パーソナルジムの動画発信、何を撮る?|湘南の差別化基礎知識

湘南のパーソナルジムでトレーナーがスマートフォンとジンバルでトレーニング風景を撮影する様子

「うちみたいな小さなパーソナルジムが、動画に手を出す余裕なんてない」——湘南でパーソナルジムを営むトレーナーから、こうした声を聞くことがある。日々の指導や体験カウンセリングに追われる中で、動画は後回しにされやすいテーマの一つなのだろう。

結論から言えば、動画発信はパーソナルジムにとって「余力があればやること」ではなくなりつつある。全国でフィットネス施設が増え続ける一方、倒産も過去最多ペースで起きている今の市場では、何を撮り、どこに出すかを知っているジムとそうでないジムの差が、入会を検討する人の目にはっきり見えてしまう。

この記事では、フィットネス業界の一次データをもとに市場の実態を押さえたうえで、パーソナルジムが動画で差別化するために「何を撮るべきか」を、動画の基礎知識として制作者の現場感覚で解説する。

  • 結論:全国のフィットネス施設は増え続ける一方、倒産も過去最多ペースで起きており、「似た施設が乱立する中でどう選ばれるか」が動画の役割になる
  • Instagramの利用率は全世代で5割を超え、パーソナルジムの主要ターゲットである20〜30代は7割前後とさらに高い。届け先はまずSNSのショート動画になる
  • 撮るべき動画は「トレーナー紹介」「トレーニング風景」「お客様の声」の3種が基本。ビフォーアフター表現は誇大表現の規制に注意が必要だ

パーソナルジムは今、
「乱立」と「淘汰」が同時に進んでいる

矢野経済研究所の調査(2025年7〜10月実施)によれば、全国のフィットネス施設数は2025年8月時点で13,876施設にのぼり、直前1年間だけで1,266施設が新たに開業したという。駅近・低価格・無人型の「コンビニジム」やパーソナルジム、マシンピラティススタジオなど、業態の多様化を背景に出店ペースは衰えていない。

その一方で、帝国データバンクが2026年8月13日に公表した調査(負債1,000万円以上・法的整理による倒産が対象)では、2026年1〜7月のフィットネスクラブの倒産が23件(前年同期は19件)に達し、過去最多ペースで推移していると報告されている。年間では初めて40件に到達する可能性もあるという。同調査では、この23件のうち6件がパーソナルジム業態だったことも指摘されている。

施設は増え続けているのに、倒産も同時に増えている——これは典型的なオーバーストア(供給過多)の状態だ。開業のハードルが下がったぶん、似たような設備・料金のジムが近隣にいくつも並びやすく、選ばれ続けることの難しさがそのまま数字に表れている。私たちが制作者として湘南のジムオーナーと話していても、「体験カウンセリングまでは来てもらえるが、その前の比較段階で他院と差がつかない」という悩みをよく聞く。動画は、その比較段階で「他とどう違うか」を伝えるための手段になる。


動画を届ける場所は
——Instagramの利用率から逆算する

似たようなジムが乱立する中で動画を持つ施設だけが際立つ様子を表すフラットデザイン図解

総務省の令和7年版情報通信白書によれば、Instagramの全世代利用率は52.6%となり、前年(48.4%)から4.2ポイント増加した。年代別では10代・20代・30代がいずれも7割前後(20代で最も高く78.0%)と高水準で、40代・50代でも5割を超えている。

パーソナルジムの主要顧客層である20〜40代は、まさにこのInstagram利用率が高い層と重なる。つまり、動画を「どこに置くか」で最初に検討すべきなのはホームページの固定コンテンツではなく、Instagramのリール(ショート動画)だ。動画はテレビを超えたかという世代別のメディア利用の話は動画はテレビを超えたか|総務省調査で読む湘南の動画戦略でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

SNSでの見せ方という点では、業種は違っても美容室・サロンの取り組み方が参考になる部分は多い。美容室のショート動画集客術|湘南・平塚で新規客を増やすで紹介している「日常の一コマを短く見せる」考え方は、パーソナルジムにもそのまま応用できる。

撮るべき動画は3種類
——狙いと頻度の目安

パーソナルジムが最初に揃えるべき動画は、複雑に考えなくてよい。以下に、種類ごとの狙いと投稿頻度の目安を整理する。

動画の種類 狙い 投稿頻度の目安
トレーナー紹介動画 「誰が教えるか」を伝え、入会前の不安を減らす プロフィール欄に固定で1本
トレーニング風景(自然体) 施設の空気感・指導スタイルを見せる 週1〜3本
お客様の声・成果紹介 第三者の言葉で効果を裏付ける 月2〜4本
施設・設備紹介 通う前の不安(清潔感・混雑度)を解消する 開業時・改装時に随時

