
「求人を出しても、現場系の応募がまったく来ない」——平塚・大磯エリアの建設会社の経営者と話していて、この悩みを聞かない月はない。求人サイトに載せても、折り込みチラシを増やしても、反応が薄いという声が続いている。
結論から言えば、採用動画は応募数そのものを保証する魔法の道具ではない。だが、「応募する前に会社と現場を正しく理解してもらう」という、採用活動でいちばん抜け落ちやすい工程を埋めることはできる。文字と写真だけの求人情報では伝わらない、現場の空気や人の表情は、動画でしか渡せない情報だからだ。
この記事では、建設業の採用難がどれほど深刻なのかを統計で確認したうえで、採用動画がなぜ効くのか、何を撮ればいいのか、費用感はどれくらいかを、湘南で撮影と編集の現場に立つ制作者の視点から解説する。
- 建設躯体工事従事者の有効求人倍率は7倍台(2026年1月時点)で、全職業平均の6倍超の水準にある
- 採用動画の役割は「応募数を増やす」こと以上に「ミスマッチを減らし、応募後の歩留まりを上げる」ことにある
- 3Kイメージの払拭には、作り込んだイメージCMより現場をそのまま見せる密着型が向いている
建設業の採用難——数字で見る現在地
まず、建設業の人手不足がどの水準にあるのかを数字で押さえておきたい。厚生労働省の職業安定業務統計によると、建設躯体工事従事者の有効求人倍率は2026年1月時点で7.48倍に達している。全職業計の有効求人倍率が1.14倍であることを踏まえると、実に6倍超の開きがある水準だ。求職者1人に対して求人が7件以上ある計算で、選ぶのは会社ではなく求職者の側になっているということになる。
国土交通省が実施している「建設労働需給調査」(令和8年5月調査)でも、全国8職種の過不足率は1.2%の不足となり、前月・前年同月からさらに不足幅が拡大したと報告されている。景気の波はあっても、建設業の人手が構造的に足りない状態が続いていることが、複数の統計から裏付けられている格好だ。
この数字が意味するのは、求人票の見た目を多少整えたところで応募が急増するような状況ではない、ということだ。求職者に選ばれる側に回るためには、会社の中身そのものを、応募前の段階でどれだけ正確に伝えられるかが勝負になる。
なぜ動画が「採用の入り口」を変えるのか
建設業には長年、「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージが根強く残っている。求人票の文章だけでこのイメージを覆すのは難しい。だが動画なら、実際の現場の安全対策、休憩時間の雰囲気、先輩と若手のやり取りといった、言葉にすると陳腐になりがちな情報を、そのままの温度で見せることができる。
動画制作会社moovyが公開している採用動画の事例集では、第一工業株式会社が採用動画を活用した結果、スカウトメールへの返信率が上昇し、内定承諾率も伸長したと報告されている。数字の規模は企業ごとに違うだろうが、「応募・内定という意思決定の手前で動画が背中を押した」という構図は、建設業に限らず共通する動きだと見ていい。
現場を知る私たちから見ると、採用動画で失敗しやすいのは、モデルのような若手を立てて綺麗に撮りすぎるケースだ。求職者は演出された映像を見抜く。私たちの撮影チームでは、常に目立たない場所にカメラを置き、「カメラを意識させない自然体」を意識して撮る——という経験則を持っているが、これは会社紹介動画だけでなく採用動画でも同じことが言える。作り込みすぎない現場の空気こそが、応募者の警戒心を解く。
効果が出やすい採用動画の型

建設業の採用動画には、いくつかの型がある。会社の規模や採用したい人物像によって、向き不向きが分かれる。以下に代表的な型を整理する。
| 型 | 内容 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 1日密着ドキュメンタリー型 | 朝礼から退勤までを追い、現場のリアルな1日を見せる | 職場の雰囲気の良さを伝えたい会社 |
| 若手社員インタビュー型 | 入社2〜3年の若手に本音で語ってもらう | 未経験者・若年層を採用したい会社 |
| 技術・こだわり紹介型 | 職人技や施工へのこだわりを見せる | 専門性の高い即戦力人材を採用したい会社 |
表の中で特に反応が良いのは、若手社員インタビュー型だ。求職者と年齢の近い先輩が、入社前の不安と入社後の実感を自分の言葉で話す映像は、求人票のどんな文言よりも説得力を持つ。
制作の進め方——小さく始めて構わない

採用動画と聞くと大掛かりな撮影を想像しがちだが、最初から映画のような映像を目指す必要はない。むしろ建設業の採用動画は、以下のような手順で小さく始めるほうがうまくいくことが多い。
- 採用したい人物像のヒアリング(未経験者か、経験者か)
- 登場してもらう社員の選定と簡単な質問リストの用意
- 現場での撮影(半日〜1日が目安)
- 編集・テロップ入れ・求人媒体向けの尺調整
費用の相場については別記事「動画制作の費用相場【完全ガイド】」で種類別・尺別に整理しているので、予算感を確認したい場合はそちらも参照してほしい。採用動画そのものの目的や基本設計については「採用動画とは?応募が増える理由と費用・作り方」でも詳しく解説している。
なお、動画は採用サイトに載せるだけでなく、SNSでの発信と組み合わせることでさらに接触機会が増える。湘南エリアの工務店がSNSでどう選ばれる会社になっているかは「湘南の工務店がSNSで「選ばれる会社」になるには」にまとめている。
よくある質問
Q. 採用動画を作れば応募は本当に増えるか?
A. 動画単体で応募数の増加を保証するものではない。ただし、応募前に企業理解を深める効果は複数の事例で報告されており、応募後のミスマッチ・早期離職を減らす方向に働きやすい。
Q. 予算をかけられない小規模な会社でもできるか?
A. できる。若手社員インタビュー型であれば、スマートフォンと簡単な質問リストだけで撮影できる。作り込みすぎない自然な映像のほうが、求職者の信頼を得やすい。
Q. 何人くらいの会社から採用動画を検討すべきか?
A. 人数の目安は特にない。求人媒体だけで応募が集まりにくいと感じ始めた時点が、検討を始める適切なタイミングだ。
まとめ
建設躯体工事の有効求人倍率が7倍を超える今、求人票の文言を磨くだけでは応募は増えない。求職者が本当に知りたいのは、現場の空気と、そこで働く人の表情だ。
採用動画は、その情報を応募前の段階で渡すための手段にすぎない。大掛かりな企画書は要らない。まずは自社の何を見せれば求職者の不安が減るのかを、社内で言語化することから始めることをすすめる。
その言語化の段階からで構わないので、私たちのような制作者に一度相談してみるのも一つの手だ。何を撮るべきかの整理だけでも、次の一歩が見えてくるはずだ。