
「内見の予約を入れたのに、当日連絡なくキャンセルされた」——湘南で賃貸仲介や管理を担当している人なら、一度はこういう経験があるのではないだろうか。遠方からの転勤・進学の問い合わせほど、この「来ない内見」が起きやすい。
結論から言えば、ルームツアー動画は内見前の比較検討を後押しする、いま費用対効果の高い一手だ。動画で先にふるいにかけてもらうことで、実際に足を運ぶ人の本気度が上がり、案内する側の手間も減っていく。
この記事では、内見数と成約率の一次データをもとに動画が果たす役割を整理したうえで、湘南の不動産仲介・管理会社が実際に何を撮り、どこに出せばよいかを、制作者の現場感覚で解説する。
- 結論:賃貸の内見は平均2.7件で成約に至るとされ、動画は「本命候補」を絞り込むための事前フィルターになる
- オンライン内見の利用率は約2割にとどまるが、対面派の内見前チェックにも動画そのものは使われている
- 撮るべきは「通し歩き」「生活動線」「周辺環境」の3種。凝った演出より自然体の撮り方が信頼につながる
「内見2.7件で成約」
——数字が示す動画の役割

株式会社リクルートが運営するSUUMOリサーチセンターの「2022年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」(2023年9月29日発表)によれば、入居者が成約までに見学した物件数は平均2.7件だった。単純計算で、内見1件あたりの成約確率はおよそ37%になる。
この数字が意味するのは、「内見に呼ばれた時点で、すでに有力候補の一つに絞られている」ということだ。つまり内見の前段階——ネットで写真や間取りを見比べている段階——で、どれだけ候補から脱落せずに残れるかが勝負になる。ここで、静止画だけの物件情報との差になるのが動画の有無だ。
同センターの「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」では、オンライン内見の利用率はオンラインのみが13.5%、対面との併用が6.2%で、合わせて約2割にとどまるという結果も出ている。裏を返せば、湘南のような地域でもまだ8割の人が対面での内見を選んでいるということだ。ここで効いてくるのが、対面内見の前に見る動画になる。オンライン内見ほどの手間をかけずに、対面前の絞り込みに動画を使う人は、この統計以上に多いと私たちは現場で感じている。
撮るべきルームツアーは3種類
——「通し歩き」「生活動線」「周辺環境」
私たちが賃貸物件の動画を制作する際、最初に整理するのは「何を撮るか」より「何を見せて安心してもらうか」だ。以下に、種類ごとの狙いと尺の目安を整理する。
| 種類 | 狙い | 尺の目安 |
|---|---|---|
| 通し歩き(玄関→各部屋) | 間取り図だけでは伝わらない広さ・動線の実感を伝える | 1〜2分 |
| 生活動線(収納・水回り) | 住んだときの使い勝手を先回りして見せる | 30秒〜1分 |
| 周辺環境(駅・商店街・海) | 湘南らしい立地の魅力を伝え、契約後の後悔を減らす | 1分前後 |
表の中でも優先度が高いのは、通し歩きと生活動線の2つだ。周辺環境は湘南・平塚・大磯のような「暮らしの魅力込みで選ばれる」エリアでは特に効くが、撮影の手間を考えると通し歩きと生活動線から始めるのが現実的だ。
撮影は「カメラを意識させない自然体」を優先する
私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎないことだ。ルームツアーは特に、演出を作り込みすぎるとかえって「盤石すぎる部屋」に見えてしまい、生活感のなさが不信感につながることもある。案内スタッフが実際に扉を開け閉めしながら歩く様子を、ありのままに近い温度感で撮るほうが、SNSに慣れた層には自然に届く。スマートフォンとジンバル程度の機材でも、この考え方さえ押さえれば十分に始められる。
動画をどこに出すか
——自社サイト・ポータル・SNSを1本で使い回す