表の中でも優先度が高いのは、トレーナー紹介とトレーニング風景の2つだ。パーソナルジムは「誰と二人三脚で取り組むか」が入会の決め手になりやすい業態であり、施設の豪華さよりもトレーナーの人柄が伝わる映像のほうが、比較段階での差別化に直結しやすい。

撮影は「カメラを意識させない」ことを優先する

私たちが撮影現場で大切にしているのは、被写体にカメラを意識させすぎないことだ。トレーニング風景は特に、演出を作り込みすぎるとかえって「広告っぽさ」が出て信頼を損ないやすい。指導の様子をありのまま切り取るくらいの温度感のほうが、SNSに慣れた層には自然に届く。スマートフォンとジンバル程度の機材でも、この考え方さえ押さえれば十分に始められる。

ビフォーアフター表現は
——表現規制の落とし穴に注意

スマートフォンでショート動画のフィードをスクロールする手元のクローズアップ

パーソナルジムの動画で特に反応を集めやすいのが、体型の変化を見せる「ビフォーアフター」だ。ただし、この表現には注意が要る。実際の効果を大きく超えて誰にでも同じ結果が出るかのように見せる表現は、景品表示法が禁じる優良誤認表示(実際よりも著しく優れていると誤認させる表示)に触れるおそれがあると一般に指摘されている。

対策として有効なのは、期間・食事指導の有無・個人差があることを画面内のテキストや説明文で明記することだ。誇張を避けつつ「継続すればここまで変われる可能性がある」という誠実な見せ方に徹すれば、ビフォーアフター自体を封印する必要はない。判断に迷う表現は、投稿前に一度立ち止まって確認する習慣をすすめる。

内製でできる範囲と、
プロに任せるべき場面

トレーナー紹介・トレーニング風景・お客様の声の3種類の動画がつながるフラットイラスト

日々のトレーニング風景やちょっとした一言コメントは、トレーナー自身のスマートフォンで内製するのが現実的だ。継続的な発信は、外注コストをかけ続けるより現場で撮り続けるほうが長続きしやすい。

一方で、開業時やリニューアル時にホームページの顔になるトレーナー紹介動画・施設紹介動画は、構成と照明を整えたプロの制作に一度任せる価値がある。ここで作った映像を後から切り出せば、日常投稿用の素材としても使い回せる。内製と外注をどう線引きすべきかは業種を問わず悩みどころで、動画制作は内製と外注どちらが得かでも判断基準を整理しているので、あわせて読んでほしい。

よくある質問

Q. 会員数の少ない小さなパーソナルジムでも動画は必要か?

A. むしろ小規模なジムほど効果が出やすい。大手のような広告予算がなくても、トレーナーの人柄が伝わる動画1本で比較検討中の見込み客に直接アプローチできる。

Q. ビフォーアフター動画は絶対に出してはいけないのか?

A. 出してはいけないわけではない。期間や個人差、食事指導の有無などの条件を明記し、誇張を避ければ活用できる。不安がある表現は投稿前に確認する習慣をすすめる。

Q. 動画の撮影頻度はどれくらいが目安か?

A. トレーニング風景であれば週1〜3本、お客様の声のような重めのコンテンツは月2〜4本が目安だ。無理なく続けられる頻度から始め、反応を見ながら調整するのがよい。

Q. スマホ撮影だけでも十分か?

A. 日常投稿であれば、スマートフォンとジンバル程度で十分に始められる。開業時の顔になる動画など、じっくり見せたい場面だけプロに任せるという使い分けが現実的だ。

まとめ

全国のフィットネス施設は増え続ける一方、倒産も過去最多ペースで起きており、パーソナルジムは似た施設が乱立する中で選ばれ続けることを求められている。ターゲット層の利用率が高いInstagramを中心に、トレーナー紹介・トレーニング風景・お客様の声という基本の3種類から動画発信を始めれば、比較検討段階での差別化につながる。

次のステップとして、まず自院のトレーナー紹介動画が今の状態で「誰が教えているか」を十分に伝えられているかを見直すことをすすめる。何から撮ればよいか迷う場合は、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。