ステマ規制とは?湘南の事業者がSNS動画で守るべき表示ルール

湘南の店舗でスマートフォンの動画を確認しながら打ち合わせをする事業者と制作者

湘南でSNS運用や動画発信に力を入れる事業者から、最近「インフルエンサーに商品を紹介してもらう動画を作りたいが、法律的に大丈夫だろうか」という相談を受けることが増えた。答えは、やり方次第で”アウト”になり得る、というものだ。

結論から言えば、2023年10月に施行されたいわゆる「ステマ規制」により、広告であることを隠したSNS投稿・動画は景品表示法違反になり得る。インフルエンサーに依頼した動画はもちろん、自社スタッフが”個人の感想”を装って投稿する動画も対象になり得るため、湘南の中小企業にとっても他人事ではない。

この記事では、ステマ規制の基本、動画広告で特にリスクが高いパターン、違反した場合の実務的な影響、そして今日から始められる対策を、制作の現場に立つ私たちの視点で整理する。

  • 結論:広告であることを隠すSNS動画は、投稿者ではなく依頼した事業者側の責任で景品表示法違反になり得る
  • 特にリスクが高いのは「インフルエンサー起用」「口コミ・レビュー風の演出」「スタッフの個人の感想を装う投稿」
  • 対策は難しくない。動画の分かりやすい位置に「広告」「PR」の一言を入れるだけで多くのケースは回避できる

ステマ規制とは何か
——2023年10月に始まった新しいルール

消費者庁によれば、令和5年10月1日から、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が景品表示法上の不当表示として規制対象になった(消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方」)。広告であるにもかかわらず、広告だと隠すことがいわゆる「ステルスマーケティング」であり、これが正式に法律違反として扱われるようになったということだ。

対象範囲はテレビ・新聞・雑誌なども含むが、実務上リスクが高いのはSNSの投稿・動画である。消費者庁の説明では、インフルエンサー等への依頼・指示による広告表示もこの規制の対象に含まれる。ここで重要なのは、責任を負うのは投稿したインフルエンサーやスタッフ本人ではなく、依頼した事業者(広告主)側だという点だ。「投稿は本人に任せていたので知らなかった」は理由にならない。

サイバー・バズとデジタルインファクトの共同調査によれば、国内のインフルエンサーマーケティング市場は2024年時点で860億円(前年比116%)、2026年には1,150億円に達すると見込まれている。市場が拡大するほど、行政の目が向けられる機会も増えていくと考えるのが自然だろう。

動画広告で特にリスクが高い3つのパターン

私たちが現場で見てきた限り、湘南の事業者がつまずきやすいのは次の3パターンだ。

  1. インフルエンサーへ依頼した動画を、「広告」と明記せず本人の裁量で投稿してもらう
  2. 一般客や第三者を装った「口コミ・レビュー風」の演出動画を自社で作って投稿する
  3. 自社スタッフが、あたかも個人の感想であるかのように商品・サービスを紹介する動画を投稿する

特に1については、投稿者本人に内容や表示方法を任せきりにするケースが典型的な違反パターンとされる。依頼段階で「広告」「PR」といった文言を入れることを明確に伝え、公開前に事業者側が内容を確認する体制を整える必要がある。

また、事業者が投稿の星評価を指定したり、具体的な文言を示唆したりして「事業者が内容を決定した」と評価される場合も、広告である旨を明示する義務が生じる。クリニック・治療院向けの医療広告規制と同様に、”演出の自由度”と”表示義務”のバランスを取る発想が必要になる。


違反するとどうなるか
——措置命令と確約手続

ステマ規制に違反したと判断されると、消費者庁から措置命令が出される。内容は、違反行為の差止め、一般消費者への周知徹底、再発防止策の実施、将来の繰り返し禁止の4点で構成され、命令は公表される。社名が公表される以上、金銭的な負担以上に信用への打撃が大きい点は押さえておきたい。

一方で、令和6年10月1日に施行された改正景品表示法では「確約手続」という制度が新設された(消費者庁「改正景品表示法の概要」)。違反の疑いがある事業者が自ら是正措置計画を申請し、消費者庁の認定を受ければ、措置命令や課徴金納付命令の適用を受けずに済むというものだ。万一表示に問題があると気づいた場合、隠さず早期に自主的な是正に動くことが、結果的に事業へのダメージを小さくする選択肢になり得る。

