カテゴリー別アーカイブ: 業界動向

マイクロインフルエンサーの動画活用|湘南の直売所が知るべき動向

湘南の直売所でスマートフォンを構えて撮影する発信者と地魚を並べる店主

「うちみたいな直売所は、有名インフルエンサーに頼むお金なんてない」——大磯や平塚で地魚や地場野菜を売る個人店の店主と話すと、こう言われることが多い。だが実際に伸びているのは、フォロワー数百万人の大物ではなく、地域や特定ジャンルに強い「マイクロ・ナノインフルエンサー」による、等身大の動画発信だ。

結論から言えば、湘南のような地域密着型の個人店にとって、マイクロインフルエンサーの動画活用は決して縁遠い話ではない。むしろ大企業のタレント起用よりも相性がいい場面すら多い。

この記事では、インフルエンサーマーケティング市場の最新調査データと、企業側のリアルな成功・失敗の声をもとに、湘南の直売所や個人店がこの波にどう乗ればいいかを、制作者としての現場感覚を交えて整理する。

  • 結論:縦型ショート動画のインフルエンサー活用市場は2024年時点で246億円、2029年には636億円(約2.6倍)まで伸びる見通し
  • 企業のインフルエンサーPRは約7割が「うまくいった」と回答する一方、「購買につながらなかった」が最大の悩みという調査結果もある
  • 湘南の直売所・個人店には、大物より地域や客層とのつながりが濃いマイクロ・ナノインフルエンサーのほうが向きやすい

なぜ今、インフルエンサー動画マーケティングが
急速に伸びているのか

株式会社サイバー・バズと株式会社デジタルインファクトが2024年11月7日に発表した共同調査によると、国内のソーシャルメディアマーケティング市場は2024年時点で1兆2,038億円(前年比113%)に達し、2029年には2024年比約1.8倍の2兆1,313億円まで拡大すると見込まれている。その中でもインフルエンサーマーケティング市場は2024年に860億円(前年比116%)、2029年には約1.9倍の1,645億円に達する見通しだ。

特に伸びが際立つのが、TikTokの普及をきっかけにInstagramやYouTube、LINEにも広がった縦型ショート動画によるインフルエンサー起用だ。同調査では、この「インフルエンサーマーケティング(縦型ショート動画)」の市場規模を2024年時点で246億円(前年比137%)と推計し、2029年には約2.6倍の636億円に達すると予測している。以下に主要な数字を整理する。

区分 2024年実績 2029年予測
インフルエンサーマーケティング全体 860億円 1,645億円(約1.9倍)
うち縦型ショート動画 246億円 636億円(約2.6倍)

この数字が意味するのは、動画広告市場全体の成長(動画広告市場、初の1兆円へで詳しく触れた)の中でも、「第三者が語る動画」への投資が特に加速しているということだ。企業が自ら発信する情報より、実際に使っている人の声のほうが信頼されやすいという消費者心理を、多くの企業が動画の形で取りに行き始めている。


企業のインフルエンサーPR、
成功率とつまずきどころ

縦型ショート動画市場の成長を表す上昇する棒グラフの図解

株式会社PRIZMAが2025年4月1日に発表した「インフルエンサーPRの実態調査」(2025年3月25日〜26日実施、インフルエンサーを事業プロモーションに活用したBtoC企業担当者507人が対象)では、「とてもうまくいった」が18.7%、「ややうまくいった」が55.8%で、合計すると約74%が肯定的な評価をしている。一方で、感じた課題を尋ねると次のような結果になった。

感じた課題 回答割合
認知はされたが購買につながらなかった 31.6%
工数がかかる 25.6%
意図と違う投稿内容になった 24.1%
思ったより拡散されなかった 21.1%

この数字が意味するのは、インフルエンサー起用は「頼めば自動的に成果が出る」施策ではないということだ。特に最大の悩みである「購買につながらない」は、フォロワー数の多さだけでインフルエンサーを選んでしまい、実際の客層とズレが生じたときに起こりやすい。だからこそ、大きなリーチより「誰に届くか」の精度を重視するマイクロ・ナノインフルエンサーの発想が意味を持ってくる。


湘南の直売所・個人店にこそ
「マイクロ」が向く理由

小さな店舗と地域の人々をつなぐマイクロインフルエンサーのイメージ図解

大企業が起用する大物インフルエンサーは、フォロワー数こそ多いが、フォロワーの居住地も興味関心もバラバラなことが多い。一方、平塚や大磯の地魚・地場野菜、湘南グルメを日常的に発信しているマイクロ・ナノクラスの発信者は、フォロワーの多くが実際にその地域に住んでいたり、週末に足を運べる距離にいたりする。つまりリーチの「量」より「質」で、直売所や個人店の商圏とぴったり重なりやすい。

「演出しすぎない動画」が信頼を生む

私たちの撮影チームでは、発信で大事なのは伝えたいことをできるだけ自然体で伝えることだと考えている。現場では常に目立たない場所にカメラを置き、被写体にカメラを意識させない自然な受け答えを撮ることを意識している。台本どおりに演じてもらうよりも、素の会話や素の作業風景のほうが、見る人には「リアルな現場」として伝わりやすい。この考え方は、マイクロインフルエンサーが撮る飾らない動画とも相性がいい。取れたての魚をその場でさばく様子、朝どれ野菜を並べる手元——そうした素の場面こそ、大きな制作費をかけずに信頼を積み上げる素材になる。

口コミ動画の活かし方はお客様の声・口コミ動画の活かし方でも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。


小さく始めるための実践ステップ

湘南の直売所で店主と自然な会話を撮影する発信者

大きな予算をかけずに始めるなら、次のような順番で進めるのが現実的だ。

  1. まずは常連客やSNSで自店を紹介してくれている一般ユーザーを探す(すでに好意的に発信している人が最初の候補になる)
  2. 地域名や商品名(例:「平塚 地魚」「大磯 直売所」)で日常的に発信しているマイクロ・ナノクラスの発信者を検索する
  3. フォロワー数だけでなく、コメント欄の反応や、実際にその地域の内容を発信しているかを確認する
  4. 依頼した投稿であることが分かるよう、PR表記・タイアップ表記を必ず付けてもらう

最後の表記ルールは軽視できない。依頼した投稿であることを隠すと、景品表示法のステルスマーケティング規制に抵触するおそれがある。表示ルールの詳細はステマ規制とは?湘南の事業者がSNS動画で守るべき表示ルールにまとめている。

よくある質問

Q. マイクロインフルエンサーとナノインフルエンサーの違いは何か?

A. 明確な統一基準はないが、フォロワー数が比較的少ない発信者をまとめてこう呼ぶことが多い。湘南の個人店にとっては、フォロワー数そのものより、対象地域や客層とどれだけ近い距離感で発信しているかで選ぶほうが実務的だ。

Q. 個人店でもインフルエンサーに動画を依頼できるか?

A. 依頼できる。大規模なタレント起用に比べ、地域や特定ジャンルに強いマイクロ・ナノクラスは少ない予算感で始めやすいとされ、まずは常連客への協力依頼から試すこともできる。

Q. 自社で動画を作るのとインフルエンサーに任せるのは、どちらがいいか?

A. どちらか一方ではなく、使い分けが現実的だ。商品情報や店の基本情報は自社発信で正確に伝え、第三者としての信頼感がほしい場面ではインフルエンサーの視点を借りる、という住み分けを考えたい。

まとめ

インフルエンサーマーケティング市場、特に縦型ショート動画による活用は今後も伸びが見込まれる分野だ。一方で企業側の調査では「購買につながらない」という悩みも根強く、大きなリーチを追うだけでは成果が出にくいことも分かってきている。

湘南の直売所や個人店にとっては、フォロワー数の大きさより、地域や客層と近い距離感で発信しているマイクロ・ナノインフルエンサーのほうが、むしろ相性がいい選択肢になり得る。次のステップとして、まずは自店をすでに好意的に発信してくれている常連客やユーザーが誰かを言語化することをすすめる。そこから、演出しすぎない自然な動画づくりを一緒に組み立てていけばよい。

AI動画翻訳とインバウンド発信|湘南の宿泊業が知るべき最新動向

湘南の民宿でスタッフがスマートフォンとジンバルでルームツアー動画を撮影する様子

「外国人のお客様に部屋の雰囲気を伝えたいが、英語の案内文を作るだけで力尽きている」——湘南で民宿やゲストハウスを営む人と話すと、こうした本音を聞くことがある。写真と翻訳文だけでは、実際の広さや光の入り方、スタッフの人柄までは伝わりにくい。

結論から言えば、動画の多言語対応はもはや大手宿泊施設だけのものではない。AIによる自動翻訳・自動吹き替えの実用化によって、外国語ナレーターを雇わずとも、日本語で撮った動画を複数言語で届けられる環境が整いつつある。

この記事では、訪日外国人の消費動向の最新データと、YouTubeのAIオートダビング機能という具体的な技術動向をもとに、湘南の宿泊業・小売店が動画の多言語発信にどう向き合うべきかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:訪日消費額は2026年4-6月期で2兆5,096億円に達し、湘南の入込観光客数も過去最高水準が続く
  • YouTubeのAIオートダビング(日本語対応済み)により、動画の多言語化が「専門業者に頼む特別な工程」ではなくなりつつある
  • ただしAI翻訳には限界があり、手法ごとの向き不向きを理解したうえで使い分けるのが現実的

観光庁の最新データで見る
——湘南にも押し寄せるインバウンドの波

観光庁が発表した「インバウンド消費動向調査」2026年4-6月期(1次速報)によれば、訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円(前年同期比+0.2%)、1人当たりの旅行支出(消費単価)は24.4万円(同+3.3%)だった。消費額上位は米国・台湾・中国・韓国・香港の順で、欧米豪からの客が単価を押し上げている構図がうかがえる。

地域に目を向けると、神奈川県の「令和6年入込観光客調査」では、湘南エリアの入込観光客数が5,035万8千人(前年比+10.5%)となり、藤沢市は湘南海岸・江の島への来訪増で過去最高を更新した。県全体の宿泊客数も令和6年に2,023万人となり、2年連続で過去最高を記録している。

この数字が意味するのは、外国人観光客はもはや東京・大阪・京都のような大都市だけの現象ではなく、湘南のような地域にも確実に流れ込んでいるということだ。観光DXと地域PR動画の潮流でも触れたとおり、地域の側から情報を発信する動きは加速している。宿泊業や土産物店にとって、外国人客への発信を「まだ先の話」で片付けられる状況ではなくなりつつある。


