
「モデルハウスに足を運んでくれる人は減っているのに、契約したお客様に聞くと『SNSで見て知った』という声が増えている」——湘南で注文住宅やリフォームを手がける工務店の経営者と話すと、こうした声をよく聞く。動画やSNSに力を入れたほうがいいのは分かっていても、いくら予算をかければいいのか判断できずにいる工務店は少なくない。
結論から言えば、工務店の動画制作は施工事例紹介・お客様インタビュー型で30万〜60万円、完成披露や現場密着を含むドキュメンタリー型で60万〜120万円が一つの目安になる。ただし今の工務店にとって金額そのもの以上に重要なのは、新設住宅着工が減りリフォーム需要が伸びるという市場の変化に合わせて、何を撮り、どこに出すかという「配分」の設計だ。
この記事では、2026年の住宅市場データと工務店の集客チャネル調査をもとに、動画にかけるべき予算の考え方とタイプ別の費用相場を、制作者としての現場感覚を交えて整理する。
- 結論:施工事例紹介・お客様インタビュー型は30万〜60万円、完成披露・密着ドキュメンタリー型は60万〜120万円が目安
- 2025年度の新設住宅着工戸数は71.1万戸(前年度比12.9%減)と低水準が続く一方、住宅リフォーム市場は7兆5,119億円(前年比2.5%増)へ拡大しており、工務店が発信すべき内容も変わりつつある
- 工務店の集客チャネル調査では自社HP(48.5%)・SNS広告(46.3%)・SNS投稿(45.5%)が効果実感の上位で拮抗しており、動画は1本作って複数チャネルに使い回す設計がコストパフォーマンスを左右する
なぜ今、工務店の動画予算は
「新築中心」から見直しが必要なのか
国土交通省の住宅着工統計によると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の新設住宅着工戸数は71万1,171戸で、前年度比12.9%減とリーマンショック後の水準をも下回る低さになった。注文住宅の完成事例を撮って集客するというこれまでの動画の作り方だけでは、母数そのものが縮んでいる状況だ。
一方で、矢野経済研究所が2026年7月16日に発表した「住宅リフォーム市場に関する調査」では、2025年度の住宅リフォーム市場規模は7兆5,119億円(前年比2.5%増)と推計され、2026年度は7.7兆円(同1.9%増)まで拡大すると予測されている。団塊ジュニア世代の持家がリフォームの適齢期を迎えていることに加え、資材費・人件費の高騰による工事単価の上昇、窓の断熱改修を対象とした補助事業の後押しが成長要因として挙げられている。
この数字が意味するのは、工務店が動画で見せるべき対象が「注文住宅の完成事例」だけでは足りなくなっているということだ。断熱改修やキッチン・浴室のリフォームといった、ビフォーアフターが分かりやすい現場も、これからは動画の主役になり得る。
工務店の動画制作費用相場
——タイプ別の価格早見表

工務店のお客様からいただく相談内容をもとに、私たちが提示することが多い価格帯を整理すると次のようになる。以下に相場を整理する。
| タイプ | 尺の目安 | 費用相場 |
|---|---|---|
| 施工事例紹介・お客様インタビュー型 | 2〜3分 | 30万〜60万円 |
| 完成披露・密着ドキュメンタリー型 | 3〜5分 | 60万〜120万円 |
| ドローン外観・外構空撮併用型 | 2〜4分 | 80万〜150万円 |
| SNSショート動画セット(施工事例・現場密着) | 15〜60秒×複数本 | 20万〜50万円(セット) |
まず作るなら施工事例紹介・お客様インタビュー型が起点になることが多い。予算に余裕があれば、外観や立地、外構の見せ方を強化できるドローン空撮併用型を組み合わせると訴求力が上がる。建設業全体の費用感は建設業の動画制作費用相場でも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。
