マイクロインフルエンサーの動画活用|湘南の直売所が知るべき動向

湘南の直売所でスマートフォンを構えて撮影する発信者と地魚を並べる店主

「うちみたいな直売所は、有名インフルエンサーに頼むお金なんてない」——大磯や平塚で地魚や地場野菜を売る個人店の店主と話すと、こう言われることが多い。だが実際に伸びているのは、フォロワー数百万人の大物ではなく、地域や特定ジャンルに強い「マイクロ・ナノインフルエンサー」による、等身大の動画発信だ。

結論から言えば、湘南のような地域密着型の個人店にとって、マイクロインフルエンサーの動画活用は決して縁遠い話ではない。むしろ大企業のタレント起用よりも相性がいい場面すら多い。

この記事では、インフルエンサーマーケティング市場の最新調査データと、企業側のリアルな成功・失敗の声をもとに、湘南の直売所や個人店がこの波にどう乗ればいいかを、制作者としての現場感覚を交えて整理する。

  • 結論:縦型ショート動画のインフルエンサー活用市場は2024年時点で246億円、2029年には636億円(約2.6倍)まで伸びる見通し
  • 企業のインフルエンサーPRは約7割が「うまくいった」と回答する一方、「購買につながらなかった」が最大の悩みという調査結果もある
  • 湘南の直売所・個人店には、大物より地域や客層とのつながりが濃いマイクロ・ナノインフルエンサーのほうが向きやすい

なぜ今、インフルエンサー動画マーケティングが
急速に伸びているのか

株式会社サイバー・バズと株式会社デジタルインファクトが2024年11月7日に発表した共同調査によると、国内のソーシャルメディアマーケティング市場は2024年時点で1兆2,038億円(前年比113%)に達し、2029年には2024年比約1.8倍の2兆1,313億円まで拡大すると見込まれている。その中でもインフルエンサーマーケティング市場は2024年に860億円(前年比116%)、2029年には約1.9倍の1,645億円に達する見通しだ。

特に伸びが際立つのが、TikTokの普及をきっかけにInstagramやYouTube、LINEにも広がった縦型ショート動画によるインフルエンサー起用だ。同調査では、この「インフルエンサーマーケティング(縦型ショート動画)」の市場規模を2024年時点で246億円(前年比137%)と推計し、2029年には約2.6倍の636億円に達すると予測している。以下に主要な数字を整理する。

区分 2024年実績 2029年予測
インフルエンサーマーケティング全体 860億円 1,645億円(約1.9倍)
うち縦型ショート動画 246億円 636億円(約2.6倍)

この数字が意味するのは、動画広告市場全体の成長(動画広告市場、初の1兆円へで詳しく触れた)の中でも、「第三者が語る動画」への投資が特に加速しているということだ。企業が自ら発信する情報より、実際に使っている人の声のほうが信頼されやすいという消費者心理を、多くの企業が動画の形で取りに行き始めている。


企業のインフルエンサーPR、
成功率とつまずきどころ

縦型ショート動画市場の成長を表す上昇する棒グラフの図解

株式会社PRIZMAが2025年4月1日に発表した「インフルエンサーPRの実態調査」(2025年3月25日〜26日実施、インフルエンサーを事業プロモーションに活用したBtoC企業担当者507人が対象)では、「とてもうまくいった」が18.7%、「ややうまくいった」が55.8%で、合計すると約74%が肯定的な評価をしている。一方で、感じた課題を尋ねると次のような結果になった。

感じた課題 回答割合
認知はされたが購買につながらなかった 31.6%
工数がかかる 25.6%
意図と違う投稿内容になった 24.1%
思ったより拡散されなかった 21.1%

この数字が意味するのは、インフルエンサー起用は「頼めば自動的に成果が出る」施策ではないということだ。特に最大の悩みである「購買につながらない」は、フォロワー数の多さだけでインフルエンサーを選んでしまい、実際の客層とズレが生じたときに起こりやすい。だからこそ、大きなリーチより「誰に届くか」の精度を重視するマイクロ・ナノインフルエンサーの発想が意味を持ってくる。


