紹介動画」を最初に狙ってしまうことだ。他業種以上に、まず考えるべきは撮っていいものと撮ってはいけないものの線引きになる。

撮りやすく、応募につながりやすい題材

  • 職員インタビュー(この仕事のやりがい・1日のスケジュール・入職の決め手)
  • スタッフ同士の休憩中の何気ない会話や雰囲気
  • 施設の清潔感や設備、送迎車両などハード面の紹介
  • 研修・勉強会の様子(専門性が伝わる)

配慮が必須になる題材

利用者本人が映るレクリエーションや食事風景は、応募者の心に響きやすい一方でもっとも配慮が求められる題材だ。本人または家族の同意なしに個人が特定できる形で公開しない、認知症のある方については判断能力への配慮も含めて家族の同意を丁寧に取る、といった手順を撮影前に必ず施設内で確認しておく必要がある。SNS運用に積極的な事業所の中には、投稿のたびに本人・家族へ個別に同意を確認する運用を徹底しているところもある。

私たちの撮影チームが現場で大事にしているのは、「カメラを意識させない自然体」を意識することだ。これは企業PR動画全般で心がけていることだが、高齢の利用者が過ごす介護施設ではなおのこと重要になる。目立たない場所にカメラを置き、いつも通りの時間が流れているところを撮ることで、不自然な“演出感”のない、信頼できる雰囲気の動画になりやすい。


無理なく続けるための
体制のつくり方

撮影から同意確認、編集、SNS投稿までの流れを表す図解

動画・SNS発信で失敗しやすいもう一つのパターンは、担当者を1人だけ決めて丸投げし、その人が忙しくなった瞬間に更新が止まることだ。介護現場は人手に余裕がないからこそ、最初から「専任担当を置く前提」で設計しないほうがうまくいく。

  1. スマートフォン1台と簡単な三脚だけで、シフトの合間に撮れる題材から始める
  2. 投稿は法人の公式アカウントに一本化し、複数人で交代しながら運用できる体制にする
  3. コメントや問い合わせには早めに、なるべく担当者本人の言葉で返信する

とくに3つ目のコメント対応は見落とされがちだが、応募を検討している人ほど、投稿への返信の丁寧さから「働く人を大事にする施設か」を読み取っている。派手な編集より、地道な更新と対応の積み重ねが効いてくる領域だ。

なお、動画にかける費用は最初から高額である必要はない。個人店・小規模店舗が動画にかけられる予算感で触れたように、まずはスマートフォン撮影で運用を始め、手応えが見えてきた段階で職員インタビューなど一部をプロに依頼する、という段階的な進め方でも十分成果は出せる。

よくある質問

Q. どれくらいの頻度で投稿すればいいか?

A. 週1本を目安に、無理なく続けられるペースから始めるのが現実的だ。更新が途切れる方が、更新頻度が低いことより印象を悪くしやすい。

Q. 利用者の顔を映さなくても採用効果はあるか?

A. ある。職員インタビューや施設の雰囲気、送迎車両や設備紹介だけでも、写真とテキストだけの求人票よりは働くイメージが格段に伝わりやすい。

Q. 建設業や美容室など、他業種でも採用動画の考え方は同じか?

A. 基本の考え方は近い。建設業の採用難は動画で変えられるかでも触れたとおり、業種を問わず「働く姿をそのまま見せる」ことが応募者の不安を減らす。ただし介護は利用者への配慮という業種特有の制約があるため、その線引きは事前に整理しておく必要がある。

まとめ

介護サービス職の有効求人倍率は3.70倍という高水準が続き、写真とテキストだけの求人票で選ばれるのは年々難しくなっている。一方で介護施設のSNS発信はまだ全体の2割弱にとどまり、取り組んでいる事業所の効果実感は急速に伸びている段階にある。今から始める施設にも十分な伸びしろがある領域だ。

大切なのは、いきなり利用者を主役にした動画を狙うのではなく、職員インタビューや施設の雰囲気など撮りやすいところから始め、利用者が映る題材については同意の取り方を先に施設内で決めておくことだ。採用動画とは何かで解説した基本を踏まえつつ、介護ならではの配慮を加えて設計するとよい。

次のステップとして、まずは自施設で「撮っていいもの」と「同意が必要なもの」を一度洗い出してみることをすすめる。そのうえで何から撮り始めるべきか迷う場合は、私たちのような制作者に相談してみるのも一つの方法だ。

士業事務所の動画発信、何を撮る?|湘南の信頼獲得基礎知識

湘南のオフィスで士業の専門家がインタビュー撮影を受ける様子

「顧問先を増やしたいが、派手な広告を打つわけにもいかない」——湘南で税理士や社労士、行政書士として事務所を構える人と話すと、こうした声をよく聞く。士業の看板は、結局のところ事務所と担当者本人の“人となり”だ。ホームページに顔写真とプロフィールを載せているだけで、動画にはまだ手が回っていない事務所は少なくない。

結論から言えば、士業事務所が最初に撮るべきは、派手な宣伝動画ではない。専門家本人が、よくある質問に短く答える一問一答形式の動画だ。編集も凝った演出も要らず、話す内容さえ決まれば1本あたり数分で撮り終えられる。

この記事では、税理士・社労士・行政書士といった士業事務所が動画発信を始めるときに何を撮ればいいか、逆に映してはいけないものは何か、そして無理なく続ける体制はどう作るかを、制作者としての現場感覚と一次情報から整理する。

  • 結論:最初の1本は「専門家本人が短い質問に答える動画」から始めるのが現実的
  • 事務所紹介やスタッフ紹介より、専門性が伝わる一問一答・セミナー切り抜きのほうが信頼構築に効きやすい
  • 守秘義務・個人情報・広告表示のルールは、撮影前に必ず所属団体の規定で確認しておく

なぜ今、士業にも動画発信が
必要になっているのか

ICT総研が2026年7月に発表した「2026年度 SNS利用動向に関する調査」によると、2025年末時点の国内SNS利用者数は8,519万人(利用率79.7%)に達し、うちYouTubeの利用率は67.6%でLINEに次ぐ2位、満足度は77.7ポイントで調査対象の全サービス中最高だった。動画コンテンツを中心とするサービスが上位を占める結果になっている。

この数字が意味するのは、経営者や個人が情報収集の入り口として動画に触れる機会が、すでに特別なものではなくなっているということだ。士業もまた例外ではない。文章とプロフィール写真だけの事務所と、担当者が話す姿を見せている事務所とでは、初めて問い合わせる側の安心感に差が出やすくなっている。

とはいえ、士業に求められているのは知名度ではなく信頼だ。バズる動画ではなく、専門家としての受け答えが自然に伝わる動画のほうが、この業種には向いている。


士業事務所が最初に撮るべき動画は何か

1本の動画が一問一答やセミナー切り抜きなど複数の形式に展開するイメージのフラットデザイン図解

専門家本人が答える一問一答

「相続の相談はいつからすればいいか」「就業規則の見直しはどのくらいの頻度が目安か」——顧問先や見込み客から実際に受けた質問を、そのまま1問1分程度で撮る。台本を丸暗記する必要はなく、いつも顧問先に答えているトーンのままでよい。むしろ多少言葉に詰まるくらいのほうが、実在する専門家として自然に映る。

セミナー・勉強会の切り抜き

すでに顧問先向けの勉強会やセミナーを行っている事務所であれば、その一部を撮影して切り出すだけで、新しく話す内容を考える負担なく動画が作れる。人前で説明している自然な様子は、収録専用に撮る動画よりも説得力を持つことが多い。

顧問先の声(許可を得たうえで)