AIオートダビングで動画の多言語化が
「特別な準備」でなくなった

1本の動画が複数言語に展開されるイメージを示すフラットデザイン図解

2026年、YouTubeの「オートダビング」機能が日本語にも本格対応した。チャンネル運営者が機能を有効にしておけば、視聴者は動画の音声トラックを切り替えるだけで、AIが生成した吹き替え音声を聞けるようになる仕組みだ。字幕を読ませるのではなく、音声そのものを自動生成する点が大きな変化である。

これまで動画を多言語化するには、翻訳会社に発注し、ネイティブのナレーターを手配し、収録・編集し直すという工程が必要だった。個人経営の宿や小さな土産物店にとって、これは現実的な選択肢ではなかったはずだ。AIによる自動翻訳・自動吹き替えの実用化は、この「多言語版を作る」という工程そのもののハードルを下げつつある。

だからといって、いきなり英語・中国語・韓国語すべてに対応する必要はない。まずは日本語で丁寧に撮った1本の動画を用意し、プラットフォーム側の自動翻訳・自動吹き替え機能に乗せてみる——それくらいの身構えで十分に始められる時代になったということだ。


湘南の宿泊業・小売店は何を撮ればいいか
——実例で考える

湘南の海沿いの商店街でスマートフォンの動画を見る外国人観光客

宿泊業の場合

民宿やゲストハウスであれば、まず撮るべきは客室・水回り・共用スペースの雰囲気を伝えるルームツアー動画だ。言葉が通じなくても、部屋の広さや清潔感、光の入り方は映像なら一目で伝わる。スタッフが自然体で挨拶をする短いカットを添えると、到着前の不安を減らす効果も期待できる。

小売店・土産物店の場合

土産物店であれば、商品そのものよりも「誰がどう作っているか」「地元でどう愛されているか」を映すほうが、外国人客の記憶に残りやすい。湘南という土地の空気感——海沿いの通り、地元の人が立ち寄る様子——を織り込むことで、商品単体の説明よりも強い印象を残せる。

いずれの場合も、私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎない自然体の撮り方だ。言葉の壁がある相手にこそ、取り繕った演出よりも、素の空気感がそのまま伝わる映像のほうが信頼を得やすいと感じている。


多言語対応、手法別に何が向いているか

動画を多言語化する手法は一つではない。以下に主な選択肢と、それぞれの向き不向きを整理する。

手法 特徴 向いている用途
人力翻訳+字幕 精度・ニュアンスは最も高いが工数とコストがかかる 公式サイト掲載など、間違いが許されない発信
AI自動字幕 短時間で複数言語に対応できるが誤訳の確認は必要 SNSのショート動画など更新頻度が高い発信
AIオートダビング 音声で伝わるため字幕を読ませる必要がない YouTubeのルームツアー・施設紹介動画
ネイティブナレーター別撮り 最も自然な聞こえ方になるがコストが高い 看板となる公式PR動画1本に絞って投資する場合

個人経営の宿泊業や小売店であれば、まずはAI自動字幕かAIオートダビングから試し、反応を見ながら看板動画だけ人力翻訳やネイティブナレーターに投資する、という段階的な進め方が現実的だ。AI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるかで触れたように、そもそも動画が見つけられる状態を作ることも並行して考えたい。


AI翻訳・AI吹き替えの限界も知っておく

動画撮影からAI翻訳・多言語音声化までの流れを示すフラットデザイン図解

AIによる自動翻訳・自動吹き替えは便利だが、万能ではない。地名や施設名の読み方を誤る、方言や口語表現のニュアンスが抜け落ちる、といったことは現状でも起こり得る。特に予約方法や料金、キャンセル規定など「間違えると信頼を損なう情報」は、AI任せにせず人の目で確認する工程を残すべきだ。

考えてみてほしい。せっかく興味を持ってもらえても、誤訳が原因で誤解が生まれれば、かえって信頼を落としかねない。AIは「発信のハードルを下げる道具」であって、「発信の責任を肩代わりしてくれる道具」ではない、という線引きを持っておくことをすすめる。


よくある質問

Q. 多言語対応の動画は何から始めればいいですか?

A. まずは日本語のルームツアー動画や店舗紹介動画を1本用意し、YouTubeのAIオートダビングやSNSのAI自動字幕機能に乗せてみるのが現実的な第一歩だ。専用の多言語版を最初から作り込む必要はない。

Q. 個人経営の宿でも英語ナレーターを雇う必要がありますか?

A. 必須ではない。AIオートダビングやAI自動字幕である程度は対応でき、看板となる公式PR動画など「間違えられない1本」だけネイティブナレーターや人力翻訳に投資する、という使い分けで十分に始められる。

Q. AI翻訳の誤訳が心配です。どう対策すればいいですか?

A. 料金・予約方法・キャンセル規定など間違えると信頼を損なう情報は、AI翻訳結果を人の目で確認する工程を残すべきだ。雰囲気を伝えるだけの映像パートと、正確さが必須のテキスト情報を分けて考えるとよい。


まとめ

訪日外国人の旅行消費は過去最高水準で推移し、湘南のような地域にもインバウンドの波は確実に届いている。AIオートダビングをはじめとする自動翻訳・自動吹き替え技術の実用化によって、動画の多言語対応はもはや大手企業だけの特権ではなくなった。

だからこそ、湘南の宿泊業や小売店にも「まず1本、日本語の動画を丁寧に撮る」ところから始めてほしい。手法ごとの向き不向きを理解し、間違えられない情報だけは人の目で確認する——その線引きさえ押さえておけば、無理なく発信を続けられるはずだ。

次のステップとして、まずは自施設・自店舗のどの場面を動画にすれば外国人客に伝わるかを言語化することをすすめる。そこが決まれば、多言語対応の技術は後からいくらでも追加できる。

動画はテレビを超えたか|総務省調査で読む湘南の動画戦略

テレビを見る年配の人物とスマートフォンで動画を見る若い人物の対比、湘南の海辺の光

「うちのお客さんは年配の方が多いから、動画よりチラシのほうが効くのでは」——湘南で店舗や事業を営む経営者から、こうした声を聞くことがある。動画の話をすると、なんとなく「若い人向けの手段」というイメージが先に立つのだろう。

結論から言えば、その感覚はもう半分しか正しくない。総務省の最新調査では、インターネットの利用時間がテレビ視聴時間を上回る状態が続いており、しかも世代によって「どちらの情報を信じるか」がはっきり分かれ始めている。動画が効くかどうかは年代だけで決まらず、その年代が何を信じているかで決まる。

この記事では、総務省とサイバーエージェントの一次データをもとに、テレビとネット動画をめぐる利用時間・信頼度の実態を整理したうえで、湘南の事業者がターゲットの年代に応じて動画をどう使い分けるべきかを、制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:インターネット利用時間はテレビを上回り続けているが、世代によって「信じているメディア」は逆転していない
  • 10〜40代はネットの情報を信頼し、50〜70代はテレビの情報を信頼する傾向がはっきり出ている(総務省調査)
  • 動画広告市場も2026年に1兆円超えの見込みで、投資は加速している。だからこそ狙う年代に合わせた見せ方の設計が要る

動画はテレビを「数字の上で」超えたか
——総務省・令和7年度調査の実態

総務省情報通信政策研究所が2026年6月に公表した「令和7年度情報通信メディアの利用時間と生活行動に関する調査報告書」によれば、全年代平均のインターネット利用時間は春季183.9分(前年比+2.1分)、秋季192.9分(前年比+9.2分)だった。一方でテレビ(地上波・BS・CS)視聴時間も春季156.1分、秋季189.2分と、実は前年から伸びている。

つまり「テレビが急速に見捨てられている」という単純な話ではなく、両方とも視聴時間は伸びながら、ネットがテレビを上回る差を保っているというのが実態に近い。以下に主要な数値を整理する。

調査時期 インターネット利用時間 テレビ視聴時間
令和7年度・春季 183.9分 156.1分
令和7年度・秋季 192.9分 189.2分
令和6年度・全年代(平日) 181.8分 154.7分

前年度(令和6年度)の調査では、休日の40代で初めてインターネット利用時間がテレビ視聴時間を上回り、60代ではテレビ視聴時間が大きく減少したことも報告されている。年を追うごとに、ネット優位の年代層が下から上へ広がっているという読み方ができる。


時間より重要なのは「どちらを信じているか」
——世代で分かれる情報の受け止め方

同じ総務省調査では、利用時間だけでなく「情報の信頼度」も世代別に調べている。結果は明快で、10〜40代はインターネットから得る情報への信頼度が高く、50〜70代はテレビから得る情報への信頼度が高いという傾向が出ている。情報を得る手段としても、10〜50代は「インターネット」中心、60〜70代は「テレビ」中心だった。

これは湘南の事業者にとって実務的な意味を持つ数字だ。ターゲットが20〜40代中心の業態であれば、動画をSNSやWeb経由で届けたときに「信じてもらいやすい土壌」がすでにある。逆にターゲットが60代以上を含む業態では、動画を作っても届け方(テレビ的な安心感のある演出、紙媒体との併用、口コミとの組み合わせ)まで設計しないと、内容が良くても信頼にはつながりにくい。

世代によってテレビとスマートフォン動画への信頼度が分かれることを表すフラットデザイン図解

「見てもらえる」と「信じてもらえる」は別の問題

私たちが現場で動画を作る際にいつも意識しているのは、再生数や視聴時間だけでなく「この動画を見た人が身構えずに信じられるか」だ。過度に作り込まれた演出は、特にネットの情報に慣れた層ほど「広告っぽさ」を敏感に感じ取る。私たちの撮影チームでは、被写体にカメラを意識させすぎない自然体の画づくりを常に心がけているが、これは飽きさせないためだけでなく、世代を問わず「取ってつけた感」を減らし、信頼感を損なわないための実務上の判断でもある。

動画広告への投資も
過去最速のペースで増えている

利用時間・信頼度の変化を裏づけるように、動画への広告投資も急速に伸びている。サイバーエージェントが実施した国内動画広告の市場調査によれば、2025年の動画広告市場は8,855億円で前年比122%の成長、2026年には1兆437億円に達する見込みだという。中でも縦型動画広告は2025年に前年比155.9%の2,049億円まで伸び、成長のけん引役になっている。市場全体の詳しい内訳は動画広告市場、初の1兆円へ|湘南の中小企業が今動くべき理由でも解説しているので、あわせて読んでほしい。

