
「動画広告なんて大手企業がやることで、うちのような小さな店には関係ない」——湘南エリアの経営者と話していると、いまだにそう感じている人は多い。看板やチラシ、地域情報誌への出稿はしていても、動画に予算を割く発想自体がまだ遠い、という声もよく聞く。
結論から言えば、その前提はもう崩れつつある。株式会社サイバーエージェントの調査によると、2025年の国内動画広告市場は前年比122.2%の8,855億円に達し、2026年には初めて1兆円の大台(1兆437億円)を超える見通しだ。動画広告はもはや大手企業だけの話ではなく、広告費全体の構造そのものを動かす主役になりつつある。
この記事では、電通・サイバーエージェント・アルファノート株式会社という3つの一次データをもとに、動画広告市場でいま何が起きているのか、中小企業が実際にどれくらいの予算で動画に投資しているのか、そして湘南の事業者が今日から取れる一歩を、制作者の視点で整理する。
- 結論:2025年の国内動画広告市場は8,855億円(前年比122%)、2026年に1兆円突破の見通し(サイバーエージェント調査)
- インターネット広告費が総広告費の50.2%を占め、初めて過半数を超えた(電通調査)
- BtoB企業の動画マーケティング実施者の60.6%が効果を実感、制作予算は「10万円未満」が最多(アルファノート調査)
動画広告市場、2025年は8,855億円で前年比122%成長
——2026年に1兆円突破へ
動画広告市場の伸びは、ここ数年の勢いの延長ではなく、明らかな加速を見せている。サイバーエージェントが2025年11月から2026年1月にかけて実施した「2025年国内動画広告の市場調査」によると、市場規模は前年の7,249億円から一気に8,855億円へと拡大し、成長率は122.2%に達した。同社はさらに2026年に1兆437億円、2029年には1兆6,336億円に達すると予測している。
以下に市場規模の推移を整理する。
| 年度 | 国内動画広告市場規模 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2024年(実績) | 7,249億円 | — |
| 2025年(実績) | 8,855億円 | 122.2% |
| 2026年(予測) | 1兆437億円 | 約118% |
| 2029年(予測) | 1兆6,336億円 | — |

この数字が示しているのは、テレビCM中心だった広告予算の一部が、OTT(インターネット経由の動画配信)やコネクテッドTV向けの広告へと着実にシフトしているという構造変化だ。同調査でも「広告主によるテレビCMから、OTT・コネクテッド向けに配信する広告への予算シフトが進んだ」と分析されている。
湘南エリアでも、平塚の商店街で雑貨店を営むオーナーが「チラシの反応が年々落ちている」とこぼす場面に、私たちは何度も立ち会ってきた。広告費の流れ先が変わっている以上、同じ予算配分を続けていれば相対的に届く人は減っていく。
インターネット広告費が初めて広告費全体の過半数に
——電通調査が示す構造変化
動画広告市場の拡大は、日本の広告費全体の勢力図とも連動している。電通が2026年3月5日に発表した「2025年 日本の広告費」によると、2025年の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)で4年連続の過去最高を更新した。その中でインターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)となり、総広告費に占める構成比は50.2%と、初めて過半数に達した。
テレビメディアの広告費が横ばい圏にとどまる一方、テレビ局が配信する動画枠など「テレビメディア関連動画広告費」は805億円(前年比123.3%)と大きく伸びている。同じ「動画」というフォーマットでも、視聴の場がテレビ受像機からスマートフォンやコネクテッドTVへと広がっていることの表れだ。
湘南のような地方都市の事業者にとって、この数字が意味するのは単純だ。広告費の主戦場がテレビや紙からインターネット、特に動画へ移った以上、動画を持たない企業は土俵に上がる前に選択肢を減らしていることになる。この流れの詳細は2026年のショート動画トレンドでも整理しているので、あわせて読んでほしい。
中小企業の動画予算はどのくらいが目安か
——実施企業の60.6%が効果を実感
「動画は予算がかかる」という印象は根強いが、実態のデータを見るとイメージと少しずれがある。アルファノート株式会社が2026年6月9〜10日に実施した「BtoB企業における動画マーケティングの実態調査」(動画マーケティングを実施しているBtoB企業のマーケティング担当者500人が対象)によると、動画1本あたりの制作予算は「10万円未満」が28.4%で最も多く、「30万円〜50万円未満」が23.0%で続く。100万円を超える予算をかけている企業は全体の1割強にとどまる。
| 動画1本あたりの制作予算 | 回答割合 |
|---|---|
| 10万円未満 | 28.4% |
| 10万〜30万円未満 | 16.4% |
| 30万〜50万円未満 | 23.0% |
| 50万〜100万円未満 | 18.8% |
| 100万〜300万円未満 | 8.0% |
| 300万円以上 | 5.4% |
予算をかけていない企業が多い一方で、効果を実感している企業の割合は高い。同調査では動画マーケティング実施企業のうち60.6%が「効果があった」と回答しており(「期待以上の効果があった」14.0%+「ある程度の効果があった」46.6%)、具体的な効果としては「展示会・イベントでの集客数の増加」が35.0%で最も多く挙げられている。
つまり、大きな予算をかけなければ動画マーケティングが成立しない、というのは思い込みに近い。私たちが不動産業のお客様と仕事をする際も、内見前に物件の雰囲気を伝える短い動画を1本用意するだけで、来店時の質問の質が変わったという声をいただくことがある。まとまった予算がなくても、目的を絞った1本から動画は十分に機能する。
スマホ向け縦型とコネクテッドTVの伸びが示すもの
動画広告市場の内訳を見ると、次にどこへ投資すべきかのヒントが見えてくる。サイバーエージェントの調査では、2025年の動画広告市場のうちスマートフォン向けが7,053億円と全体の8割を占め、依然として主戦場であることが分かる。一方でコネクテッドTV向けは1,295億円(前年比127%)と、市場全体の伸び率(122%)を上回るペースで成長している。