「相談してから対応が早かった」「専門用語を噛み砕いて説明してくれた」といった顧問先の生の感想は、事務所側の言葉より説得力を持つ。ただし顧問先の業種や固有名詞が特定される内容は、本人の明確な同意なしに使わない。

以下に、この3種類の特徴と向いている用途を整理する。

種類 特徴 向いている用途
一問一答 準備が軽く、短時間で撮れる ホームページ・SNSでの継続発信
セミナー切り抜き 既存の活動から作れるが、収録前提の会場・機材調整が要る 専門性・実績の裏付け
顧問先の声 説得力は高いが、同意取得と編集の配慮が必要 問い合わせ直前の後押し

映してはいけないもの——
撮影前に確認すべきこと

書類の正確性と守秘義務を確認するイメージのフラットデザイン図解

士業の動画で最も気をつけるべきは、守秘義務と個人情報だ。撮影の背景に顧問先の書類やパソコン画面が映り込む、打ち合わせスペースのホワイトボードに社名が残ったままになる、といったことは実務の現場では意外と起こりやすい。撮影前に「映る範囲に何が置かれているか」を必ず確認する工程を挟んでほしい。

もう一つ見落とされがちなのが、業務広告に関するルールだ。税理士・弁護士・社会保険労務士など多くの士業には、それぞれの法律・会則に基づく広告規制があり、誇大な表現や断定的な効果の主張は認められないことが多い。「必ず節税できる」「絶対に勝てる」といった言い切りは、動画であっても書面と同じ基準で扱われると考えたほうがよい。撮影台本ができた段階で、自身の所属団体の広告に関する規定を一度確認しておくと安心だ。


無理なく続けるための体制づくり

ミラーレスカメラで自然体の専門家を撮影する様子

Mikatus株式会社(現freee株式会社)が2022年4〜5月に全国の会計事務所150件を対象に行った実態調査では、顧問先獲得のための工夫として「ホームページの改善」を挙げた事務所が43.0%にのぼった。動画そのものへの投資はまだ限定的だが、Web上での見え方に力を入れる事務所がすでに半数近くに達しているという事実は、次の一手として動画に注目が集まりやすい土壌があることを示している。

私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎない自然体の撮り方だ。目立たない場所にカメラを置き、いつも話しているトーンのまま収録することを心がけている。士業の場合、この“構えなさ”がそのまま専門家としての誠実さの印象につながりやすいと感じている。

続けるコツは、月1本など無理のないペースを決めてしまうことだ。展示会・商談で効く会社紹介動画の作り方でも触れたとおり、対面の場で使い回せる動画を1本作っておくと、発信の負担を抑えながら商談の質も上げられる。


よくある質問

Q. 動画に出ることに抵抗があります。どうすればいいですか?

A. 無理に演じる必要はない。いつも顧問先に説明しているトーンのまま、短い質問に答える形から始めるのがすすめだ。1本目は公開せず社内で見返すだけにしても、慣れる練習になる。

Q. 撮影は自分たちでやるべきですか、外注すべきですか?

A. 一問一答のような短い動画はスマートフォンでの内製から始めても構わない。セミナー収録や複数人が登場する会社紹介動画のように、音声・照明の質が信頼感に直結する場面は、外注や機材貸し出しを検討したほうがよい。

Q. 顧問先医療機関やクリニックのような広告規制とは違うのですか?

A. 規制の中身は業種ごとに異なるが、「誇大・断定的な表現を避ける」という考え方は共通している。クリニック・治療院の動画集客で解説した医療広告ガイドラインの考え方は、士業が自分の業界のルールを確認する際の参考にもなる。


まとめ

SNS利用者の8割近くが動画を日常的に見る時代になり、士業事務所にとっても「顔の見える専門家」であることの価値は上がっている。とはいえ最初から凝った動画を目指す必要はない。専門家本人が短い質問に答える一問一答から始め、守秘義務と広告ルールを確認する工程さえ挟んでおけば、無理なく続けられる。

湘南で事務所を構える士業の人には、まず自分がこれまで顧問先から何度も聞かれた質問を3つ書き出すことをすすめたい。それがそのまま、最初の3本の台本になる。AI時代に人が関わる価値でも触れたように、AIが情報をまとめる時代だからこそ、専門家本人の言葉で語る動画の価値はむしろ高まっている。

次のステップとして、まずは撮りたい質問と、映してはいけない情報の範囲を言語化することからすすめたい。そこが整理できれば、撮影自体は難しい作業ではない。

AI動画翻訳とインバウンド発信|湘南の宿泊業が知るべき最新動向

湘南の民宿でスタッフがスマートフォンとジンバルでルームツアー動画を撮影する様子

「外国人のお客様に部屋の雰囲気を伝えたいが、英語の案内文を作るだけで力尽きている」——湘南で民宿やゲストハウスを営む人と話すと、こうした本音を聞くことがある。写真と翻訳文だけでは、実際の広さや光の入り方、スタッフの人柄までは伝わりにくい。

結論から言えば、動画の多言語対応はもはや大手宿泊施設だけのものではない。AIによる自動翻訳・自動吹き替えの実用化によって、外国語ナレーターを雇わずとも、日本語で撮った動画を複数言語で届けられる環境が整いつつある。

この記事では、訪日外国人の消費動向の最新データと、YouTubeのAIオートダビング機能という具体的な技術動向をもとに、湘南の宿泊業・小売店が動画の多言語発信にどう向き合うべきかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:訪日消費額は2026年4-6月期で2兆5,096億円に達し、湘南の入込観光客数も過去最高水準が続く
  • YouTubeのAIオートダビング(日本語対応済み)により、動画の多言語化が「専門業者に頼む特別な工程」ではなくなりつつある
  • ただしAI翻訳には限界があり、手法ごとの向き不向きを理解したうえで使い分けるのが現実的

観光庁の最新データで見る
——湘南にも押し寄せるインバウンドの波

観光庁が発表した「インバウンド消費動向調査」2026年4-6月期(1次速報)によれば、訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円(前年同期比+0.2%)、1人当たりの旅行支出(消費単価)は24.4万円(同+3.3%)だった。消費額上位は米国・台湾・中国・韓国・香港の順で、欧米豪からの客が単価を押し上げている構図がうかがえる。

地域に目を向けると、神奈川県の「令和6年入込観光客調査」では、湘南エリアの入込観光客数が5,035万8千人(前年比+10.5%)となり、藤沢市は湘南海岸・江の島への来訪増で過去最高を更新した。県全体の宿泊客数も令和6年に2,023万人となり、2年連続で過去最高を記録している。

この数字が意味するのは、外国人観光客はもはや東京・大阪・京都のような大都市だけの現象ではなく、湘南のような地域にも確実に流れ込んでいるということだ。観光DXと地域PR動画の潮流でも触れたとおり、地域の側から情報を発信する動きは加速している。宿泊業や土産物店にとって、外国人客への発信を「まだ先の話」で片付けられる状況ではなくなりつつある。


AIオートダビングで動画の多言語化が
「特別な準備」でなくなった

1本の動画が複数言語に展開されるイメージを示すフラットデザイン図解

2026年、YouTubeの「オートダビング」機能が日本語にも本格対応した。チャンネル運営者が機能を有効にしておけば、視聴者は動画の音声トラックを切り替えるだけで、AIが生成した吹き替え音声を聞けるようになる仕組みだ。字幕を読ませるのではなく、音声そのものを自動生成する点が大きな変化である。