全国賃貸住宅新聞が2021年1月7日号(「部屋探しポータルの活用戦略」全6回シリーズ第4回)で報じたところによると、賃貸仲介のクラッシー・ホームズは2012年から動画を撮りためており、掲載物件のほぼ全てに動画をつけている。同社は月額140万円をポータルサイトへの広告出稿にかけ、月間299件の反響を得ているという。動画付きの物件ページは、そうでないページと並んだときにアイコンで一目でわかり、閲覧者の目を引きやすくなる、という同社の説明も紹介されている。
湘南の中小の仲介・管理会社が同じ予算をかけるのは現実的ではないが、「1本撮った動画を複数チャネルで使い回す」考え方は規模に関わらず有効だ。自社サイトの物件ページ、ポータルサイトの動画欄、InstagramやLINE公式アカウントへの再利用など、置き場所を変えるだけで届く相手が広がる。地域集客の文脈ではGoogleマップ(MEO)×動画で地域集客を強くするでも解説した通り、検索や地図経由の動線と組み合わせるとさらに効果が出やすい。
オンライン内見・IT重説の普及率から見る
湘南で動画が効く理由
国土交通省が宅建業者を対象に実施した令和5年度調査(公益財団法人不動産流通推進センター公表)では、IT重説の導入率が18%、重要事項説明書等の電子化(書面電子化)が11%にとどまるという結果だった。制度が使えるようになってから数年経つが、現場への浸透はまだこれからの段階にある。
この数字は、遠隔での取引そのものがまだ一般的でないことを示している。だからこそ、動画を「オンライン内見の代わり」として使うのではなく、「対面内見に進むかどうかを決める判断材料」として位置づけるのが、いまの湘南の実情に合っている。特に大学進学や転勤で遠方から平塚・大磯エリアの物件を探す人にとって、事前に部屋の雰囲気を動画で確認できるかどうかは、わざわざ現地に来て内見するかどうかの意思決定に直結する。
入居後のフォローにも動画は使い回せる
賃貸管理会社であれば、入居後の設備の使い方説明や、退去時の原状回復の目安を動画で残しておくことも有効だ。問い合わせ対応の手間を減らせるだけでなく、既存入居者との関係づくりにもつながる。LINE公式アカウントを使った継続的な情報発信についてはLINE公式アカウント×動画でリピーターを増やす|湘南の教室・店舗活用術で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

よくある質問
Q. ルームツアー動画は何分くらいが適切か?
A. 通し歩きなら1〜2分、生活動線や周辺環境は30秒〜1分が目安だ。長すぎる動画は最後まで見てもらえないため、物件の魅力が伝わる範囲で短くまとめるのがよい。
Q. 空室が埋まるたびに撮り直す必要があるか?
A. 間取りが同じであれば使い回せる場合が多い。ただし内装や家具の有無が変わった場合は、実際と違う印象を与えないよう撮り直しをすすめる。
Q. 動画制作にどれくらいの費用がかかるか?
A. 撮影・編集の内容次第で幅があるため、動画制作の費用相場【完全ガイド】で相場を整理している。まずは通し歩き動画1本から始めて、反響を見ながら本数を増やす進め方が現実的だ。
Q. 誇大な演出になっていないか、どう確認すればよいか?
A. 実際の広さ・眺望・生活動線と違う印象を与えていないかを、投稿前に自分たちで一度部屋を歩いて見比べるとよい。優良誤認表示に触れるおそれがある大げさな加工や演出は避けるべきだ。
まとめ
賃貸の内見は平均2.7件で成約に至るとされ、内見に呼ばれた時点ですでに有力候補の一つに絞られている。だからこそ、その前段階を制する動画の役割は大きい。通し歩き・生活動線・周辺環境という基本の3種類から、カメラを意識させない自然体の撮り方で始めれば、湘南の仲介・管理会社でも十分に取り組める。
次の一歩として、まずは自社の主力物件1つを通し歩き動画で撮ってみて、問い合わせの反応がどう変わるかを見てほしい。撮り方や活用先で迷う場合は、私たちのような制作者に一度相談してみることをすすめる。