これは、視聴者が動画を「テレビで受動的に見る」時代から、「スマホで能動的に選ぶ」時代を経て、いまは「大画面のテレビ受像機でネット動画を選んで見る」時代へと段階的に移っていることを示している。中小企業が動画に投資する際も、スマホ向けの縦型ショート動画を軸にしつつ、将来的にコネクテッドTV向けの配信面も選択肢に入ってくることを頭の片隅に置いておいて損はない。
もっとも、配信面が増えても「作り方」まで大きく変える必要はないと私たちは考えている。私たちの撮影チームでは、目立たぬ場所にカメラを置き、現場の人にカメラを意識させない自然体の映像を撮ることを常に意識している。スマホ向けでもコネクテッドTV向けでも、作り込みすぎた広告的な映像より、現場の空気がそのまま伝わる自然な映像のほうが、視聴者の警戒感を招きにくい。
湘南の中小企業が今日からできる一歩

ここまでのデータを踏まえると、湘南の中小企業がまず取るべき一歩は明確だ。いきなり大きな予算を確保する必要はなく、スマートフォン1台で撮れる15〜30秒程度のショート動画から始め、反応を見ながら予算配分を調整していくのが現実的だ。
予算の考え方や内製・外注の判断基準については動画制作は内製と外注どちらが得か、制作費用全体の目安は動画制作の費用相場【完全ガイド】で詳しく整理しているので、あわせて参考にしてほしい。
よくある質問
Q. 動画広告市場の成長は、中小企業にも関係ありますか?
A. 関係がある。市場拡大を牽引しているのはスマートフォン向けの縦型動画で、大企業に限らず個人店・中小企業でも比較的低コストで参入できる領域だからだ。
Q. 動画マーケティングにはどれくらいの予算が必要ですか?
A. アルファノート株式会社の調査では、動画1本あたり「10万円未満」で制作している企業が28.4%と最も多い。まずは小さく始めて、効果を見ながら予算を積み増す進め方が現実的だ。
Q. テレビCMを出していない中小企業でも動画広告は意味がありますか?
A. 意味がある。動画広告市場の成長を牽引しているのはテレビCMではなくスマートフォン向けの動画広告であり、テレビCMを持たない企業でも同じ土俵で戦える領域が広がっている。
まとめ
2025年の動画広告市場は前年比122%の8,855億円に達し、2026年には初めて1兆円を超える見通しだ。インターネット広告費は総広告費の過半数を占めるようになり、広告の主戦場はすでにテレビや紙から動画へと移っている。
予算をかけなければ参入できない世界ではない。制作予算「10万円未満」の企業が最も多いという調査結果が示すように、小さく始めて効果を確かめながら育てていくのが、いまの動画マーケティングの現実的な姿だ。
次のステップとして、まずは自社が動画で伝えられる「現場のリアル」がどこにあるかを、一度言語化することをすすめる。そこが見えれば、スマートフォン1台からでも動画は十分に機能し始めるはずだ。
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