スマートフォン向けの動画広告需要は7,053億円で、動画広告需要全体の8割を占める。ここでも「ネットの動画に慣れている層」への投資が先行しているのが分かる。テレビからネットへ、そして横長からスマホの縦型へという主戦場の移り変わりについてはテレビ→YouTube→ショート動画、映像の主戦場はどう移ったか【制作者視点】でも詳しく触れている。

湘南の事業者は、ターゲットの年代で
動画の見せ方を変えるべきだ

パーソナルジムでスマートフォンを使って縦型動画を撮影しながら指導するトレーナーの様子

たとえば湘南で新しくパーソナルジムを開いたオーナーを考えてみよう。想定顧客が20〜30代中心なら、長尺のCM的な動画よりも、トレーナーの人柄や施術の様子をスマホで撮った縦型のショート動画のほうが、信頼を得やすい層に直接届く。編集で盛りすぎず、トレーニング風景をそのまま切り取るくらいの温度感でよい。

一方、湘南で不動産仲介を営む会社であれば、顧客層は20代の一人暮らし探しから60代以上の住み替え相談まで幅広い。この場合は一つの動画で全世代を狙うのではなく、SNS用の短い物件紹介はネットに慣れた層向けに、担当者の人柄や地域の実績をじっくり見せる長尺のインタビュー動画は自社サイトやYouTubeに置いて、テレビ的な「見て安心する」層にも届く設計にするのが理にかなっている。

考えてみてほしい。同じ「動画を作る」という投資でも、ターゲットの年代によって効果の出方はまったく違う。次のステップとして、まず自社の主要顧客が何歳前後で、ネットとテレビのどちらを信じる傾向が強い層かを言語化することをすすめる。

よくある質問

Q. うちは高齢のお客様が多いのですが、動画は意味がありますか?

A. 意味はある。ただし総務省調査では50〜70代はテレビの情報を信頼する傾向が強いため、SNS単独で完結させず、店頭のモニターやWebサイトのトップに動画を置くなど「テレビ的に安心して見られる」導線と組み合わせるのがすすめだ。

Q. ネットの信頼度が高い若い世代には、どんな動画が向いていますか?

A. 作り込みすぎない縦型のショート動画が向いている。過度な演出は「広告っぽさ」として敬遠されやすいため、現場の自然な様子を短く見せる方が、信頼を得やすい傾向がある。

Q. 総務省の調査はどこで確認できますか?

A. 総務省情報通信政策研究所が「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」として毎年公表しており、公式サイトで報告書全文が公開されている。

まとめ

テレビからスマートフォン動画へ投資が伸びていく様子を表すフラットデザインの成長グラフ

インターネットの利用時間はテレビを上回り続けているが、それは「テレビが信じられなくなった」ことを意味しない。むしろ世代によって信じるメディアがはっきり分かれ、その差はここ数年でさらに広がっている。動画広告市場が2026年に1兆円を超える見込みであることも、この変化の裏づけと言える。

湘南で事業をする以上、狙う顧客の年代は業態ごとに違う。だからこそ「動画を作るかどうか」より先に、「自社の顧客はどちらのメディアをどれくらい信じているか」を見極めることが、投資を無駄にしない第一歩になる。動画の活用先を横断的に整理したい場合は作った動画、どこでどう使う?活用先マップ【完全版】も参考にしてほしい。まずは自社の顧客層を言語化することから始めることをすすめる。

YouTubeのAI動画自動ラベル化|湘南の事業者が知るべき新常識

動画編集者が湘南の海岸を望む制作スタジオで動画のタイムラインを確認している様子

「うちの動画にAIのラベルがついたら、なんだか怪しい店だと思われないか」——最近、動画発信に力を入れている湘南の店主や経営者から、こんな相談を受けることが増えた。2026年5月にYouTubeがAI生成コンテンツの開示ルールを強化したというニュースを見て、不安になった人も多いはずだ。

結論から言えば、心配しすぎる必要はない。今回の変更で自動ラベルの対象になるのは、実在の人物や出来事をリアルに見せかけて改変・生成した「フォトリアリスティックな」映像に限られる。通常の実写動画や、色調整・字幕生成といった軽微な編集はラベルの対象外だ。むしろこの変化は、現場をそのまま撮っている動画の価値を相対的に押し上げる側面を持っている。

この記事では、YouTubeの新しいAI動画ラベル制度の中身、開示が必要な動画と不要な動画の線引き、そして湘南の店舗・企業が今から意識しておきたいポイントを、動画制作の現場に立つ私たちの視点で整理する。

  • 結論:2026年5月からYouTubeはフォトリアリスティックなAI生成・改変動画を自動検出しラベル表示する。通常の実写・軽微な編集は対象外
  • 意図的な開示逃れを繰り返すと、ラベルの手動適用やペナルティ(削除・収益化停止)の対象になり得る
  • ラベル表示自体は再生数やおすすめ表示に不利益を与えるものではないが、「本物の現場」を見せる実写の説得力は相対的に高まっていく

YouTubeが2026年5月に始めた
「AI動画自動ラベル」とは

2026年5月27日、YouTubeはAI生成コンテンツの開示制度を強化すると発表した。これまではクリエイターの自己申告に頼っていたラベル表示に加えて、YouTube側のシステムがフォトリアリスティックなAI生成コンテンツを検知した場合、申告の有無にかかわらず自動的にラベルを付与する仕組みが2026年5月から順次導入されている。

ラベルの表示位置も目立つ形に変わった。長尺動画ではプレーヤーの直下・概要欄の上部に、ショート動画では映像に重ねるオーバーレイ表示になり、これまでより格段に視聴者の目に入りやすい場所に置かれるようになった。YouTubeの生成AIツールで作った動画や、C2PAという業界標準の来歴情報が埋め込まれた動画については、このラベルをクリエイター側が削除できない仕様になっている点も見逃せない。

私たちのようにお客様の動画を預かって編集する立場からすると、この変更は「なんとなく気にしておけばいい話」ではなく、納品物の仕様として押さえておくべき実務的な変化だと感じている。

「開示が必要な動画」と
「不要な動画」の線引き

動画に自動で識別バッジが表示される様子を示すフラットイラスト

以下に、YouTube公式ヘルプが示す開示の要否を整理する。

開示が必要な動画の例 開示が不要な動画の例
実在の人物が言っていない発言・行動をしているように見せる映像 美肌フィルターや色調整、簡単な字幕生成
実際の出来事・場所の映像を改変し現実のように見せる 非現実的・明らかにアニメーションやCGとわかる表現
実際には起きていない場面をリアルに再現する BGMや音声のノイズ除去などの軽微な補正

判断の軸は「見た人がリアルだと誤認しうるか」にある。自社の店舗や現場をカメラで撮影し、通常の範囲でカット編集やテロップを入れる程度であれば、この開示制度の対象にはならない、と私たちは理解している。生成AI自体の使い方や著作権との関係については生成AI動画と著作権|湘南の事業者が知っておきたい最新動向でも詳しく解説しているので、あわせて確認してほしい。

開示を怠るとどう変わるか
——そして「実写」の価値

湘南の店舗内で撮影クルーが店主をジンバルカメラで自然に撮影している様子

意図的な開示逃れを繰り返すと、YouTube側がラベルを手動で付与するだけでなく、動画の削除や収益化停止といったペナルティの対象になり得ることもYouTubeヘルプで明記されている。一方で、正しくラベルが付いた動画自体は、おすすめ表示のアルゴリズムや収益化で不利になるものではない、ともYouTube側は説明している。ラベルは罰則ではなく、あくまで視聴者への情報提供という位置づけだ。

現場で動画を作る立場から見ると、今回の変更の本当のインパクトは「ペナルティの重さ」よりも、視聴者の側に「これは本物の映像だろうか」という意識が芽生えたことにあると私たちは考えている。

私たちの経験では、撮影現場でカメラを目立たない場所に置き、被写体に「カメラを意識させない自然体」を引き出す撮り方をずっと大切にしてきた。作り込んだ演出よりも、こうした素のままの現場が伝わる映像のほうが、視聴者の記憶に残りやすいと実感している。AIラベル制度が広がるほど、こうした一次情報としての実写の説得力は相対的に増していくはずだ。人が撮る映像の価値についてはAI動画生成ツールの現在地と、人が撮る映像の価値でも掘り下げているので参考にしてほしい。


湘南の店舗・企業が
今日からできる3つの対策

カメラ・チェックリスト・認証・アップロードのアイコンが並ぶ手順を示すフラットイラスト

制度の中身がわかったところで、実際に何をしておけばよいかを整理する。

  1. 動画に使っているツールを棚卸しし、背景生成や被写体の大きな加工などフォトリアリスティックな生成AIを使った箇所があれば、投稿時に「AIで生成・加工したコンテンツです」と自己申告する
  2. 自己申告のタイミングを制作フローに組み込む(投稿担当者まかせにせず、納品チェックリストの一項目として明文化しておく)
  3. 実写・現場の「素のままの説得力」を発信の軸に据え直す(店内の様子、施術・調理・打ち合わせの一コマなど、加工しなくても伝わる場面を増やす)

たとえば不動産会社が物件の内見動画を配信する場合や、学習塾が授業風景を紹介する場合など、「実際の現場をそのまま見せる」動画はもともとAIラベルの対象になりにくい。むしろ今後は、こうした素材の強みを積極的にアピールする発信のほうが、視聴者の信頼を得やすくなるはずだ。AI時代に人が関わることの価値についてはAI動画・SNS時代に「人が関わる」ことで価値が上がる理由もあわせて読んでほしい。