これまで動画を多言語化するには、翻訳会社に発注し、ネイティブのナレーターを手配し、収録・編集し直すという工程が必要だった。個人経営の宿や小さな土産物店にとって、これは現実的な選択肢ではなかったはずだ。AIによる自動翻訳・自動吹き替えの実用化は、この「多言語版を作る」という工程そのもののハードルを下げつつある。

だからといって、いきなり英語・中国語・韓国語すべてに対応する必要はない。まずは日本語で丁寧に撮った1本の動画を用意し、プラットフォーム側の自動翻訳・自動吹き替え機能に乗せてみる——それくらいの身構えで十分に始められる時代になったということだ。


湘南の宿泊業・小売店は何を撮ればいいか
——実例で考える

湘南の海沿いの商店街でスマートフォンの動画を見る外国人観光客

宿泊業の場合

民宿やゲストハウスであれば、まず撮るべきは客室・水回り・共用スペースの雰囲気を伝えるルームツアー動画だ。言葉が通じなくても、部屋の広さや清潔感、光の入り方は映像なら一目で伝わる。スタッフが自然体で挨拶をする短いカットを添えると、到着前の不安を減らす効果も期待できる。

小売店・土産物店の場合

土産物店であれば、商品そのものよりも「誰がどう作っているか」「地元でどう愛されているか」を映すほうが、外国人客の記憶に残りやすい。湘南という土地の空気感——海沿いの通り、地元の人が立ち寄る様子——を織り込むことで、商品単体の説明よりも強い印象を残せる。

いずれの場合も、私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎない自然体の撮り方だ。言葉の壁がある相手にこそ、取り繕った演出よりも、素の空気感がそのまま伝わる映像のほうが信頼を得やすいと感じている。


多言語対応、手法別に何が向いているか

動画を多言語化する手法は一つではない。以下に主な選択肢と、それぞれの向き不向きを整理する。

手法 特徴 向いている用途
人力翻訳+字幕 精度・ニュアンスは最も高いが工数とコストがかかる 公式サイト掲載など、間違いが許されない発信
AI自動字幕 短時間で複数言語に対応できるが誤訳の確認は必要 SNSのショート動画など更新頻度が高い発信
AIオートダビング 音声で伝わるため字幕を読ませる必要がない YouTubeのルームツアー・施設紹介動画
ネイティブナレーター別撮り 最も自然な聞こえ方になるがコストが高い 看板となる公式PR動画1本に絞って投資する場合

個人経営の宿泊業や小売店であれば、まずはAI自動字幕かAIオートダビングから試し、反応を見ながら看板動画だけ人力翻訳やネイティブナレーターに投資する、という段階的な進め方が現実的だ。AI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるかで触れたように、そもそも動画が見つけられる状態を作ることも並行して考えたい。


AI翻訳・AI吹き替えの限界も知っておく

動画撮影からAI翻訳・多言語音声化までの流れを示すフラットデザイン図解

AIによる自動翻訳・自動吹き替えは便利だが、万能ではない。地名や施設名の読み方を誤る、方言や口語表現のニュアンスが抜け落ちる、といったことは現状でも起こり得る。特に予約方法や料金、キャンセル規定など「間違えると信頼を損なう情報」は、AI任せにせず人の目で確認する工程を残すべきだ。

考えてみてほしい。せっかく興味を持ってもらえても、誤訳が原因で誤解が生まれれば、かえって信頼を落としかねない。AIは「発信のハードルを下げる道具」であって、「発信の責任を肩代わりしてくれる道具」ではない、という線引きを持っておくことをすすめる。


よくある質問

Q. 多言語対応の動画は何から始めればいいですか?

A. まずは日本語のルームツアー動画や店舗紹介動画を1本用意し、YouTubeのAIオートダビングやSNSのAI自動字幕機能に乗せてみるのが現実的な第一歩だ。専用の多言語版を最初から作り込む必要はない。

Q. 個人経営の宿でも英語ナレーターを雇う必要がありますか?

A. 必須ではない。AIオートダビングやAI自動字幕である程度は対応でき、看板となる公式PR動画など「間違えられない1本」だけネイティブナレーターや人力翻訳に投資する、という使い分けで十分に始められる。

Q. AI翻訳の誤訳が心配です。どう対策すればいいですか?

A. 料金・予約方法・キャンセル規定など間違えると信頼を損なう情報は、AI翻訳結果を人の目で確認する工程を残すべきだ。雰囲気を伝えるだけの映像パートと、正確さが必須のテキスト情報を分けて考えるとよい。


まとめ

訪日外国人の旅行消費は過去最高水準で推移し、湘南のような地域にもインバウンドの波は確実に届いている。AIオートダビングをはじめとする自動翻訳・自動吹き替え技術の実用化によって、動画の多言語対応はもはや大手企業だけの特権ではなくなった。

だからこそ、湘南の宿泊業や小売店にも「まず1本、日本語の動画を丁寧に撮る」ところから始めてほしい。手法ごとの向き不向きを理解し、間違えられない情報だけは人の目で確認する——その線引きさえ押さえておけば、無理なく発信を続けられるはずだ。

次のステップとして、まずは自施設・自店舗のどの場面を動画にすれば外国人客に伝わるかを言語化することをすすめる。そこが決まれば、多言語対応の技術は後からいくらでも追加できる。

クリニック・治療院の動画制作費用相場|湘南の医療広告と価格目安

湘南のクリニックでスタッフが撮影される様子

「動画を作ったほうがいいのは分かるが、クリニックが広告にお金をかけていいものか、正直よく分からない」——湘南でクリニックや治療院を経営している人と話すと、こういう本音を聞くことがある。飲食店や美容室と違い、患者に「選ばれる」ための発信には独特のためらいがつきまとう業種だ。

結論から言えば、クリニック・治療院の動画予算は「他業種より小さめに、しかし狙いを絞って」組むのが実態に近い。経営データを見る限り、クリニックの広告宣伝費はもともと売上に対する比率が低く、大きく張る業種ではない。一方で動画広告そのものの市場は伸び続けており、患者が受診前に動画で情報を集める流れは止まっていない。

この記事では、クリニックの広告宣伝費に関する経営データ、動画広告市場の最新統計、そして医療広告ガイドラインという3つの一次情報をもとに、湘南のクリニック・治療院がいくらまで動画にかけてよいのか、そして限られた予算をどこに振るべきかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:クリニックの広告宣伝費は売上の平均0.7%程度(医療法人)にとどまり、他業種より小さめの予算感が一般的
  • 動画広告市場は2025年に推定開始以来初めて1兆円を突破しており、動画そのものへの追い風は強い
  • 医療広告ガイドラインでビフォーアフターや比較優良表現は原則禁止のため、予算は「演出」より「発信できる内容の設計」に振るべきだ

クリニックの広告宣伝費は売上の0.7%
——他業種と比べた予算感

限られた予算の中で動画にかける割合を示すフラットデザイン図解

税理士事務所のnktaxが自社の顧客データを分析した「クリニック経営データ分析」によれば、個人事業のクリニックの広告宣伝費比率は売上に対して平均0.6%、医療法人では0.7%、全体では0.7%程度だった。診療科別に見ると、眼科が最も高く約1.0%、内科が最も低く約0.4%という結果も示されている。

この数字が意味するのは、年間売上5,000万円のクリニックなら、年間の広告宣伝費はおおよそ35万円前後が一つの目安になるということだ。これは、以前学習塾の動画制作費用相場で見た教育業種や、他の店舗業種と比べても控えめな水準だ。クリニックは「広告で呼び込む」より「口コミと立地で選ばれる」色がもともと強い業種であり、その経営体質が数字にも表れている。