リフォーム現場は「定点撮影」で追加コストを抑えやすい
リフォーム案件は着工前・工事中・完成後を同じアングルで撮る定点撮影を仕込んでおくだけで、追加の撮影日をほぼ増やさずにビフォーアフター動画の素材が手に入る。新築の完成披露に比べて撮影日数がかさみにくいのは、リフォーム動画のコスト面での利点と言える。
工務店の集客チャネル、
動画はどこに効いているか
株式会社ビズ・クリエイションが2026年1月19日〜31日に実施した「工務店集客チャネル調査2026」(住宅会社向けクラウド「KengakuCloud」導入企業134社対象)では、直近3ヶ月で集客に効果を実感した媒体として、自社HPが48.5%(前回2025年7月調査の42.2%から+6.3pt)で最も高く、次いでSNS広告(有料)が46.3%、SNS投稿(オーガニック)が45.5%と続いた。ポータルサイトは26.9%、紙チラシ・DMは33.6%だった。
この数字が意味するのは、上位3チャネルが僅差で拮抗しているということだ。つまり動画は「SNSだけの素材」ではなく、自社HPの施工事例ページ、SNS広告のクリエイティブ、SNS投稿のオーガニック発信という3つの場所に使い回せて初めて、費用対効果が最大化する。1本の動画を撮って終わりにせず、尺やアスペクト比を変えて複数チャネルに展開する前提で予算配分を考えたい。
私たちの撮影チームでも、施工現場のインタビューでは目立たない場所にカメラを置き、職人やお客様にカメラを意識させない自然な受け答えを撮ることを常に意識している。台本どおりに演じてもらうよりも、素の作業風景や素の会話のほうが、検討者には「リアルな現場」として伝わりやすく、演出コストもかからない。
費用を抑えながら発信を続けるコツ

- まず1件の施工事例を「型」として作り、以降の現場は同じ構成・同じ画角で撮って編集の手間を減らす
- お客様インタビューは台本を作り込みすぎず、聞きたい質問を3〜4個決めておく程度にとどめる
- リフォーム現場は着工前・工事中・完成後の定点撮影を必ず入れる(追加コストがほぼゼロで説得力が上がる)
- ドローン撮影は複数現場をまとめて1回の飛行日に集約すると、機材・操縦者の費用を分散できる
補助金・助成金を動画制作に活用できないか確認するのも、費用を抑える有効な手段だ。制度の考え方は動画制作に補助金・助成金は使えるかにまとめている。
よくある質問
Q. 工務店の動画は新築とリフォーム、どちらを先に撮るべきか?
A. 現在依頼が多い方、または今後注力したい方を優先すればよいが、2026年度のリフォーム市場は7.7兆円まで拡大が見込まれている。リフォームのビフォーアフター事例をまだ持っていない工務店は、優先度を上げる価値がある。
Q. 動画は何本あれば十分か?
A. 決まった本数はないが、まずは施工事例紹介・お客様インタビュー型を1〜2本作り、そこから15〜60秒のSNSショート動画に切り出して自社HP・SNS広告・SNS投稿の3チャネルに使い回す設計が現実的だ。
Q. ドローン撮影は必須か?
A. 必須ではない。ただし外観や立地、外構、周辺環境まで一目で伝えたい注文住宅では、検討効果を重視するなら組み合わせを検討する価値がある。
まとめ
工務店の動画制作費用は、施工事例紹介・お客様インタビュー型で30万〜60万円、完成披露・密着ドキュメンタリー型で60万〜120万円が一つの目安になる。ただし、新設住宅着工が減りリフォーム市場が拡大するという構造変化の中で、金額以上に大事なのは「新築だけでなくリフォーム現場も撮る」「1本の動画を自社HP・SNS広告・SNS投稿の複数チャネルに使い回す」という配分の設計だ。
SNSでの集客術に関心があれば湘南の工務店がSNSで選ばれるにはもあわせて参考にしてほしい。次のステップとして、まずは直近の施工事例のうち「一番お客様に見せたい現場」を1件言語化することをすすめる。そこが定まれば、動画の構成も予算も自然と絞り込めるはずだ。