よくある質問

Q. うちの動画にAIラベルがついたら再生数は下がる?

A. YouTube側の説明では、ラベル表示自体はおすすめ表示のアルゴリズムや収益化に不利益を与えるものではない。ラベルはあくまで視聴者への情報提供であり、ペナルティとは別物として扱われている。

Q. スマホの自動フィルターや字幕生成にもラベルは必要?

A. 美肌フィルターや色調整、字幕生成、ノイズ除去といった軽微な編集は開示の対象外とされている。対象になるのは、実在の人物や出来事をリアルに見せかけて改変・生成した映像だ。

Q. 実写だけで動画を作っていれば、この制度は関係ない?

A. 直接ラベルが付くことはないはずだが、視聴者側に「AI生成かどうか」を気にする意識が広がる以上、無関係とは言い切れない。撮影現場の様子を少し見せるなど、「本物である」ことが伝わる工夫が差別化につながる場面が増えるだろう。

Q. 開示すると印象が悪くなりそうで心配な場合はどうすればいい?

A. 開示を避けるより、開示したうえでコンテンツの中身で評価されることを目指すほうが健全だ。判断に迷う場合は、YouTube公式ヘルプの開示基準を制作担当者と一緒に確認しておくことをすすめる。

まとめ

2026年5月からのYouTubeの自動ラベル制度は、動画発信をしている湘南の店舗・企業にとって「知らなかった」では済まない実務的な変化だ。フォトリアリスティックなAI生成・改変コンテンツが対象で、通常の実写やちょっとした加工は対象外という線引きを、まず正しく理解しておきたい。

そのうえで私たちが伝えたいのは、この制度がむしろ「本物の現場を撮る」動画の価値を再確認させてくれているということだ。作り込んだ演出やAI生成の映像が増えるほど、自然体でリアルな現場を捉えた映像の説得力は際立っていく。

次のステップとして、まずは自社が使っている動画制作・編集ツールにAI生成の要素がどこまで含まれているかを棚卸しし、判断に迷う場合は一度、私たちのような制作者に相談してみることをすすめる。

生成AI動画と著作権|湘南の事業者が知っておきたい最新動向

湘南の海辺の町を背景に生成AIを使いながら動画編集をする様子

生成AIで動画を作る現場が、この一年で明らかに増えた。

私たちが動画制作の相談を受ける中でも、「AIでラフを作ってから発注したい」「BGMやテロップをAIツールで作れないか」という声を聞く機会が増えている。

結論から言えば、生成AIを動画制作に取り入れること自体は問題ない。ただし、著作権をめぐるルールと最近の国内の動きを知らないまま使うと、思わぬトラブルに発展しかねない。

この記事では、文化庁が示す生成AIと著作権の考え方、2025年から2026年にかけて大きな話題になった動画生成AI「Sora 2」を巡る国内団体の対応、そして湘南の事業者が実務でおさえておきたい注意点を整理する。

  • 画像・動画系の生成AIを「導入済み・試験導入中」とする企業は21.9%(JUAS調査・2024年度)まで伸びており、動画制作の現場にもAI活用は広がっている
  • 文化庁は「開発・学習段階」と「生成・利用段階」で著作権法の適用が異なるとしており、生成物が既存作品と似ていれば侵害になり得る
  • 2025年秋に始まった動画生成AI「Sora2」を巡る著作権紛争は、権利者団体との協議を経て2026年3月にサービス終了という結果に至った
  • 湘南の事業者が動画にAIを使う際は「学習データの出どころ」「利用規約」「人が確認する工程」の3点を発注前に確認するのが実務上の目安になる

動画制作の現場にどこまでAIが入ってきているか

私たちが日々受ける相談の変化からも、生成AIの浸透は実感できる。

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2025」(2025年2月公表、2024年度調査、回答981社)によると、画像・動画系の生成AIを「導入済み」または「試験導入中・導入準備中」と回答した企業は21.9%(実導入7.0%+試験導入中14.9%)に達した。言語系生成AI(26.9%→41.2%)ほどの急伸ではないものの、動画分野でもAI活用が着実に進んでいることを示す数字だ。

現場感覚としても、絵コンテのラフ画像やBGM、字幕の自動生成にAIを併用する事業者は増えている。ただし「AI活用」の中身を分解すると、リスクの高さは工程によって大きく異なる。素材のたたき台を作る段階と、出来上がった映像を公開する段階とでは、注意すべきポイントがまったく違うということを、次の項で整理する。

文化庁が示す「AIと著作権に関する考え方」の要点

生成AIと著作権の関係について、日本には既に公式の指針がある。文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会は2024年3月15日、「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめて公表した。

この考え方は、AIが関わる場面を「開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けているのが特徴だ。以下に段階別のポイントを整理する。

段階 主に関わる考え方 実務での注意点
開発・学習段階 著作権法30条の4(非享受目的の利用) 学習データの収集自体は比較的広く認められる
生成・利用段階 類似性・依拠性の有無 既存作品に似ていれば侵害になり得る。公開前に人が確認する

つまり、AIで作ったから自動的に安全というわけではない。出来上がった動画やカット画像が既存の作品と似ていないかは、人が確認する必要があるということだ。文化庁は2024年7月31日には、開発者・提供者・利用者・権利者それぞれの立場ごとに取るべき対応を整理した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表している。

「似ている」かどうかは誰が判断するのか

実務上悩ましいのは、生成物が既存作品に「似ている」かどうかの線引きだ。文化庁の考え方でも明確な数値基準は示されておらず、個別の事案ごとに判断される。私たちが動画制作の現場で意識しているのは、既存の有名なキャラクターやブランドの画像を参照させるような指示(プロンプト)は避け、生成物を人の目でチェックする工程を必ず挟むということだ。これは、以前まとめたAI動画生成ツールの現在地と、人が撮る映像の価値でも触れた「人が関わる価値」そのものでもある。

動画制作へのAI導入拡大を示すフラットデザインの図解

動画生成AI「Sora 2」を巡る争いが示した決着のかたち

著作権の議論が一気に注目を集めたのが、2025年秋から2026年春にかけての「Sora 2」を巡る動きだ。OpenAI社は2025年9月30日に映像生成サービス「Sora 2」の提供を始めたが、日本の既存アニメーションやキャラクターに酷似した映像が、権利者の許諾なく多数生成される事態が起きた。

これを受け、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は2025年10月27日、OpenAI社へ要望書を提出した。要望は「CODA会員社のコンテンツを無許諾で学習対象としないこと」「生成物に関する著作権侵害の申立てに真摯に対応すること」の2点。CODAは、日本の著作権制度が原則として利用前の許諾を前提としているのに対し、OpenAI社が採用した事後的な「オプトアウト方式」ではその原則に対応できないと指摘した。

その後の協議を経て、2026年3月27日、OpenAI社はCODAに対し、Sora 2をアプリ・APIを含むプロダクトとして終了する旨を報告した。CODAは「ひとつの区切り」としながらも、他の事業者による類似サービスの提供は続いており著作権侵害のリスクは依然存在するとして、2026年度から生成AIサービスの実態調査を本格化させる方針を示している。

湘南の事業者にとってこの一連の出来事が直接関わることは少ないだろう。しかし、海外の大手プラットフォームでさえ権利者団体との協議の末にサービス終了という結論に至った例がある以上、「有名なプラットフォームだから安全」とは言えないことがよく分かる。自社で使う生成AIツールの利用規約や学習データの扱いは、発注前に一度確認しておくことをすすめる。


湘南の事業者が動画にAIを使うときに実務で気をつけたいこと

ここまでの内容を踏まえ、私たちが動画制作の現場でAIを使う際に実際に確認していることを、実務目線で整理する。

AI生成映像の著作権チェックを表すフラットデザインの図解
  1. その生成AIツールがどのようなデータを学習に使っているか(利用規約・提供元の説明)を確認する
  2. 生成物を公開前に必ず人の目で確認し、既存の有名な作品・キャラクター・ロゴに似ていないかをチェックする
  3. 商用利用が許可されているプランか、生成物の著作権の扱いがどうなっているかを利用規約で確認する
  4. AIが作ったラフ素材は「たたき台」とし、最終的な編集・構成には必ず人の手を加える
  5. クライアントへの納品物にAIを使った部分がある場合は、事前にその範囲を共有しておく

工務店の採用動画で背景イラストをAIに作らせる場合も、飲食店のメニュー紹介動画でBGMを自動生成する場合も、美容サロンのショート動画でテロップやカット編集を自動化する場合も、基本的な確認事項は変わらない。「AIが作った」で終わらせず、「人が確認した」工程を必ず一段加えることが、これからの動画制作の基本姿勢になるはずだ。発注前に確認しておきたい項目は、動画制作の発注前に確認したい7つのチェックリストにも整理してある。

事業者と動画制作者がチェックリストを確認しながら打ち合わせする様子

よくある質問

Q. AIが生成した動画に著作権は発生しますか?

A. 文化庁の考え方では、AIが自律的に生成しただけの映像は人の「思想または感情の創作的表現」とは言えず、基本的に著作物にはあたらないとされている。人が構成や編集など創作的な工程を加えれば、その部分に著作権が生じ得る。

Q. 既存のアニメやキャラクターに似た画像をAIで作って自社動画に使ってもよいですか?

A. 生成物が既存作品と「似ている」(類似性)かつ「それを参照して作られた」(依拠性)と判断されれば、著作権侵害になり得る。似せることを意図したプロンプトは避け、公開前に人の目で確認することをすすめる。

Q. 社内資料など、外部に公開しない動画であれば気にしなくてよいですか?

A. 私的・社内限定の利用であればリスクは下がるが、ゼロにはならない。特に採用動画やSNS発信など外部公開を前提とする動画では、公開前のチェック工程を省かないほうがよい。

Q. Sora2のような海外の動画生成AIは、日本の事業者が使っても問題ないですか?

A. サービスの利用自体を禁じる法律はないが、2025年から2026年にかけてのCODAとOpenAI社の一件が示すように、権利者側との摩擦が続きやすい分野だ。利用規約や学習データの扱いを確認し、生成物のチェックを怠らないことが重要だ。

まとめ

生成AIによる動画制作は、もう一部の先進的な事業者だけの話ではない。JUASの調査が示すとおり、画像・動画系AIの導入は着実に広がっている。

一方で、文化庁の考え方や2025年から2026年のSora 2問題が示すように、著作権のルールは依然として発展途中にある分野だ。「AIが作ったから安全」でも「AIだから危険」でもなく、生成物を人が確認する工程をどう組み込むかが実務上の分岐点になる。

次のステップとしては、まず自社が使っている(あるいは使おうとしている)生成AIツールの利用規約と学習データの扱いを一度確認し、公開前チェックの担当者を決めておくことをすすめる。動画にAIをどう取り入れるべきか迷う場合は、私たちのような制作者に相談してみてほしい。