だからといって動画に使う予算がゼロでよいわけではない。この0.7%という枠の中で、どこに振り分けるかの優先順位を考えることが、この記事の主題になる。


動画広告市場は2025年に「初の1兆円」
——クリニックにも追い風

動画広告市場の成長を表すフラットデザイン図解

電通が2026年3月5日に発表した「2025年 日本の広告費」によれば、2025年の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)となり、2021年から5年連続で成長し、4年連続で過去最高を更新した。インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で初めて4兆円を超え、総広告費に占める構成比も50.2%と初めて過半数に達している。中でも動画(ビデオ)広告は前年比121.8%の1兆275億円となり、推定開始以来初めて1兆円を突破した。

この伸びを支えているのは、SNS上の縦型動画広告やコネクテッドTVといった、生活者が日常的に触れる動画接点の拡大だ。患者やその家族が受診先を選ぶ前に、まずスマートフォンで動画を見て比較検討する——という行動は、もはや特殊なことではなくなっている。

ただし、クリニックがこの市場の伸びをそのまま自分たちの広告費増加に結びつける必要はない。重要なのは「広告費を増やす」ことではなく、限られた0.7%の枠の中で、動画という手段の優先度を上げることだ。


「原則禁止」の中で何を撮るか
——医療広告ガイドラインが引く線

クリニックの診察室でスタッフと患者が自然に会話する様子をカメラマンが撮影する様子

厚生労働省が定める医療広告ガイドライン(「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」)は、ウェブサイトやSNSに載せる動画コンテンツも広告規制の対象になり得ると位置づけている。他院との比較優良表現や、治療の効果を示すビフォーアフター画像・動画の無条件掲載は、原則として禁止されている項目だ。

詳細な自由診療の情報を載せたい場合には「限定解除」という要件を満たす必要があり、連絡先の明示に加えて、費用やリスク・副作用の併記が求められる。つまり、派手な演出やビフォーアフターに費用をかけるほど、表現のチェックや説明責任のコストも増えていく構造になっている。医療広告ガイドライン改正が続く理由で詳しく触れているので、あわせて参考にしてほしい。

私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎない自然体の撮影だ。スタッフの日常の対応や、院長が患者に語りかける様子をありのままに近い温度感で撮る動画は、演出コストを抑えられるうえ、規制上のグレーゾーンにも触れにくい。派手な効果を狙うより、こうした等身大の信頼感に予算を振るほうが、クリニックには合理的だ。


何にいくらかける?
クリニック動画の費用配分の目安

以下に、私たちが現場で提案することの多い動画の種類と、費用感の目安を整理する。

種類 狙い 費用相場
スタッフ紹介・院内の雰囲気動画 通院前の不安を減らし、スタッフの人柄を伝える 5万〜15万円
院長・スタッフインタビュー動画 診療方針や人柄を語り、信頼を積み重ねる 20万〜40万円
クリニック紹介動画(ホームページ用) 立地・設備・スタッフを総合的に紹介する 30万〜60万円
SNSショート動画(継続運用) 日常の様子を継続発信し、想起の頻度を上げる 月3万〜8万円程度

表の中で優先度が高いのは、スタッフ紹介とインタビュー動画の2つだ。クリニックは「誰が診るか」への関心が高い業種であり、設備の豪華さよりも人柄が伝わる映像のほうが、比較段階での差別化に直結しやすい。まずはクリニック・治療院の動画集客で紹介した始め方と合わせて、低予算のSNS発信から着手するのが現実的だ。


よくある質問

Q. クリニックの動画制作費用はいくらから始められますか?

A. スタッフ紹介やSNSショート動画中心なら5万〜15万円程度から始められる。院長インタビューを含む本格的なクリニック紹介動画は30万〜60万円程度が目安だ。まずは低予算のSNS発信から始め、反応を見ながら投資を広げる進め方が現実的だ。

Q. 患者のビフォーアフターは動画で使えますか?

A. 医療広告ガイドライン上、治療の効果に関するビフォーアフター画像・動画の無条件掲載は原則禁止されている。使う場合は限定解除の要件(費用やリスクの併記など)を満たす必要があり、慎重な設計が求められる。

Q. 広告宣伝費はどれくらいが目安ですか?

A. 経営データ分析では、クリニックの広告宣伝費は売上の平均0.7%程度(医療法人)とされている。診療科によって差があり、眼科などで比較的高め、内科などで低めの傾向がある。動画の予算もこの枠の中で考えるのが現実的だ。


まとめ

クリニック・治療院の動画予算は、他業種のように大きく振れる性質のものではない。経営データが示す通り、広告宣伝費はもともと売上の0.7%前後という慎重な枠の中にある。

だからこそ、派手な演出やビフォーアフターに費用を割くより、スタッフ紹介や院長の人柄が伝わる自然体の動画から始めることをすすめる。医療広告ガイドラインの制約の中でも、等身大の信頼感を伝える動画であれば、無理なく続けられるはずだ。

次のステップとして、まずは自院の広告宣伝費の中で動画にどれだけ振り分けられるかを言語化することをすすめる。そこが決まれば、どの種類の動画から手をつけるべきかは自然と見えてくるはずだ。

ルームツアー動画で内見を制する|湘南の不動産仲介活用術

湘南の賃貸物件でスタッフがスマートフォンとジンバルでルームツアー動画を撮影する様子

「内見の予約を入れたのに、当日連絡なくキャンセルされた」——湘南で賃貸仲介や管理を担当している人なら、一度はこういう経験があるのではないだろうか。遠方からの転勤・進学の問い合わせほど、この「来ない内見」が起きやすい。

結論から言えば、ルームツアー動画は内見前の比較検討を後押しする、いま費用対効果の高い一手だ。動画で先にふるいにかけてもらうことで、実際に足を運ぶ人の本気度が上がり、案内する側の手間も減っていく。

この記事では、内見数と成約率の一次データをもとに動画が果たす役割を整理したうえで、湘南の不動産仲介・管理会社が実際に何を撮り、どこに出せばよいかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:賃貸の内見は平均2.7件で成約に至るとされ、動画は「本命候補」を絞り込むための事前フィルターになる
  • オンライン内見の利用率は約2割にとどまるが、対面派の内見前チェックにも動画そのものは使われている
  • 撮るべきは「通し歩き」「生活動線」「周辺環境」の3種。凝った演出より自然体の撮り方が信頼につながる

「内見2.7件で成約」
——数字が示す動画の役割

多数の物件候補が動画によって絞り込まれ本命候補に近づく様子を表すフラットデザイン図解

株式会社リクルートが運営するSUUMOリサーチセンターの「2022年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」(2023年9月29日発表)によれば、入居者が成約までに見学した物件数は平均2.7件だった。単純計算で、内見1件あたりの成約確率はおよそ37%になる。

この数字が意味するのは、「内見に呼ばれた時点で、すでに有力候補の一つに絞られている」ということだ。つまり内見の前段階——ネットで写真や間取りを見比べている段階——で、どれだけ候補から脱落せずに残れるかが勝負になる。ここで、静止画だけの物件情報との差になるのが動画の有無だ。

同センターの「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」では、オンライン内見の利用率はオンラインのみが13.5%、対面との併用が6.2%で、合わせて約2割にとどまるという結果も出ている。裏を返せば、湘南のような地域でもまだ8割の人が対面での内見を選んでいるということだ。ここで効いてくるのが、対面内見の前に見る動画になる。オンライン内見ほどの手間をかけずに、対面前の絞り込みに動画を使う人は、この統計以上に多いと私たちは現場で感じている。