湘南の事業者が今日からできる対策

対策そのものは難しくない。以下に、動画のパターン別にリスクの高さと必要な対策を整理する。

動画のパターン リスクの高さ 必要な対策
インフルエンサーへの依頼動画 契約時に「広告」表示を明記する義務を伝え、公開前チェックを行う
口コミ・レビュー風の演出動画 中〜高 出演者が第三者に見えないよう「企業公式」「PR」を明示する
スタッフの個人の感想風投稿 業務指示による投稿である旨を本人・視聴者双方に明確にする
自社名義の通常のPR動画 企業公式アカウントからの発信と分かれば基本的に対象外

表の中で特に注意したいのは、ハッシュタグの中に「#PR」を大量のタグに紛れ込ませるような配置だ。消費者庁は、事業者の表示であることを他の情報に埋もれさせる表示も規制対象になり得るとしている。動画であれば冒頭のテロップやキャプション本文の分かりやすい位置に置くのが安全だ。

広告表示の透明性を象徴するメガホンとラベルタグのフラットイラスト

私たちの撮影現場では、以前から「カメラを意識させない自然体」を大切にしてきた。目立たない場所にカメラを置き、被写体に自然に振る舞ってもらうことで、見る人の心に届く映像になると考えているからだ。ただし、自然に見える映像ほど”広告と気づかれにくい”表現でもある。だからこそ、演出の自然さと「広告」という一言の明記は、対立するものではなく両立させるべきだというのが私たちの考えだ。

店舗アイコンとインフルエンサーアイコンの依頼関係と注意マークを表すフラットイラスト

湘南エリアでは工務店や小売店がSNSでの発信に取り組み始めるケースが増えている。湘南・大磯のSNS集客術で触れたように、地域密着の事業者ほど”顔の見える発信”が効きやすい一方、その分ステマ規制のリスクにも近い立ち位置にいる。リールとショート、結局どっちを選ぶ?のような動画形式選びと合わせて、表示ルールも制作の初期段階で決めておくことをすすめる。

よくある質問

Q. 自社の従業員が個人アカウントで商品を紹介した場合もステマ規制の対象になりますか?

A. 会社の指示や依頼に基づく投稿であれば対象になり得る。個人の自発的な投稿と会社主導の投稿の境界は曖昧になりやすいため、投稿を依頼する場合の社内ルールを事前に明文化しておくことをすすめる。

Q. 「広告」ではなく「PR」や「Sponsored」と書いても問題ありませんか?

A. 一般消費者が広告だと判別できる表示であれば、「PR」「協賛」といった表記も基本的には有効とされる。ただし大量のハッシュタグの中に埋もれさせるなど、分かりにくい配置は避けるべきだ。

Q. 動画制作会社に依頼した通常のPR動画も規制対象になりますか?

A. 自社の公式アカウントから「企業公式」だと分かる形で投稿するPR動画は、通常はステマ規制の主な対象ではない。問題になりやすいのは、第三者の個人的な発信であるかのように装うケースである。

まとめ

2023年10月のステマ規制施行により、広告であることを隠したSNS動画は景品表示法違反になり得る時代になった。責任を負うのはインフルエンサーや投稿者本人ではなく、依頼した事業者側である以上、”知らなかった”では済まされない。

湘南の事業者による地域密着の動画発信は、これからも増えていくはずだ。だからこそ、発信の勢いを止めないためにも、表示ルールという最低限の土台を先に固めておきたい。

次のステップとして、まずは自社が公開・依頼している動画に「広告」「PR」の表示が入っているかを一度確認することをすすめる。動画の演出や依頼先の選び方も含めて相談したい場合は、制作の現場を知る私たちのような立場に一度話してみるのもひとつの方法だ。

医療広告ガイドライン改正が続く理由|湘南のクリニック動画発信の注意点

湘南のクリニック受付で院長とスタッフが動画発信のガイドラインを確認している様子

「クリニックの動画発信について一度調べて対策したはずなのに、また新しいルールが出たらしいと聞いた」——湘南エリアで医療広告のガイドラインを気にする院長やスタッフから、最近こうした戸惑いの声を聞く機会が増えた。

結論から言えば、その戸惑いは正しい。医療広告の判断基準を具体的な事例で示す厚生労働省の「事例解説書」は、ここ数年でほぼ毎年のように改訂されており、2026年3月にも最新版が公表されたばかりだ。

この記事では、なぜ医療広告のルールがこれほど短いスパンで更新され続けているのかを一次情報から確認したうえで、湘南のクリニック・治療院が動画発信を続けるうえで今おさえておきたい変化のポイントを、制作者の視点で整理する。