動画広告市場、初の1兆円へ|湘南の中小企業が今動くべき理由

湘南の雑貨店オーナーがスマートフォンで動画広告の効果を確認している様子

「動画広告なんて大手企業がやることで、うちのような小さな店には関係ない」——湘南エリアの経営者と話していると、いまだにそう感じている人は多い。看板やチラシ、地域情報誌への出稿はしていても、動画に予算を割く発想自体がまだ遠い、という声もよく聞く。

結論から言えば、その前提はもう崩れつつある。株式会社サイバーエージェントの調査によると、2025年の国内動画広告市場は前年比122.2%の8,855億円に達し、2026年には初めて1兆円の大台(1兆437億円)を超える見通しだ。動画広告はもはや大手企業だけの話ではなく、広告費全体の構造そのものを動かす主役になりつつある。

この記事では、電通・サイバーエージェント・アルファノート株式会社という3つの一次データをもとに、動画広告市場でいま何が起きているのか、中小企業が実際にどれくらいの予算で動画に投資しているのか、そして湘南の事業者が今日から取れる一歩を、制作者の視点で整理する。

  • 結論:2025年の国内動画広告市場は8,855億円(前年比122%)、2026年に1兆円突破の見通し(サイバーエージェント調査)
  • インターネット広告費が総広告費の50.2%を占め、初めて過半数を超えた(電通調査)
  • BtoB企業の動画マーケティング実施者の60.6%が効果を実感、制作予算は「10万円未満」が最多(アルファノート調査)

動画広告市場、2025年は8,855億円で前年比122%成長
——2026年に1兆円突破へ

動画広告市場の伸びは、ここ数年の勢いの延長ではなく、明らかな加速を見せている。サイバーエージェントが2025年11月から2026年1月にかけて実施した「2025年国内動画広告の市場調査」によると、市場規模は前年の7,249億円から一気に8,855億円へと拡大し、成長率は122.2%に達した。同社はさらに2026年に1兆437億円、2029年には1兆6,336億円に達すると予測している。

以下に市場規模の推移を整理する。

年度 国内動画広告市場規模 前年比
2024年(実績) 7,249億円
2025年(実績) 8,855億円 122.2%
2026年(予測) 1兆437億円 約118%
2029年(予測) 1兆6,336億円

動画広告市場が1兆円に向けて拡大している様子を表す図解

この数字が示しているのは、テレビCM中心だった広告予算の一部が、OTT(インターネット経由の動画配信)やコネクテッドTV向けの広告へと着実にシフトしているという構造変化だ。同調査でも「広告主によるテレビCMから、OTT・コネクテッド向けに配信する広告への予算シフトが進んだ」と分析されている。

湘南エリアでも、平塚の商店街で雑貨店を営むオーナーが「チラシの反応が年々落ちている」とこぼす場面に、私たちは何度も立ち会ってきた。広告費の流れ先が変わっている以上、同じ予算配分を続けていれば相対的に届く人は減っていく。


インターネット広告費が初めて広告費全体の過半数に
——電通調査が示す構造変化

動画広告市場の拡大は、日本の広告費全体の勢力図とも連動している。電通が2026年3月5日に発表した「2025年 日本の広告費」によると、2025年の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)で4年連続の過去最高を更新した。その中でインターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)となり、総広告費に占める構成比は50.2%と、初めて過半数に達した。

テレビメディアの広告費が横ばい圏にとどまる一方、テレビ局が配信する動画枠など「テレビメディア関連動画広告費」は805億円(前年比123.3%)と大きく伸びている。同じ「動画」というフォーマットでも、視聴の場がテレビ受像機からスマートフォンやコネクテッドTVへと広がっていることの表れだ。

湘南のような地方都市の事業者にとって、この数字が意味するのは単純だ。広告費の主戦場がテレビや紙からインターネット、特に動画へ移った以上、動画を持たない企業は土俵に上がる前に選択肢を減らしていることになる。この流れの詳細は2026年のショート動画トレンドでも整理しているので、あわせて読んでほしい。

中小企業の動画予算はどのくらいが目安か
——実施企業の60.6%が効果を実感

「動画は予算がかかる」という印象は根強いが、実態のデータを見るとイメージと少しずれがある。アルファノート株式会社が2026年6月9〜10日に実施した「BtoB企業における動画マーケティングの実態調査」(動画マーケティングを実施しているBtoB企業のマーケティング担当者500人が対象)によると、動画1本あたりの制作予算は「10万円未満」が28.4%で最も多く、「30万円〜50万円未満」が23.0%で続く。100万円を超える予算をかけている企業は全体の1割強にとどまる。

動画1本あたりの制作予算 回答割合
10万円未満 28.4%
10万〜30万円未満 16.4%
30万〜50万円未満 23.0%
50万〜100万円未満 18.8%
100万〜300万円未満 8.0%
300万円以上 5.4%

予算をかけていない企業が多い一方で、効果を実感している企業の割合は高い。同調査では動画マーケティング実施企業のうち60.6%が「効果があった」と回答しており(「期待以上の効果があった」14.0%+「ある程度の効果があった」46.6%)、具体的な効果としては「展示会・イベントでの集客数の増加」が35.0%で最も多く挙げられている。

つまり、大きな予算をかけなければ動画マーケティングが成立しない、というのは思い込みに近い。私たちが不動産業のお客様と仕事をする際も、内見前に物件の雰囲気を伝える短い動画を1本用意するだけで、来店時の質問の質が変わったという声をいただくことがある。まとまった予算がなくても、目的を絞った1本から動画は十分に機能する。

スマホ向け縦型とコネクテッドTVの伸びが示すもの

動画広告市場の内訳を見ると、次にどこへ投資すべきかのヒントが見えてくる。サイバーエージェントの調査では、2025年の動画広告市場のうちスマートフォン向けが7,053億円と全体の8割を占め、依然として主戦場であることが分かる。一方でコネクテッドTV向けは1,295億円(前年比127%)と、市場全体の伸び率(122%)を上回るペースで成長している。

広告予算がテレビからスマートフォンとコネクテッドTVへ移る様子を表す図解

これは、視聴者が動画を「テレビで受動的に見る」時代から、「スマホで能動的に選ぶ」時代を経て、いまは「大画面のテレビ受像機でネット動画を選んで見る」時代へと段階的に移っていることを示している。中小企業が動画に投資する際も、スマホ向けの縦型ショート動画を軸にしつつ、将来的にコネクテッドTV向けの配信面も選択肢に入ってくることを頭の片隅に置いておいて損はない。

もっとも、配信面が増えても「作り方」まで大きく変える必要はないと私たちは考えている。私たちの撮影チームでは、目立たぬ場所にカメラを置き、現場の人にカメラを意識させない自然体の映像を撮ることを常に意識している。スマホ向けでもコネクテッドTV向けでも、作り込みすぎた広告的な映像より、現場の空気がそのまま伝わる自然な映像のほうが、視聴者の警戒感を招きにくい。


湘南の中小企業が今日からできる一歩

湘南の不動産店舗でスマートフォンとジンバルを使い自然体の動画を撮影する制作者

ここまでのデータを踏まえると、湘南の中小企業がまず取るべき一歩は明確だ。いきなり大きな予算を確保する必要はなく、スマートフォン1台で撮れる15〜30秒程度のショート動画から始め、反応を見ながら予算配分を調整していくのが現実的だ。

予算の考え方や内製・外注の判断基準については動画制作は内製と外注どちらが得か、制作費用全体の目安は動画制作の費用相場【完全ガイド】で詳しく整理しているので、あわせて参考にしてほしい。

よくある質問

Q. 動画広告市場の成長は、中小企業にも関係ありますか?

A. 関係がある。市場拡大を牽引しているのはスマートフォン向けの縦型動画で、大企業に限らず個人店・中小企業でも比較的低コストで参入できる領域だからだ。

Q. 動画マーケティングにはどれくらいの予算が必要ですか?

A. アルファノート株式会社の調査では、動画1本あたり「10万円未満」で制作している企業が28.4%と最も多い。まずは小さく始めて、効果を見ながら予算を積み増す進め方が現実的だ。

Q. テレビCMを出していない中小企業でも動画広告は意味がありますか?

A. 意味がある。動画広告市場の成長を牽引しているのはテレビCMではなくスマートフォン向けの動画広告であり、テレビCMを持たない企業でも同じ土俵で戦える領域が広がっている。

まとめ

2025年の動画広告市場は前年比122%の8,855億円に達し、2026年には初めて1兆円を超える見通しだ。インターネット広告費は総広告費の過半数を占めるようになり、広告の主戦場はすでにテレビや紙から動画へと移っている。

予算をかけなければ参入できない世界ではない。制作予算「10万円未満」の企業が最も多いという調査結果が示すように、小さく始めて効果を確かめながら育てていくのが、いまの動画マーケティングの現実的な姿だ。

次のステップとして、まずは自社が動画で伝えられる「現場のリアル」がどこにあるかを、一度言語化することをすすめる。そこが見えれば、スマートフォン1台からでも動画は十分に機能し始めるはずだ。

ステマ規制とは?湘南の事業者がSNS動画で守るべき表示ルール

湘南の店舗でスマートフォンの動画を確認しながら打ち合わせをする事業者と制作者

湘南でSNS運用や動画発信に力を入れる事業者から、最近「インフルエンサーに商品を紹介してもらう動画を作りたいが、法律的に大丈夫だろうか」という相談を受けることが増えた。答えは、やり方次第で”アウト”になり得る、というものだ。

結論から言えば、2023年10月に施行されたいわゆる「ステマ規制」により、広告であることを隠したSNS投稿・動画は景品表示法違反になり得る。インフルエンサーに依頼した動画はもちろん、自社スタッフが”個人の感想”を装って投稿する動画も対象になり得るため、湘南の中小企業にとっても他人事ではない。

この記事では、ステマ規制の基本、動画広告で特にリスクが高いパターン、違反した場合の実務的な影響、そして今日から始められる対策を、制作の現場に立つ私たちの視点で整理する。

  • 結論:広告であることを隠すSNS動画は、投稿者ではなく依頼した事業者側の責任で景品表示法違反になり得る
  • 特にリスクが高いのは「インフルエンサー起用」「口コミ・レビュー風の演出」「スタッフの個人の感想を装う投稿」
  • 対策は難しくない。動画の分かりやすい位置に「広告」「PR」の一言を入れるだけで多くのケースは回避できる

ステマ規制とは何か
——2023年10月に始まった新しいルール

消費者庁によれば、令和5年10月1日から、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が景品表示法上の不当表示として規制対象になった(消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方」)。広告であるにもかかわらず、広告だと隠すことがいわゆる「ステルスマーケティング」であり、これが正式に法律違反として扱われるようになったということだ。