撮るべきルームツアーは3種類
——「通し歩き」「生活動線」「周辺環境」

私たちが賃貸物件の動画を制作する際、最初に整理するのは「何を撮るか」より「何を見せて安心してもらうか」だ。以下に、種類ごとの狙いと尺の目安を整理する。

種類 狙い 尺の目安
通し歩き(玄関→各部屋) 間取り図だけでは伝わらない広さ・動線の実感を伝える 1〜2分
生活動線(収納・水回り) 住んだときの使い勝手を先回りして見せる 30秒〜1分
周辺環境(駅・商店街・海) 湘南らしい立地の魅力を伝え、契約後の後悔を減らす 1分前後

表の中でも優先度が高いのは、通し歩きと生活動線の2つだ。周辺環境は湘南・平塚・大磯のような「暮らしの魅力込みで選ばれる」エリアでは特に効くが、撮影の手間を考えると通し歩きと生活動線から始めるのが現実的だ。

撮影は「カメラを意識させない自然体」を優先する

私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎないことだ。ルームツアーは特に、演出を作り込みすぎるとかえって「盤石すぎる部屋」に見えてしまい、生活感のなさが不信感につながることもある。案内スタッフが実際に扉を開け閉めしながら歩く様子を、ありのままに近い温度感で撮るほうが、SNSに慣れた層には自然に届く。スマートフォンとジンバル程度の機材でも、この考え方さえ押さえれば十分に始められる。

動画をどこに出すか
——自社サイト・ポータル・SNSを1本で使い回す

賃貸物件の室内で収納や水回りの扉を開けながら生活動線を撮影する手元のクローズアップ

全国賃貸住宅新聞が2021年1月7日号(「部屋探しポータルの活用戦略」全6回シリーズ第4回)で報じたところによると、賃貸仲介のクラッシー・ホームズは2012年から動画を撮りためており、掲載物件のほぼ全てに動画をつけている。同社は月額140万円をポータルサイトへの広告出稿にかけ、月間299件の反響を得ているという。動画付きの物件ページは、そうでないページと並んだときにアイコンで一目でわかり、閲覧者の目を引きやすくなる、という同社の説明も紹介されている。

湘南の中小の仲介・管理会社が同じ予算をかけるのは現実的ではないが、「1本撮った動画を複数チャネルで使い回す」考え方は規模に関わらず有効だ。自社サイトの物件ページ、ポータルサイトの動画欄、InstagramやLINE公式アカウントへの再利用など、置き場所を変えるだけで届く相手が広がる。地域集客の文脈ではGoogleマップ(MEO)×動画で地域集客を強くするでも解説した通り、検索や地図経由の動線と組み合わせるとさらに効果が出やすい。

オンライン内見・IT重説の普及率から見る
湘南で動画が効く理由

国土交通省が宅建業者を対象に実施した令和5年度調査(公益財団法人不動産流通推進センター公表)では、IT重説の導入率が18%、重要事項説明書等の電子化(書面電子化)が11%にとどまるという結果だった。制度が使えるようになってから数年経つが、現場への浸透はまだこれからの段階にある。

この数字は、遠隔での取引そのものがまだ一般的でないことを示している。だからこそ、動画を「オンライン内見の代わり」として使うのではなく、「対面内見に進むかどうかを決める判断材料」として位置づけるのが、いまの湘南の実情に合っている。特に大学進学や転勤で遠方から平塚・大磯エリアの物件を探す人にとって、事前に部屋の雰囲気を動画で確認できるかどうかは、わざわざ現地に来て内見するかどうかの意思決定に直結する。

入居後のフォローにも動画は使い回せる

賃貸管理会社であれば、入居後の設備の使い方説明や、退去時の原状回復の目安を動画で残しておくことも有効だ。問い合わせ対応の手間を減らせるだけでなく、既存入居者との関係づくりにもつながる。LINE公式アカウントを使った継続的な情報発信についてはLINE公式アカウント×動画でリピーターを増やす|湘南の教室・店舗活用術で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

1本の物件動画が自社サイト・ポータルサイト・SNS・LINEへ展開されていく様子を表すフラットイラスト

よくある質問

Q. ルームツアー動画は何分くらいが適切か?

A. 通し歩きなら1〜2分、生活動線や周辺環境は30秒〜1分が目安だ。長すぎる動画は最後まで見てもらえないため、物件の魅力が伝わる範囲で短くまとめるのがよい。

Q. 空室が埋まるたびに撮り直す必要があるか?

A. 間取りが同じであれば使い回せる場合が多い。ただし内装や家具の有無が変わった場合は、実際と違う印象を与えないよう撮り直しをすすめる。

Q. 動画制作にどれくらいの費用がかかるか?

A. 撮影・編集の内容次第で幅があるため、動画制作の費用相場【完全ガイド】で相場を整理している。まずは通し歩き動画1本から始めて、反響を見ながら本数を増やす進め方が現実的だ。

Q. 誇大な演出になっていないか、どう確認すればよいか?

A. 実際の広さ・眺望・生活動線と違う印象を与えていないかを、投稿前に自分たちで一度部屋を歩いて見比べるとよい。優良誤認表示に触れるおそれがある大げさな加工や演出は避けるべきだ。

まとめ

賃貸の内見は平均2.7件で成約に至るとされ、内見に呼ばれた時点ですでに有力候補の一つに絞られている。だからこそ、その前段階を制する動画の役割は大きい。通し歩き・生活動線・周辺環境という基本の3種類から、カメラを意識させない自然体の撮り方で始めれば、湘南の仲介・管理会社でも十分に取り組める。

次の一歩として、まずは自社の主力物件1つを通し歩き動画で撮ってみて、問い合わせの反応がどう変わるかを見てほしい。撮り方や活用先で迷う場合は、私たちのような制作者に一度相談してみることをすすめる。

パーソナルジムの動画発信、何を撮る?|湘南の差別化基礎知識

湘南のパーソナルジムでトレーナーがスマートフォンとジンバルでトレーニング風景を撮影する様子

「うちみたいな小さなパーソナルジムが、動画に手を出す余裕なんてない」——湘南でパーソナルジムを営むトレーナーから、こうした声を聞くことがある。日々の指導や体験カウンセリングに追われる中で、動画は後回しにされやすいテーマの一つなのだろう。

結論から言えば、動画発信はパーソナルジムにとって「余力があればやること」ではなくなりつつある。全国でフィットネス施設が増え続ける一方、倒産も過去最多ペースで起きている今の市場では、何を撮り、どこに出すかを知っているジムとそうでないジムの差が、入会を検討する人の目にはっきり見えてしまう。

この記事では、フィットネス業界の一次データをもとに市場の実態を押さえたうえで、パーソナルジムが動画で差別化するために「何を撮るべきか」を、動画の基礎知識として制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:全国のフィットネス施設は増え続ける一方、倒産も過去最多ペースで起きており、「似た施設が乱立する中でどう選ばれるか」が動画の役割になる
  • Instagramの利用率は全世代で5割を超え、パーソナルジムの主要ターゲットである20〜30代は7割前後とさらに高い。届け先はまずSNSのショート動画になる
  • 撮るべき動画は「トレーナー紹介」「トレーニング風景」「お客様の声」の3種が基本。ビフォーアフター表現は誇大表現の規制に注意が必要だ

パーソナルジムは今、
「乱立」と「淘汰」が同時に進んでいる

矢野経済研究所の調査(2025年7〜10月実施)によれば、全国のフィットネス施設数は2025年8月時点で13,876施設にのぼり、直前1年間だけで1,266施設が新たに開業したという。駅近・低価格・無人型の「コンビニジム」やパーソナルジム、マシンピラティススタジオなど、業態の多様化を背景に出店ペースは衰えていない。

