
「ショート動画がいいらしい、とは聞くけれど、流行り物に振り回されているだけではないのか」——湘南の経営者と話していると、そんな半信半疑の声をよく聞く。もっともな疑問だと思う。TikTokが日本で話題になってから何年も経ち、「そろそろブームは終わるのでは」という見方も根強くあるからだ。
結論から言えば、2026年のショート動画はブームの段階をとっくに過ぎ、テレビや検索と並ぶ「情報インフラ」として定着する局面に入っている。私たちが注目している変化は3つ。①縦型動画に広告市場のお金が本格的に流れ込み始めたこと、②動画視聴が生活時間の中心を占めるようになったこと、③そして視聴者が「広告らしい動画」を見抜き、「公式感のない動画」で財布を開くようになったことだ。
この記事では、この3つの変化を最新の調査データで確認しながら、平塚・大磯・湘南の中小企業が2026年に何から手をつけるべきかを、制作者の視点で解説する。
変化① 縦型動画に「お金」が流れ込み始めた——
前年比155.9%という異常値
まず市場の数字から見てほしい。サイバーエージェントが実施した国内動画広告の市場調査(2026年発表)によると、2025年の動画広告市場は8,855億円で前年比122%。そのなかで縦型動画広告は前年比155.9%の2,049億円と、市場全体の伸びを大きく上回った。同調査は、縦型動画広告が2029年には5,648億円へ、動画広告市場全体では約1兆6,336億円へ拡大すると予測している。

制作者としてこの数字を読むと、単なる「市場が伸びている」以上の意味が見えてくる。広告費は、企業のなかで最も現実的なお金だ。効果のない場所には流れない。縦型ショート動画に年間2,000億円を超える広告費が投じられているという事実は、「縦型の画面で人が動く」ことが大量の実測データで裏づけられた、ということを意味している。
映像の主戦場がテレビからYouTube、そしてショート動画へどう移ってきたかはテレビ→YouTube→ショート動画、映像の主戦場はどう移ったか【制作者視点】で詳しく書いた。2026年は、その流れの「答え合わせ」が市場規模という形で出てきた年だと言える。
変化② 動画は「見るもの」から「生活時間そのもの」へ
次に、視聴者側の変化だ。総務省の「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2025年6月公表)によると、平日のインターネット利用時間は平均181.8分と前年からさらに伸び、テレビのリアルタイム視聴(154.7分)との差を広げた。サービス別の利用率では、YouTubeが全年代で80.8%、Instagramが52.6%、TikTokが33.2%。もはや特定の世代の流行ではなく、国民の大半が日常的に動画とSNSに時間を使っている。

考えてみてほしい。1日3時間を超えるネット利用時間の多くはスマホの画面で消費され、その画面は縦に持たれている。人がいる場所に情報を届けるのが商売の基本だとすれば、縦型のショート動画は「選択肢のひとつ」ではなく、すでに「人がいる場所」そのものになっている。
これは湘南の中小企業にとって他人事ではない。平塚の工場も、大磯の店舗も、地元の見込み客はテレビの前ではなくスマホの中にいる。地域で商圏を絞って戦う会社ほど、この生活時間の変化を早く取り込んだ方が有利になる——私たちはそう考えている。
変化③ 「公式感のなさ」が財布を開かせる時代
3つ目の変化は、もっと質的なものだ。視聴者は広告らしい動画を一瞬で見抜き、スクロールで飛ばすようになった。代わりに効き始めているのが、作り込まれていない「公式感のない」動画だ。
Z世代のTikTokユーザー400名を対象にしたOASIZの調査(2025年5月発表)では、購買に最も影響を与えた投稿は、インフルエンサーの案件動画でも広告色の強い公式PRでもなく、「公式感を感じさせない企業投稿」だった。39.3%が「企業アカウントの自然な投稿を見てブランドに興味が湧いた」と回答している。企業が発信していても、広告の顔をしていなければ受け入れられる——ここが2026年のショート動画運用の核心だと私たちは見ている。

この変化は、実は地域の中小企業にこそ追い風だ。作り込んだブランドムービーで大手と競う必要はなく、現場の日常、職人の手元、社長の人柄といった「そこにしかないリアル」をそのまま見せることが最も効く時代になったからだ。私たちの現場でも、企業案件のTikTok運用で初月100万再生、2023年4月から6月には3ヶ月連続で300万再生以上という結果が出ているが、伸びた動画はいずれも広告らしさを削ぎ落とし、現場のリアルを主役にしたものだった。
2026年、湘南の中小企業は何から手をつけるか
3つの変化を踏まえると、やるべきことは意外とシンプルになる。
第一に、プラットフォームをひとつ決めて始めること。あれもこれもと手を広げると、更新が止まって逆効果になる。自社の客層と目的からYouTubeとTikTokのどちらを選ぶかは、YouTubeとTikTok、中小企業はどっちから始める?目的別の選び方で判断基準を整理している。
第二に、「広告を作る」発想を捨てて「現場を見せる」発想に切り替えること。撮影スタジオも台本もいらない。仕事の日常のなかにある「絵になる瞬間」を見つける目の方が重要で、そこは地域の現場を知る制作者の出番でもある。地域ブランドとしてSNSで選ばれていく道筋は湘南・大磯のSNS集客術|地域ブランドで選ばれる中小企業になる方法に詳しい。
第三に、続けられる体制を先に設計すること。ショート動画は一発の当たりより継続が資産になる。週に何本、誰が撮り、誰が編集するのか。この設計を最初に固めた会社だけが、半年後に「地域で動画をやっている会社」というポジションを取れる。
まとめ
2026年のショート動画を貫くトレンドは、3つの変化に集約できる。縦型動画広告が前年比155.9%の2,049億円へ拡大し(サイバーエージェント調査・2026年発表)、平日のネット利用時間が181.8分とテレビを引き離し(総務省・令和6年度調査)、そして「公式感を感じさせない企業投稿」が購買を動かすようになった(OASIZ調査・2025年)。お金、時間、心理——3つの数字がすべて同じ方向を指している。
つまりショート動画は、もう「様子を見る」対象ではない。地域で戦う中小企業にとっては、大手より先に地元の生活時間へ入り込める、数少ない逆転の余地が残された領域だ。
次のステップとして、まず自社の商圏と客層がどのプラットフォームにいるのかを確かめることをすすめる。そのうえで「現場の何を見せられるか」を書き出してみると、自社のショート動画の輪郭が見えてくるはずだ。
平塚・大磯・湘南で「うちの場合は何から始めるべきか」を具体的に知りたければ、現場を知る制作者に聞くのが早い。私たちも無料相談を受け付けているので、プラットフォーム選びの壁打ちからでも気軽に活用してほしい。
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