湘南の直売所・個人店にこそ
「マイクロ」が向く理由

小さな店舗と地域の人々をつなぐマイクロインフルエンサーのイメージ図解

大企業が起用する大物インフルエンサーは、フォロワー数こそ多いが、フォロワーの居住地も興味関心もバラバラなことが多い。一方、平塚や大磯の地魚・地場野菜、湘南グルメを日常的に発信しているマイクロ・ナノクラスの発信者は、フォロワーの多くが実際にその地域に住んでいたり、週末に足を運べる距離にいたりする。つまりリーチの「量」より「質」で、直売所や個人店の商圏とぴったり重なりやすい。

「演出しすぎない動画」が信頼を生む

私たちの撮影チームでは、発信で大事なのは伝えたいことをできるだけ自然体で伝えることだと考えている。現場では常に目立たない場所にカメラを置き、被写体にカメラを意識させない自然な受け答えを撮ることを意識している。台本どおりに演じてもらうよりも、素の会話や素の作業風景のほうが、見る人には「リアルな現場」として伝わりやすい。この考え方は、マイクロインフルエンサーが撮る飾らない動画とも相性がいい。取れたての魚をその場でさばく様子、朝どれ野菜を並べる手元——そうした素の場面こそ、大きな制作費をかけずに信頼を積み上げる素材になる。

口コミ動画の活かし方はお客様の声・口コミ動画の活かし方でも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。


小さく始めるための実践ステップ

湘南の直売所で店主と自然な会話を撮影する発信者

大きな予算をかけずに始めるなら、次のような順番で進めるのが現実的だ。

  1. まずは常連客やSNSで自店を紹介してくれている一般ユーザーを探す(すでに好意的に発信している人が最初の候補になる)
  2. 地域名や商品名(例:「平塚 地魚」「大磯 直売所」)で日常的に発信しているマイクロ・ナノクラスの発信者を検索する
  3. フォロワー数だけでなく、コメント欄の反応や、実際にその地域の内容を発信しているかを確認する
  4. 依頼した投稿であることが分かるよう、PR表記・タイアップ表記を必ず付けてもらう

最後の表記ルールは軽視できない。依頼した投稿であることを隠すと、景品表示法のステルスマーケティング規制に抵触するおそれがある。表示ルールの詳細はステマ規制とは?湘南の事業者がSNS動画で守るべき表示ルールにまとめている。

よくある質問

Q. マイクロインフルエンサーとナノインフルエンサーの違いは何か?

A. 明確な統一基準はないが、フォロワー数が比較的少ない発信者をまとめてこう呼ぶことが多い。湘南の個人店にとっては、フォロワー数そのものより、対象地域や客層とどれだけ近い距離感で発信しているかで選ぶほうが実務的だ。

Q. 個人店でもインフルエンサーに動画を依頼できるか?

A. 依頼できる。大規模なタレント起用に比べ、地域や特定ジャンルに強いマイクロ・ナノクラスは少ない予算感で始めやすいとされ、まずは常連客への協力依頼から試すこともできる。

Q. 自社で動画を作るのとインフルエンサーに任せるのは、どちらがいいか?

A. どちらか一方ではなく、使い分けが現実的だ。商品情報や店の基本情報は自社発信で正確に伝え、第三者としての信頼感がほしい場面ではインフルエンサーの視点を借りる、という住み分けを考えたい。

まとめ

インフルエンサーマーケティング市場、特に縦型ショート動画による活用は今後も伸びが見込まれる分野だ。一方で企業側の調査では「購買につながらない」という悩みも根強く、大きなリーチを追うだけでは成果が出にくいことも分かってきている。

湘南の直売所や個人店にとっては、フォロワー数の大きさより、地域や客層と近い距離感で発信しているマイクロ・ナノインフルエンサーのほうが、むしろ相性がいい選択肢になり得る。次のステップとして、まずは自店をすでに好意的に発信してくれている常連客やユーザーが誰かを言語化することをすすめる。そこから、演出しすぎない自然な動画づくりを一緒に組み立てていけばよい。