対象範囲はテレビ・新聞・雑誌なども含むが、実務上リスクが高いのはSNSの投稿・動画である。消費者庁の説明では、インフルエンサー等への依頼・指示による広告表示もこの規制の対象に含まれる。ここで重要なのは、責任を負うのは投稿したインフルエンサーやスタッフ本人ではなく、依頼した事業者(広告主)側だという点だ。「投稿は本人に任せていたので知らなかった」は理由にならない。

サイバー・バズとデジタルインファクトの共同調査によれば、国内のインフルエンサーマーケティング市場は2024年時点で860億円(前年比116%)、2026年には1,150億円に達すると見込まれている。市場が拡大するほど、行政の目が向けられる機会も増えていくと考えるのが自然だろう。

動画広告で特にリスクが高い3つのパターン

私たちが現場で見てきた限り、湘南の事業者がつまずきやすいのは次の3パターンだ。

  1. インフルエンサーへ依頼した動画を、「広告」と明記せず本人の裁量で投稿してもらう
  2. 一般客や第三者を装った「口コミ・レビュー風」の演出動画を自社で作って投稿する
  3. 自社スタッフが、あたかも個人の感想であるかのように商品・サービスを紹介する動画を投稿する

特に1については、投稿者本人に内容や表示方法を任せきりにするケースが典型的な違反パターンとされる。依頼段階で「広告」「PR」といった文言を入れることを明確に伝え、公開前に事業者側が内容を確認する体制を整える必要がある。

また、事業者が投稿の星評価を指定したり、具体的な文言を示唆したりして「事業者が内容を決定した」と評価される場合も、広告である旨を明示する義務が生じる。クリニック・治療院向けの医療広告規制と同様に、”演出の自由度”と”表示義務”のバランスを取る発想が必要になる。


違反するとどうなるか
——措置命令と確約手続

ステマ規制に違反したと判断されると、消費者庁から措置命令が出される。内容は、違反行為の差止め、一般消費者への周知徹底、再発防止策の実施、将来の繰り返し禁止の4点で構成され、命令は公表される。社名が公表される以上、金銭的な負担以上に信用への打撃が大きい点は押さえておきたい。

一方で、令和6年10月1日に施行された改正景品表示法では「確約手続」という制度が新設された(消費者庁「改正景品表示法の概要」)。違反の疑いがある事業者が自ら是正措置計画を申請し、消費者庁の認定を受ければ、措置命令や課徴金納付命令の適用を受けずに済むというものだ。万一表示に問題があると気づいた場合、隠さず早期に自主的な是正に動くことが、結果的に事業へのダメージを小さくする選択肢になり得る。

湘南の事業者が今日からできる対策

対策そのものは難しくない。以下に、動画のパターン別にリスクの高さと必要な対策を整理する。

動画のパターン リスクの高さ 必要な対策
インフルエンサーへの依頼動画 契約時に「広告」表示を明記する義務を伝え、公開前チェックを行う
口コミ・レビュー風の演出動画 中〜高 出演者が第三者に見えないよう「企業公式」「PR」を明示する
スタッフの個人の感想風投稿 業務指示による投稿である旨を本人・視聴者双方に明確にする
自社名義の通常のPR動画 企業公式アカウントからの発信と分かれば基本的に対象外

表の中で特に注意したいのは、ハッシュタグの中に「#PR」を大量のタグに紛れ込ませるような配置だ。消費者庁は、事業者の表示であることを他の情報に埋もれさせる表示も規制対象になり得るとしている。動画であれば冒頭のテロップやキャプション本文の分かりやすい位置に置くのが安全だ。

広告表示の透明性を象徴するメガホンとラベルタグのフラットイラスト

私たちの撮影現場では、以前から「カメラを意識させない自然体」を大切にしてきた。目立たない場所にカメラを置き、被写体に自然に振る舞ってもらうことで、見る人の心に届く映像になると考えているからだ。ただし、自然に見える映像ほど”広告と気づかれにくい”表現でもある。だからこそ、演出の自然さと「広告」という一言の明記は、対立するものではなく両立させるべきだというのが私たちの考えだ。

店舗アイコンとインフルエンサーアイコンの依頼関係と注意マークを表すフラットイラスト

湘南エリアでは工務店や小売店がSNSでの発信に取り組み始めるケースが増えている。湘南・大磯のSNS集客術で触れたように、地域密着の事業者ほど”顔の見える発信”が効きやすい一方、その分ステマ規制のリスクにも近い立ち位置にいる。リールとショート、結局どっちを選ぶ?のような動画形式選びと合わせて、表示ルールも制作の初期段階で決めておくことをすすめる。

よくある質問

Q. 自社の従業員が個人アカウントで商品を紹介した場合もステマ規制の対象になりますか?

A. 会社の指示や依頼に基づく投稿であれば対象になり得る。個人の自発的な投稿と会社主導の投稿の境界は曖昧になりやすいため、投稿を依頼する場合の社内ルールを事前に明文化しておくことをすすめる。

Q. 「広告」ではなく「PR」や「Sponsored」と書いても問題ありませんか?

A. 一般消費者が広告だと判別できる表示であれば、「PR」「協賛」といった表記も基本的には有効とされる。ただし大量のハッシュタグの中に埋もれさせるなど、分かりにくい配置は避けるべきだ。

Q. 動画制作会社に依頼した通常のPR動画も規制対象になりますか?

A. 自社の公式アカウントから「企業公式」だと分かる形で投稿するPR動画は、通常はステマ規制の主な対象ではない。問題になりやすいのは、第三者の個人的な発信であるかのように装うケースである。

まとめ

2023年10月のステマ規制施行により、広告であることを隠したSNS動画は景品表示法違反になり得る時代になった。責任を負うのはインフルエンサーや投稿者本人ではなく、依頼した事業者側である以上、”知らなかった”では済まされない。

湘南の事業者による地域密着の動画発信は、これからも増えていくはずだ。だからこそ、発信の勢いを止めないためにも、表示ルールという最低限の土台を先に固めておきたい。

次のステップとして、まずは自社が公開・依頼している動画に「広告」「PR」の表示が入っているかを一度確認することをすすめる。動画の演出や依頼先の選び方も含めて相談したい場合は、制作の現場を知る私たちのような立場に一度話してみるのもひとつの方法だ。

医療広告ガイドライン改正が続く理由|湘南のクリニック動画発信の注意点

湘南のクリニック受付で院長とスタッフが動画発信のガイドラインを確認している様子

「クリニックの動画発信について一度調べて対策したはずなのに、また新しいルールが出たらしいと聞いた」——湘南エリアで医療広告のガイドラインを気にする院長やスタッフから、最近こうした戸惑いの声を聞く機会が増えた。

結論から言えば、その戸惑いは正しい。医療広告の判断基準を具体的な事例で示す厚生労働省の「事例解説書」は、ここ数年でほぼ毎年のように改訂されており、2026年3月にも最新版が公表されたばかりだ。

この記事では、なぜ医療広告のルールがこれほど短いスパンで更新され続けているのかを一次情報から確認したうえで、湘南のクリニック・治療院が動画発信を続けるうえで今おさえておきたい変化のポイントを、制作者の視点で整理する。

  • 結論:医療広告の事例解説書は令和6年3月(第4版)以降ほぼ毎年改訂され、2026年3月には第6版が公表されたばかり
  • 改訂が続く背景には、クリニック・治療院のSNS・動画発信が急増していることがある
  • 体験談を広告に使えないなど核となるルールは一貫しており、変わり続けているのは主に「線引きの細部」

医療広告の「事例解説書」、この3年で3回改訂されている

医療広告のルールを具体的な事例で示す厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」は、令和5年10月6日の事務連絡で第3版が示されて以降、令和6年3月28日に第4版、令和7年3月11日に第5版、そして令和8年3月30日に第6版と、ほぼ1年に1回のペースで改訂が続いている。

とりわけ大きな転換点になったのが第4版だ。それまで断片的にしか示されていなかったSNS・動画に関する事例が独立した項目として新設され、以降の版で記載が拡充されてきた。制作者として現場に立つ私たちから見ると、この改訂ペースの速さそのものが「SNS・動画で発信するクリニック・治療院が、行政の想定を超えるスピードで増えている」ことの裏返しに見える。

版数 事務連絡の時期 主なポイント
第3版 令和5年10月6日 事例解説の土台を整理
第4版 令和6年3月28日 SNS・動画の事例が新設
第5版 令和7年3月11日 SNS・動画の事例を拡充
第6版 令和8年3月30日 直近の改訂。線引きの明確化が中心

このように、医療広告の判断基準は「一度学べば終わり」ではなく、年単位で更新され続けるものだと捉えておく必要がある。


何が変わったか——「広告」の線引きが年々細かくなっている

医療広告ガイドラインの改訂が積み重なっていく様子を表すフラットイラスト

第4版以降の改訂で明確になったのは、SNS・動画のどの部分が「広告」とみなされるかという線引きだ。投稿本文だけでなく、動画のテロップ・音声・ハッシュタグまでもが広告の構成要素になり得ることが、具体的な事例とともに示されている。

見落とされがちなのが、院長個人のアカウントであっても、医療機関や医師への特定性と誘引性が認められれば医療広告として扱われ得るという点だ。「クリニックの公式アカウントさえ気をつければよい」という理解では、個人アカウントでの発信が点検から漏れてしまう。

もう一つの実務的なポイントが、限定解除要件(広告可能事項の限定を外すために必要な要件)を記載する場所の柔軟化だ。SNSであればプロフィール・投稿本文・返信のいずれか、動画であれば動画内・タイトル・概要欄のいずれかに分かりやすく記載すればよいとされており、企画段階で「どこに何を書くか」を先に決めておけば対応しやすい。

変わらないもの——体験談の扱いは一貫して厳格

変わる項目と変わらない項目を仕分けるチェックリストのフラットイラスト

一方で、改訂を重ねても変わっていないルールもある。患者本人の主観に基づく治療内容・効果の体験談を広告として用いることは、限定解除要件を満たしていても認められない、という原則は第4版から第6版まで一貫している。

私たちが動画の演出で現場から大切にしているのも、この一貫したルールと同じ方向にある。撮影チームでは常にカメラの存在を意識させない自然体の撮影を心がけている——効果を誇張する演出をしないことは規制上の安全策であると同時に、患者にとっても「誇張されていない実際の空気感」が伝わる映像になるという点で、結果的に見る側の信頼にもつながっていると感じる。