その一方で、帝国データバンクが2026年8月13日に公表した調査(負債1,000万円以上・法的整理による倒産が対象)では、2026年1〜7月のフィットネスクラブの倒産が23件(前年同期は19件)に達し、過去最多ペースで推移していると報告されている。年間では初めて40件に到達する可能性もあるという。同調査では、この23件のうち6件がパーソナルジム業態だったことも指摘されている。

施設は増え続けているのに、倒産も同時に増えている——これは典型的なオーバーストア(供給過多)の状態だ。開業のハードルが下がったぶん、似たような設備・料金のジムが近隣にいくつも並びやすく、選ばれ続けることの難しさがそのまま数字に表れている。私たちが制作者として湘南のジムオーナーと話していても、「体験カウンセリングまでは来てもらえるが、その前の比較段階で他院と差がつかない」という悩みをよく聞く。動画は、その比較段階で「他とどう違うか」を伝えるための手段になる。


動画を届ける場所は
——Instagramの利用率から逆算する

似たようなジムが乱立する中で動画を持つ施設だけが際立つ様子を表すフラットデザイン図解

総務省の令和7年版情報通信白書によれば、Instagramの全世代利用率は52.6%となり、前年(48.4%)から4.2ポイント増加した。年代別では10代・20代・30代がいずれも7割前後(20代で最も高く78.0%)と高水準で、40代・50代でも5割を超えている。

パーソナルジムの主要顧客層である20〜40代は、まさにこのInstagram利用率が高い層と重なる。つまり、動画を「どこに置くか」で最初に検討すべきなのはホームページの固定コンテンツではなく、Instagramのリール(ショート動画)だ。動画はテレビを超えたかという世代別のメディア利用の話は動画はテレビを超えたか|総務省調査で読む湘南の動画戦略でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

SNSでの見せ方という点では、業種は違っても美容室・サロンの取り組み方が参考になる部分は多い。美容室のショート動画集客術|湘南・平塚で新規客を増やすで紹介している「日常の一コマを短く見せる」考え方は、パーソナルジムにもそのまま応用できる。

撮るべき動画は3種類
——狙いと頻度の目安

パーソナルジムが最初に揃えるべき動画は、複雑に考えなくてよい。以下に、種類ごとの狙いと投稿頻度の目安を整理する。

動画の種類 狙い 投稿頻度の目安
トレーナー紹介動画 「誰が教えるか」を伝え、入会前の不安を減らす プロフィール欄に固定で1本
トレーニング風景(自然体) 施設の空気感・指導スタイルを見せる 週1〜3本
お客様の声・成果紹介 第三者の言葉で効果を裏付ける 月2〜4本
施設・設備紹介 通う前の不安(清潔感・混雑度)を解消する 開業時・改装時に随時

表の中でも優先度が高いのは、トレーナー紹介とトレーニング風景の2つだ。パーソナルジムは「誰と二人三脚で取り組むか」が入会の決め手になりやすい業態であり、施設の豪華さよりもトレーナーの人柄が伝わる映像のほうが、比較段階での差別化に直結しやすい。

撮影は「カメラを意識させない」ことを優先する

私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎないことだ。トレーニング風景は特に、演出を作り込みすぎるとかえって「広告っぽさ」が出て信頼を損ないやすい。指導の様子をありのまま切り取るくらいの温度感のほうが、SNSに慣れた層には自然に届く。スマートフォンとジンバル程度の機材でも、この考え方さえ押さえれば十分に始められる。

ビフォーアフター表現は
——表現規制の落とし穴に注意

スマートフォンでショート動画のフィードをスクロールする手元のクローズアップ

パーソナルジムの動画で特に反応を集めやすいのが、体型の変化を見せる「ビフォーアフター」だ。ただし、この表現には注意が要る。実際の効果を大きく超えて誰にでも同じ結果が出るかのように見せる表現は、景品表示法が禁じる優良誤認表示(実際よりも著しく優れていると誤認させる表示)に触れるおそれがあると一般に指摘されている。

対策として有効なのは、期間・食事指導の有無・個人差があることを画面内のテキストや説明文で明記することだ。誇張を避けつつ「継続すればここまで変われる可能性がある」という誠実な見せ方に徹すれば、ビフォーアフター自体を封印する必要はない。判断に迷う表現は、投稿前に一度立ち止まって確認する習慣をすすめる。

内製でできる範囲と、
プロに任せるべき場面

トレーナー紹介・トレーニング風景・お客様の声の3種類の動画がつながるフラットイラスト

日々のトレーニング風景やちょっとした一言コメントは、トレーナー自身のスマートフォンで内製するのが現実的だ。継続的な発信は、外注コストをかけ続けるより現場で撮り続けるほうが長続きしやすい。

一方で、開業時やリニューアル時にホームページの顔になるトレーナー紹介動画・施設紹介動画は、構成と照明を整えたプロの制作に一度任せる価値がある。ここで作った映像を後から切り出せば、日常投稿用の素材としても使い回せる。内製と外注をどう線引きすべきかは業種を問わず悩みどころで、動画制作は内製と外注どちらが得かでも判断基準を整理しているので、あわせて読んでほしい。

よくある質問

Q. 会員数の少ない小さなパーソナルジムでも動画は必要か?

A. むしろ小規模なジムほど効果が出やすい。大手のような広告予算がなくても、トレーナーの人柄が伝わる動画1本で比較検討中の見込み客に直接アプローチできる。

Q. ビフォーアフター動画は絶対に出してはいけないのか?

A. 出してはいけないわけではない。期間や個人差、食事指導の有無などの条件を明記し、誇張を避ければ活用できる。不安がある表現は投稿前に確認する習慣をすすめる。

Q. 動画の撮影頻度はどれくらいが目安か?

A. トレーニング風景であれば週1〜3本、お客様の声のような重めのコンテンツは月2〜4本が目安だ。無理なく続けられる頻度から始め、反応を見ながら調整するのがよい。

Q. スマホ撮影だけでも十分か?

A. 日常投稿であれば、スマートフォンとジンバル程度で十分に始められる。開業時の顔になる動画など、じっくり見せたい場面だけプロに任せるという使い分けが現実的だ。

まとめ

全国のフィットネス施設は増え続ける一方、倒産も過去最多ペースで起きており、パーソナルジムは似た施設が乱立する中で選ばれ続けることを求められている。ターゲット層の利用率が高いInstagramを中心に、トレーナー紹介・トレーニング風景・お客様の声という基本の3種類から動画発信を始めれば、比較検討段階での差別化につながる。

次のステップとして、まず自院のトレーナー紹介動画が今の状態で「誰が教えているか」を十分に伝えられているかを見直すことをすすめる。何から撮ればよいか迷う場合は、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。

動画はテレビを超えたか|総務省調査で読む湘南の動画戦略

テレビを見る年配の人物とスマートフォンで動画を見る若い人物の対比、湘南の海辺の光

「うちのお客さんは年配の方が多いから、動画よりチラシのほうが効くのでは」——湘南で店舗や事業を営む経営者から、こうした声を聞くことがある。動画の話をすると、なんとなく「若い人向けの手段」というイメージが先に立つのだろう。

結論から言えば、その感覚はもう半分しか正しくない。総務省の最新調査では、インターネットの利用時間がテレビ視聴時間を上回る状態が続いており、しかも世代によって「どちらの情報を信じるか」がはっきり分かれ始めている。動画が効くかどうかは年代だけで決まらず、その年代が何を信じているかで決まる。