改訂のたびに全てを作り直す必要はない。変わり続ける「線引きの細部」と、変わらない「体験談を扱わない」という土台を分けて理解しておけば、既存の動画を都度点検する負担も小さくできる。

湘南のクリニック・治療院が今日からできること

湘南の治療院でスタッフがSNS投稿を落ち着いて見直している様子

改訂のたびにすべてを一から確認するのは現実的ではない。まず取り組みやすいのは、自院で公開しているSNS・動画の投稿を棚卸しし、次の2点だけをチェックすることだ。

  1. 自院・スタッフの公式/個人アカウントで公開中の動画・投稿を洗い出す
  2. 体験談的な表現(ビフォーアフター、効果の保証)が含まれていないか確認する
  3. 限定解除要件を記載する場所(プロフィール・投稿・概要欄など)を1か所に決めておく
  4. 事例解説書の改訂情報を定期的に確認する担当・タイミングを決めておく

クリニックと治療院で適用される規制の枠組みそのものが異なる点や、体験談に頼らない具体的な企画例については、以前まとめたクリニック・治療院の動画集客|医療広告のルールと湘南の始め方で詳しく解説している。「何を撮るか」で迷っている場合はあわせて参考にしてほしい。

動画がどのように見つけられるかという検索環境の変化も、AI検索(AIO)の広がりとともに加速している。AI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるかもあわせて確認しておくと、発信全体の設計がしやすくなる。

よくある質問

Q. 医療広告のガイドラインは今後も改訂され続けるのか?

A. 過去3年の改訂ペースを見る限り、今後も年1回程度のペースで見直しが続く可能性が高い。SNS・動画の利用が増え続ける以上、事例解説書側も後追いで更新され続けると見ておくのが現実的だ。

Q. 過去に作った動画は改訂のたびに公開停止すべきか?

A. 体験談的な表現や効果を保証する表現を含んでいなければ、慌てて非公開にする必要は基本的にない。まずは棚卸しをして、該当する表現がないかを確認することをすすめる。

Q. 院長個人のSNSアカウントも規制の対象になるのか?

A. 医療機関や医師への特定性・誘引性が認められる場合は、個人アカウントでの発信も医療広告として扱われ得る。公式アカウントだけでなく個人アカウントも点検の対象に含めるべきだ。

まとめ

医療広告の事例解説書は令和6年3月の第4版以降ほぼ毎年改訂が続いており、2026年3月には第6版が公表されたばかりだ。改訂の中心は「広告に該当する範囲の細部」であり、体験談を扱わないという核となるルールは一貫している。

湘南でクリニック・治療院を運営しているなら、改訂のたびに動画を作り直すのではなく、既存の発信を定期的に棚卸しし、線引きが変わった部分だけを確認する体制を持つことをすすめる。

どこまでが表現できる範囲か、最新の改訂内容を踏まえて判断に迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。規制の変化を踏まえた企画づくりを、無理のない範囲で一緒に考えていきたい。

観光DXと地域PR動画の潮流|湘南の事業者が押さえるべき変化

湘南の海岸沿いの町並みを俯瞰で捉えたドローン視点の風景

観光協会や商店会の集まりで「うちの地域も動画で盛り上げたいが、観光DXという言葉が先行していて何から手をつければいいのか分からない」という声を聞く機会が増えている。

結論から言えば、観光庁が進める観光DXの本丸は予約・決済システムやデータ分析だが、その手前にある「地域の魅力をどう伝え、見つけてもらうか」という入り口の部分で、動画コンテンツの重要性はむしろ増す一方だ。

この記事では、観光庁が掲げる観光DXの狙い、実際に拡散した自治体PR動画の一次データ、そして訪日外国人が動画をどれだけ情報源として頼っているかを一次情報で押さえたうえで、湘南の事業者が観光DXの流れをどう自分ごと化できるかを、制作者の現場感覚も交えて解説する。

  • 結論:観光庁の観光DXは予約・データ基盤の整備が中心だが、その手前で「見つけてもらう」入り口を担うのは地域PR動画である
  • 訪日外国人が出発前に役立った情報源は「動画サイト」21.4%で、SNS(21.9%)や親族・知人(22.8%)に迫る規模(JNTO調査・2023年時点)
  • 北九州市のPR動画「COME ON!関門!」は公開から2年余りで再生1億回を突破しており、地域PR動画の拡散力は自治体規模でも実証済み

観光DXの本丸はデータ基盤、その入り口を担うのが動画

動画を起点に予約・データ活用へつながる観光DXの流れを示すフラットイラスト

観光庁は「持続可能な観光地域づくり戦略」のなかで観光DXの推進を掲げ、その目的を「旅行者の利便性向上及び周遊促進、観光産業の生産性向上、観光地経営の高度化」と説明している。具体的には、宿泊や体験の予約・決済をシームレスに行える地域サイトの構築、DMOにおける「旅マエ・旅ナカ・旅アト」のデータ分析、地域単位でのレベニューマネジメントの推進などが柱になっている。

これらは主に予約システムやデータ基盤の整備であり、動画そのものが観光DXの中心施策として名指しされているわけではない。ただし、私たちが現場で見ている限り、こうした基盤がどれだけ整っても、旅行者がその地域を「知り」「行きたい」と思う最初のきっかけがなければ、そもそも予約サイトにたどり着かない。観光DXが整える「受け皿」の手前にある「発見される入り口」を担っているのが、地域PR動画だと私たちは捉えている。観光・地域PR動画そのものの作り方については観光・地域PR動画とは?人を呼び込む映像の作り方で解説しているので、あわせて読んでほしい。

地域PR動画は本当に拡散するのか——北九州市の事例に見る規模感

地域PR動画の拡散力を示す実例として、北九州市・下関市が制作した関門海峡PRムービー「COME ON!関門!」がある。2017年3月に公開されたこの動画は、北九州市の発表によれば2019年7月7日時点で再生回数が100,088,455回に達し、「1億回」を突破した。英語のセリフを中心に据え、「関門」という地名をとにかく知ってもらうことに絞り込んだシンプルな構成が特徴で、その後多言語版を含めて再生回数はさらに伸びている。

1本の地域PR動画が多言語・多地域へ拡散する様子を示すフラットイラスト

以下に、この事例の推移を整理する。

確認時点 累計再生回数 主な特徴
2019年7月7日時点 約1億回 単一言語(英語セリフ中心)で「関門」の認知に特化
2022年6月時点 約4億回 6言語版の合計。日本語・英語・タイ語・韓国語・繁體中文・簡体中文に展開

数字の規模は自治体の投下予算や偶発的なバイラルの要素も大きく、そのまま中小の事業者や観光協会に当てはまるわけではない。ただし「メッセージを一つに絞り込む」「余力に応じて多言語で展開の余地を残す」という設計の考え方自体は、湘南のような地域でPR動画を作るときにも参考になる視点だと私たちは考える。

訪日外国人にとって動画は情報源としてどれだけ重要か

JNTO(日本政府観光局)がまとめた訪日旅行の実態データでは、訪日外国人が出発前に役立ったと答えた情報源として、「日本在住の親族・知人」が22.8%、「SNS」が21.9%、「動画サイト」が21.4%という結果が出ている(2023年時点)。動画サイトは、個人のブログや従来型の旅行ガイドブックと肩を並べるか、それ以上に重要な情報源になっている計算だ。

この数字が示すのは、観光DXがどれだけ予約や決済の仕組みを整えても、その手前で「動画を見て行きたいと思う」きっかけ自体は、口コミやSNSと並ぶ比重で動画に委ねられているということだ。地域の宿泊施設や飲食店にとっても、自社の魅力を映像で発信することは、観光DXの恩恵を受け取るための前提条件になりつつある。SNSでの集客の考え方については湘南・大磯のSNS集客術|地域ブランドで選ばれる中小企業になる方法でも詳しく取り上げている。

湘南の事業者は観光DXの流れをどう自分ごと化するか

湘南の宿の入り口をミラーレスカメラで撮影するビデオグラファー

では湘南のような、北九州市規模の予算を持たない地域の事業者や観光協会は、この流れにどう向き合えばよいのか。私たちが撮影で大切にしているのは、作り込みすぎた宣伝映像よりも、現場の自然な空気をそのまま拾うことだ。カメラの存在をできるだけ意識させない場所に置き、スタッフに自然体でいてもらうことを心がけている——これは私たちの現場感覚として、美容室の撮影でも観光・地域PRの撮影でも変わらない考え方だ。

具体的には、観光協会が地域の祭りや商店街の日常風景を撮る場合も、旅館やゲストハウスが宿の朝の空気を撮る場合も、飲食店が仕込みの様子を撮る場合も、「見せたいものを作り込む」よりも「そこにある本物の空気を撮る」ほうが、結果的に見る人の心に残りやすいというのが私たちの現場感覚だ。

地域PR動画を作るときにまず押さえておきたいのは次の3点だ。

  1. 伝えたいメッセージを一つに絞り込む(欲張って詰め込まない)
  2. 誰に見てもらいたいか(観光客なのか、移住検討者なのか)を先に決める
  3. YouTubeやSNSへの投稿後、自社サイトや観光協会のページにも同じ動画を置き、文字情報を添えて検索・AI経由でも見つけてもらえるようにする

この「文字情報を添えて見つけてもらう」という視点はAI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つけられるか|湘南版でも詳しく解説している。

よくある質問

Q. 観光DXと地域PR動画は同じものか?

A. 同じではない。観光DXは主に予約・決済システムやデータ分析による観光地経営の高度化を指す施策で、地域PR動画はその手前にある「知ってもらう・行きたいと思ってもらう」入り口を担うコンテンツだ。両者は補完関係にある。

Q. 地域PR動画はどのくらいの規模の事業者でも効果があるのか?

A. 北九州市の事例のような数億回再生は自治体規模の予算とバイラル要素があってこそだが、メッセージを一つに絞り込む・自然な現場の空気を撮るという設計の考え方は、規模を問わず地域の小さな事業者にも応用できる。

Q. 訪日外国人向けに動画を作る場合、何語で用意すべきか?

A. 必ずしも多言語版を最初から揃える必要はない。まずは日本語で「その地域・その店にしかない魅力」を自然な形で撮り、余力があれば主要言語の字幕を足していく順番で十分だ。

Q. 動画を作った後、観光DXの恩恵をどう受け取ればよいか?

A. 動画をYouTubeやSNSに置くだけでなく、自社サイトや観光協会のページにも同じ動画と文字による要約を併記しておくことをすすめる。検索エンジンやAI検索からも見つけてもらいやすくなり、観光DXが整備する予約・情報基盤ともつながりやすくなる。