この記事では、総務省とサイバーエージェントの一次データをもとに、テレビとネット動画をめぐる利用時間・信頼度の実態を整理したうえで、湘南の事業者がターゲットの年代に応じて動画をどう使い分けるべきかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:インターネット利用時間はテレビを上回り続けているが、世代によって「信じているメディア」は逆転していない
  • 10〜40代はネットの情報を信頼し、50〜70代はテレビの情報を信頼する傾向がはっきり出ている(総務省調査)
  • 動画広告市場も2026年に1兆円超えの見込みで、投資は加速している。だからこそ狙う年代に合わせた見せ方の設計が要る

動画はテレビを「数字の上で」超えたか
——総務省・令和7年度調査の実態

総務省情報通信政策研究所が2026年6月に公表した「令和7年度情報通信メディアの利用時間と生活行動に関する調査報告書」によれば、全年代平均のインターネット利用時間は春季183.9分(前年比+2.1分)、秋季192.9分(前年比+9.2分)だった。一方でテレビ(地上波・BS・CS)視聴時間も春季156.1分、秋季189.2分と、実は前年から伸びている。

つまり「テレビが急速に見捨てられている」という単純な話ではなく、両方とも視聴時間は伸びながら、ネットがテレビを上回る差を保っているというのが実態に近い。以下に主要な数値を整理する。

調査時期 インターネット利用時間 テレビ視聴時間
令和7年度・春季 183.9分 156.1分
令和7年度・秋季 192.9分 189.2分
令和6年度・全年代(平日) 181.8分 154.7分

前年度(令和6年度)の調査では、休日の40代で初めてインターネット利用時間がテレビ視聴時間を上回り、60代ではテレビ視聴時間が大きく減少したことも報告されている。年を追うごとに、ネット優位の年代層が下から上へ広がっているという読み方ができる。


時間より重要なのは「どちらを信じているか」
——世代で分かれる情報の受け止め方

同じ総務省調査では、利用時間だけでなく「情報の信頼度」も世代別に調べている。結果は明快で、10〜40代はインターネットから得る情報への信頼度が高く、50〜70代はテレビから得る情報への信頼度が高いという傾向が出ている。情報を得る手段としても、10〜50代は「インターネット」中心、60〜70代は「テレビ」中心だった。

これは湘南の事業者にとって実務的な意味を持つ数字だ。ターゲットが20〜40代中心の業態であれば、動画をSNSやWeb経由で届けたときに「信じてもらいやすい土壌」がすでにある。逆にターゲットが60代以上を含む業態では、動画を作っても届け方(テレビ的な安心感のある演出、紙媒体との併用、口コミとの組み合わせ)まで設計しないと、内容が良くても信頼にはつながりにくい。

世代によってテレビとスマートフォン動画への信頼度が分かれることを表すフラットデザイン図解

「見てもらえる」と「信じてもらえる」は別の問題

私たちが現場で動画を作る際にいつも意識しているのは、再生数や視聴時間だけでなく「この動画を見た人が身構えずに信じられるか」だ。過度に作り込まれた演出は、特にネットの情報に慣れた層ほど「広告っぽさ」を敏感に感じ取る。私たちの撮影チームでは、被写体にカメラを意識させすぎない自然体の画づくりを常に心がけているが、これは飽きさせないためだけでなく、世代を問わず「取ってつけた感」を減らし、信頼感を損なわないための実務上の判断でもある。

動画広告への投資も
過去最速のペースで増えている

利用時間・信頼度の変化を裏づけるように、動画への広告投資も急速に伸びている。サイバーエージェントが実施した国内動画広告の市場調査によれば、2025年の動画広告市場は8,855億円で前年比122%の成長、2026年には1兆437億円に達する見込みだという。中でも縦型動画広告は2025年に前年比155.9%の2,049億円まで伸び、成長のけん引役になっている。市場全体の詳しい内訳は動画広告市場、初の1兆円へ|湘南の中小企業が今動くべき理由でも解説しているので、あわせて読んでほしい。

スマートフォン向けの動画広告需要は7,053億円で、動画広告需要全体の8割を占める。ここでも「ネットの動画に慣れている層」への投資が先行しているのが分かる。テレビからネットへ、そして横長からスマホの縦型へという主戦場の移り変わりについてはテレビ→YouTube→ショート動画、映像の主戦場はどう移ったか【制作者視点】でも詳しく触れている。

湘南の事業者は、ターゲットの年代で
動画の見せ方を変えるべきだ

パーソナルジムでスマートフォンを使って縦型動画を撮影しながら指導するトレーナーの様子

たとえば湘南で新しくパーソナルジムを開いたオーナーを考えてみよう。想定顧客が20〜30代中心なら、長尺のCM的な動画よりも、トレーナーの人柄や施術の様子をスマホで撮った縦型のショート動画のほうが、信頼を得やすい層に直接届く。編集で盛りすぎず、トレーニング風景をそのまま切り取るくらいの温度感でよい。

一方、湘南で不動産仲介を営む会社であれば、顧客層は20代の一人暮らし探しから60代以上の住み替え相談まで幅広い。この場合は一つの動画で全世代を狙うのではなく、SNS用の短い物件紹介はネットに慣れた層向けに、担当者の人柄や地域の実績をじっくり見せる長尺のインタビュー動画は自社サイトやYouTubeに置いて、テレビ的な「見て安心する」層にも届く設計にするのが理にかなっている。

考えてみてほしい。同じ「動画を作る」という投資でも、ターゲットの年代によって効果の出方はまったく違う。次のステップとして、まず自社の主要顧客が何歳前後で、ネットとテレビのどちらを信じる傾向が強い層かを言語化することをすすめる。

よくある質問

Q. うちは高齢のお客様が多いのですが、動画は意味がありますか?

A. 意味はある。ただし総務省調査では50〜70代はテレビの情報を信頼する傾向が強いため、SNS単独で完結させず、店頭のモニターやWebサイトのトップに動画を置くなど「テレビ的に安心して見られる」導線と組み合わせるのがすすめだ。

Q. ネットの信頼度が高い若い世代には、どんな動画が向いていますか?

A. 作り込みすぎない縦型のショート動画が向いている。過度な演出は「広告っぽさ」として敬遠されやすいため、現場の自然な様子を短く見せる方が、信頼を得やすい傾向がある。

Q. 総務省の調査はどこで確認できますか?

A. 総務省情報通信政策研究所が「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」として毎年公表しており、公式サイトで報告書全文が公開されている。

まとめ

テレビからスマートフォン動画へ投資が伸びていく様子を表すフラットデザインの成長グラフ

インターネットの利用時間はテレビを上回り続けているが、それは「テレビが信じられなくなった」ことを意味しない。むしろ世代によって信じるメディアがはっきり分かれ、その差はここ数年でさらに広がっている。動画広告市場が2026年に1兆円を超える見込みであることも、この変化の裏づけと言える。

湘南で事業をする以上、狙う顧客の年代は業態ごとに違う。だからこそ「動画を作るかどうか」より先に、「自社の顧客はどちらのメディアをどれくらい信じているか」を見極めることが、投資を無駄にしない第一歩になる。動画の活用先を横断的に整理したい場合は作った動画、どこでどう使う?活用先マップ【完全版】も参考にしてほしい。まずは自社の顧客層を言語化することから始めることをすすめる。

学習塾の動画制作費用相場|生徒募集動画にいくらかけるべきか

湘南の明るいオフィスで塾長と動画制作者が見積もり資料を確認する様子

「うちみたいな小さな塾が、動画にお金をかける余裕なんてあるのだろうか」——学習塾の経営者や教室長からは、こうした声をよく聞く。チラシやポスティングに比べて動画は未知の出費に見えるぶん、いくら払えば妥当なのか判断がつきにくいのだろう。