まとめ

観光庁が進める観光DXの中心は予約・決済システムやデータ分析による観光地経営の高度化だが、そうした基盤が整っても、旅行者がその地域を「知り」「行きたい」と思う入り口がなければ意味を持たない。

北九州市のPR動画が公開から2年余りで再生1億回を超えた事例や、訪日外国人の2割超が動画サイトを出発前の情報源として挙げているデータは、地域PR動画がその入り口として無視できない存在であることを示している。

湘南の事業者にとっても、作り込みすぎない現場の空気を撮り、メッセージを一つに絞り込み、文字情報を添えて発信することが、観光DXの流れに乗るための現実的な一歩になる。まずは自分たちの地域・お店の「一番伝えたいこと」を一つに絞り込むことから始めてみてほしい。どこから手をつければいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみることをすすめる。

AI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるか|湘南版

スマートフォンでAI検索の要約結果を一緒に確認する湘南の事業者と動画制作者

「うちの動画、YouTubeにはアップしているが、それがGoogleの検索結果とどう関係しているのか正直よく分からない」——湘南エリアの事業者と話していると、この手の戸惑いを聞く機会が増えている。

結論から言えば、検索エンジンはいま「リンクの一覧を並べる」ものから「AIが要約して答える」ものへと姿を変えつつあり、その変化のなかで動画は「見てもらう」だけでなく「AIに読み取られ、回答の材料として引用される」対象になり始めている。動画をアップロードして終わりにしていると、この新しい検索の土俵に乗れないまま埋もれてしまいかねない。

この記事では、AI検索(AIO)がどれほどの速さで広がっているかを一次データで押さえたうえで、AIがどんな動画を選んで引用しているのか、そして湘南の事業者が今日から取り組める実務のポイントを、制作者の現場感覚も交えて解説する。

  • 結論:日本のAI Overview表示率は2026年4月時点で全検索の47%、前年同月比2.4倍に拡大している
  • AIが動画を引用するとき、その94%は長尺の説明的な動画で、ショート動画はわずか5.7%にとどまる
  • 動画は「クリックさせる」設計から「AIに正しく理解・引用させる」設計への切り替えが必要になっている

なぜ今、動画にもAI検索(AIO)対策が必要なのか

SEO分析ツールを提供するAhrefsの「AI Overview Tracker」(2026年4月版)によれば、日本市場でGoogle検索結果にAI Overview(AIによる要約)が表示される割合は全検索の47%に達し、前年同月比で2.4倍に拡大した。半分近くの検索で、ユーザーは個別サイトのリンク一覧より先に、AIがまとめた回答をまず目にしている計算になる。

この流れは、検索結果をクリックしない「ゼロクリック検索」の広がりとも重なる。株式会社博報堂DY ONE 次世代検索研究所が2025年11月に実施した「AI検索白書2026」の調査では、ビジネスシーンでAI検索サービスを利用する人は29.9%(前回2025年3月調査の9.4%からおよそ3倍)に増え、生成AIの回答のみ、または生成AIへの追加質問だけで情報収集を完結させた「ゼロクリックサーチ」該当者は23.9%、およそ4人に1人にのぼった。

自社サイトへのクリックを起点に考えてきた従来のSEOの感覚だけでは、この4人に1人には最初から情報が届いていないことになる。動画についても、「サイトに来てもらってから見てもらう」動線に加えて、「AIの回答の中で紹介・引用される」動線を意識する必要が出てきている。

AIはどんな動画を「引用」しているのか——長尺動画が94%

検索結果の一覧がAIによる要約ボックスに置き換わる様子を示すフラットイラスト

AI検索エンジンが動画そのものを実際にどう扱っているかを示すデータもある。SEO/AIO分析を手がけるOtterly.AIが2026年3月に公開した「YouTube AI Citation Study 2026」は、ChatGPT・Google AI Overviews・AI Mode・Perplexity・Microsoft Copilot・Geminiの6つのAIプラットフォームを対象に、30日間で1億件を超えるAI引用を分析したものだ。それによると、ソーシャルメディア全体の引用のうちYouTube動画が占める割合は31.8%で、プラットフォーム別ではPerplexityで38.7%、Google AI Overviewsで36.6%がYouTube動画への引用だった。

注目すべきは動画の「長さ」による差だ。同調査では、AIによる引用の94%が長尺(ロングフォーム)動画に集中し、TikTokやYouTube Shortsのような短尺動画への引用はわずか5.7%にとどまった。さらに、Google AI Overviews上でYouTube動画が引用される際、動画内の該当シーンへ直接飛べる「タイムスタンプ付き」で示されるケースが73%にのぼるという。

この結果は、私たちが現場で見ている感覚とも重なる。ショート動画は認知を一気に広げる瞬発力に長けているが、AIが「回答の根拠」として参照するのは、ハウツーや解説、インタビューのように、ひとつの問いにきちんと答えきる構成を持った動画のほうだ。ショート動画の位置づけについては2026年のショート動画トレンド|湘南の事業者が押さえる3つの変化でも触れているので、両方の使い分けを考えるうえで参考にしてほしい。

以下に、動画の形式ごとのAI引用のされやすさを整理する。

動画の種類 AI引用に占める割合 向いている役割
長尺動画(ハウツー・解説・インタビュー等) 94% 検索意図に正面から答える「参照元」
ショート動画(TikTok・YouTube Shorts等) 5.7% 認知拡大・SNS上での接触機会づくり

数字が示す通り、AI検索に「引用される」ことを狙うなら、まず優先すべきは長尺側の動画をきちんと用意することだ。

AIに見つけてもらう動画をどう作るか——実務のポイント

美容室でカメラの存在を意識させないように自然な様子を撮影するビデオグラファー

AIが動画を引用するときにまず頼っているのは、動画そのものの画や音ではなく、タイトル・概要欄・字幕・チャプターといった「文字情報」だ。動画がどれだけ良い内容でも、そこに何が写っているかをAIが文字から読み取れなければ、回答の材料として選ばれる可能性は低くなる。

実務としてまず取り組みたいのは次の3点だ。

  1. 動画タイトルと概要欄に、その動画が答えている「問い」を具体的な言葉で書く
  2. YouTubeでチャプター(タイムスタンプ)を区切り、見どころごとに何が分かるかを示す
  3. 自社サイトの記事本文でも、動画の内容を文章で要約して添える

私たちが撮影で大切にしているのは、カメラの存在をできるだけ消し、目立たない場所にカメラを置いて、スタッフや職人にカメラを意識させすぎないことだ。作り込まれた宣伝映像よりも、現場の自然な言葉や手の動きのほうが、見る人にも——そしておそらくAIにとっても——「本物の情報」として伝わりやすいというのが、私たちの現場感覚だ。美容室の撮影現場でも同じ考え方で臨んでおり、スタイリストと客の自然なやり取りをそのまま拾うことを意識している。AIとの向き合い方についてはAI動画生成ツールの現在地と人が撮る映像の価値|湘南の事業者向けでも詳しく取り上げている。

ゼロクリック時代に、動画を作る意味はどこにあるのか

1本の動画が複数のAIアシスタントに引用され枝分かれする様子を示すフラットイラスト

ここまでの数字だけを見ると、「クリックされないなら動画を作っても意味がないのでは」と感じるかもしれない。だが、博報堂DY ONEの調査が示すゼロクリックサーチの広がりは、逆に言えば「AIの回答の中で自社の名前や動画が紹介されるかどうか」の重要性が増しているということでもある。

AIの回答の中で自社の動画やサイトが引用元として名前を出されれば、その場でクリックされなくても、後日の指名検索や問い合わせにつながる可能性がある。湘南のように地域内の紹介や口コミが起きやすい商圏では、この「AIの回答の中に登場している」こと自体が、ちょっとした信頼の裏付けになり得る。動画とAI時代の関わり方についてはAI動画・SNS時代に「人が関わる」ことで価値が上がる理由でも論じているので、あわせて読んでほしい。

つまりAI検索の時代は、動画の意味がなくなる時代ではなく、「誰に何を見せて選ばれるか」の設計をやり直す時代だと私たちは捉えている。

よくある質問

Q. AI検索(AIO)対策として動画は必須か?

A. 必須ではないが、有利に働く。テキストだけのサイトより、動画とそれを説明する文字情報がセットになっているほうがAIに内容を理解されやすく、回答の引用元として選ばれやすくなる。

Q. ショート動画はAI検索に不利ということか?

A. 認知拡大やSNS上での接触機会づくりには引き続き有効だ。ただしOtterly.AIの調査ではAI引用の94%が長尺動画に集中しており、AIの「回答の根拠」としては長尺・説明的な動画のほうが選ばれやすい。両者は役割を分けて使うのがよい。

Q. 動画をAIに見つけてもらうために最低限やるべきことは?

A. 動画タイトルと概要欄に、その動画が答えている問いを具体的に書き、チャプター(タイムスタンプ)を区切ることだ。AIはまず文字情報から動画の中身を理解する。

Q. AI Overviewの表示率は今後も上がり続けるのか?

A. 少なくとも2026年前半までは急拡大が続いており、業種によっては表示率が8割を超える領域も出てきている。今後は精度重視の調整局面に入る可能性もあるが、AI検索が検索体験の一部として定着した流れ自体は変わらないと見てよい。

まとめ

日本のAI Overview表示率が半年足らずで2倍以上に拡大し、ビジネスシーンでのAI検索利用も3倍近くに増えている以上、動画コンテンツの見つけられ方が変わりつつあるのは間違いない。

そのなかでAIが実際に引用しているのは、瞬発力のあるショート動画よりも、ひとつの問いにきちんと答えきる長尺動画だ。タイトル・概要欄・チャプターといった文字情報を整え、動画の中身をAIが読み取れる形にしておくことが、これからの動画運用の土台になる。

まずは自社の動画のタイトルと概要欄が、来訪者だけでなくAIにも「何を答えている動画か」が伝わる書き方になっているかを、一度見直すことをすすめる。どこから手をつければいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。