結論から言えば、学習塾の動画は数十万円のフル制作でなくても始められる。目的を「入会検討中の保護者の不安を解消すること」に絞れば、数万円台の小さな動画から、講師紹介や授業風景を撮る本格的な生徒募集動画まで、費用のレンジは幅広い。大切なのは金額の大小より、塾の規模と目的に合った動画タイプを選ぶことだ。

この記事では、学習塾業界の市場動向を一次データで押さえたうえで、動画タイプ別の費用相場、費用を左右する要因、そして限られた予算をどう配分すべきかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:学習塾の動画は「生徒募集(新規)」と「保護者との関係維持(既存)」で目的を分け、予算も別々に考えるのが妥当だ
  • 費用相場はタイプにより数万円台〜100万円超まで幅があり、講師や生徒の自然な様子を短く見せるだけなら小予算でも始められる
  • 学習塾市場は少子化下でも横ばい〜微増が続いており、限られたパイの中で「選ばれる塾」になるための可処分予算として動画を位置づける塾が増えている

少子化でも学習塾市場は
横ばい——だからこそ動画に意味がある

矢野経済研究所が2025年10月に発表した国内教育産業市場調査によれば、学習塾・予備校市場は教育産業(主要15分野計・2024年度2兆8,555億7,000万円、前年度比0.7%増)の中で最大規模の分野でありながら、事業者間の業績の好不調を背景に停滞傾向にあると分析されている。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査でも、学習塾業界の売上高は2023年時点で約5,812億円と、10年前(約4,041億円)から約44%伸びている一方、少子化で子どもの絶対数は減り続けている。

つまり「子ども一人当たりに塾がかけられる教育投資額は増えているが、奪い合う生徒の数は減っている」という構図だ。市場規模が横ばい〜微増を保っているのは、一人当たり単価の上昇が生徒数の減少を相殺しているためだと読み取れる。この状況では、近隣の塾との差が「授業内容」だけでなく「入会前にどれだけ安心感を伝えられるか」でもつきやすくなる。動画はその安心感を伝える手段として、費用対効果を検討する価値が出てきている。

動画タイプ別|学習塾の制作費用早見表

動画タイプごとの制作費用を積み木のブロックの大きさで示すフラットイラスト

学習塾が検討しやすい動画には、大きく分けて次の4タイプがある。以下に、尺の目安と費用相場を整理する。

動画タイプ 尺の目安 費用相場
SNSショート動画(授業風景・講師の一言) 15〜60秒 3万〜15万円/本
講師紹介・自然体インタビュー動画 1〜2分 10万〜30万円
塾紹介・生徒募集PR動画 2〜3分 30万〜80万円
入塾説明会・オンライン学校説明動画 3〜8分 40万〜100万円

表からもわかるとおり、SNSショート動画のように「授業の一コマをそのまま見せる」タイプは、機材と編集の負荷が軽いぶん費用も抑えやすい。逆に入塾説明会のように複数の講師・カリキュラム説明・在校生の声などを盛り込む動画は、撮影日数と編集時間が増えるため費用も上がる。まずは自塾の予算感に近いタイプから検討し、反応を見ながら他のタイプへ広げていくのが現実的だ。

費用を左右する4つの要因

学習塾の教室で目立たない場所からジンバルカメラで講師と生徒を自然に撮影する様子

同じ「塾紹介動画」というくくりでも、見積もりが30万円台になるか80万円台になるかは、以下の要因で変わってくる。

  1. 撮影日数と教室数(複数教室の様子を入れるほど移動・撮影日が増える)
  2. 出演する講師・生徒の人数(インタビュー1人と5人では編集の手間が大きく変わる)
  3. 納品本数(フル尺1本のみか、SNS用の切り出し版も含めるか)
  4. 保護者の許可取り・肖像権対応の範囲(未成年が映るため、同意書の取得フローを含めるかどうか)

私たちの経験では、学習塾の撮影で特に気をつけているのは4つ目の「未成年が映ることへの配慮」だ。生徒の顔がはっきり映る動画は保護者の事前同意が前提になるため、同意取得の仕組みを塾側と事前にすり合わせておくと、撮影当日や公開後のトラブルを避けやすい。顔出しに抵抗がある保護者がいる場合は、後ろ姿や手元、教材のクローズアップを中心に構成するなど、撮り方の工夫で対応できることも多い。


「新規向け」と「既存向け」で
予算を分けて考える

新規向けと既存向けの2つの動画の流れが枝分かれする様子を示すフラットイラスト

動画の予算配分で塾経営者が悩みがちなのが、「新規の入会検討者向け」と「すでに入会している家庭向け」のどちらに厚くかけるかだ。私たちは、この2つを別のバケツとして考えることをすすめている。

新規向けは、塾紹介PR動画や入塾説明会動画のように、比較検討している保護者に「うちの子に合いそうか」を伝えるための一本勝負の動画になる。制作費はまとまった金額になりやすいが、ホームページや入塾案内、説明会など複数の場面で長く使い回せる資産でもある。一方、既存家庭向けは講師の一言メッセージや行事の様子など、短く軽い動画を継続的に配信していく形が合う。既存客へのLINE公式アカウント活用についてはLINE公式アカウント×動画でリピーターを増やすで詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

予算が限られている場合、私たちは「まず新規向けの塾紹介動画を1本きちんと作り、そこから素材を切り出して既存向けの短尺動画に転用する」という順番をすすめている。ゼロから2種類を別々に作るより、制作費の総額を抑えながら両方の目的に対応できる。内製と外注どちらが自塾に合うかで迷う場合は動画制作は内製と外注どちらが得かも判断材料になるはずだ。一般的な動画制作費用の内訳を先に押さえておきたい場合は動画制作の費用相場【完全ガイド】も参考にしてほしい。

よくある質問

Q. 個人経営の小さな塾でも動画は必要か?

A. 大掛かりな動画は不要でも、講師の人柄が伝わる短いショート動画1本から始める価値はある。個人塾ほど「誰が教えているか」が入会の決め手になりやすく、費用も3万円程度から検討できる。

Q. 生徒の顔を映さずに動画を作ることはできるか?

A. 可能だ。後ろ姿や手元、教材、教室の雰囲気を中心に構成すれば、生徒の顔を映さなくても授業の空気感は十分に伝えられる。保護者への配慮を優先したい塾にはこの方法をすすめている。

Q. 動画の効果はどれくらいで出るか?

A. 入塾検討から入会までの期間が塾ごとに異なるため一概には言えないが、説明会や体験授業の申込みフォームに動画へのリンクを添えるなど、既存の導線に組み込むことで比較的早く反応を確認しやすい。

Q. 塾紹介動画とSNSショート動画、どちらを先に作るべきか?

A. 予算に余裕があれば塾紹介動画を先に作り、そこから切り出してショート動画に展開するのが効率的だ。予算が限られる場合は、講師紹介のショート動画から始めて反応を見るほうがリスクが小さい。

まとめ

学習塾の動画制作費用は、SNSショート動画なら数万円台、塾紹介PR動画や入塾説明会動画なら30万〜100万円程度と幅がある。少子化で生徒数のパイが縮む一方、一人当たりの教育投資額は増えている今の市場では、金額の大小よりも「新規向け」と「既存向け」で目的を分け、身の丈に合ったタイプから動画を持つことのほうが重要だ。

次のステップとして、まずは自塾が今いちばん困っている場面(新規の問い合わせが少ないのか、体験授業からの入会率が低いのか)を言語化し、それに合う動画タイプと予算感を整理することをすすめる。どのタイプから始めるべきか迷う場合は、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。