  • 結論:医療広告の事例解説書は令和6年3月(第4版)以降ほぼ毎年改訂され、2026年3月には第6版が公表されたばかり
  • 改訂が続く背景には、クリニック・治療院のSNS・動画発信が急増していることがある
  • 体験談を広告に使えないなど核となるルールは一貫しており、変わり続けているのは主に「線引きの細部」

医療広告の「事例解説書」、この3年で3回改訂されている

医療広告のルールを具体的な事例で示す厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」は、令和5年10月6日の事務連絡で第3版が示されて以降、令和6年3月28日に第4版、令和7年3月11日に第5版、そして令和8年3月30日に第6版と、ほぼ1年に1回のペースで改訂が続いている。

とりわけ大きな転換点になったのが第4版だ。それまで断片的にしか示されていなかったSNS・動画に関する事例が独立した項目として新設され、以降の版で記載が拡充されてきた。制作者として現場に立つ私たちから見ると、この改訂ペースの速さそのものが「SNS・動画で発信するクリニック・治療院が、行政の想定を超えるスピードで増えている」ことの裏返しに見える。

版数 事務連絡の時期 主なポイント
第3版 令和5年10月6日 事例解説の土台を整理
第4版 令和6年3月28日 SNS・動画の事例が新設
第5版 令和7年3月11日 SNS・動画の事例を拡充
第6版 令和8年3月30日 直近の改訂。線引きの明確化が中心

このように、医療広告の判断基準は「一度学べば終わり」ではなく、年単位で更新され続けるものだと捉えておく必要がある。


何が変わったか——「広告」の線引きが年々細かくなっている

医療広告ガイドラインの改訂が積み重なっていく様子を表すフラットイラスト

第4版以降の改訂で明確になったのは、SNS・動画のどの部分が「広告」とみなされるかという線引きだ。投稿本文だけでなく、動画のテロップ・音声・ハッシュタグまでもが広告の構成要素になり得ることが、具体的な事例とともに示されている。

見落とされがちなのが、院長個人のアカウントであっても、医療機関や医師への特定性と誘引性が認められれば医療広告として扱われ得るという点だ。「クリニックの公式アカウントさえ気をつければよい」という理解では、個人アカウントでの発信が点検から漏れてしまう。

もう一つの実務的なポイントが、限定解除要件(広告可能事項の限定を外すために必要な要件)を記載する場所の柔軟化だ。SNSであればプロフィール・投稿本文・返信のいずれか、動画であれば動画内・タイトル・概要欄のいずれかに分かりやすく記載すればよいとされており、企画段階で「どこに何を書くか」を先に決めておけば対応しやすい。

変わらないもの——体験談の扱いは一貫して厳格

変わる項目と変わらない項目を仕分けるチェックリストのフラットイラスト

一方で、改訂を重ねても変わっていないルールもある。患者本人の主観に基づく治療内容・効果の体験談を広告として用いることは、限定解除要件を満たしていても認められない、という原則は第4版から第6版まで一貫している。

私たちが動画の演出で現場から大切にしているのも、この一貫したルールと同じ方向にある。撮影チームでは常にカメラの存在を意識させない自然体の撮影を心がけている——効果を誇張する演出をしないことは規制上の安全策であると同時に、患者にとっても「誇張されていない実際の空気感」が伝わる映像になるという点で、結果的に見る側の信頼にもつながっていると感じる。

改訂のたびに全てを作り直す必要はない。変わり続ける「線引きの細部」と、変わらない「体験談を扱わない」という土台を分けて理解しておけば、既存の動画を都度点検する負担も小さくできる。

湘南のクリニック・治療院が今日からできること

湘南の治療院でスタッフがSNS投稿を落ち着いて見直している様子

改訂のたびにすべてを一から確認するのは現実的ではない。まず取り組みやすいのは、自院で公開しているSNS・動画の投稿を棚卸しし、次の2点だけをチェックすることだ。

  1. 自院・スタッフの公式/個人アカウントで公開中の動画・投稿を洗い出す
  2. 体験談的な表現(ビフォーアフター、効果の保証)が含まれていないか確認する
  3. 限定解除要件を記載する場所(プロフィール・投稿・概要欄など)を1か所に決めておく
  4. 事例解説書の改訂情報を定期的に確認する担当・タイミングを決めておく

クリニックと治療院で適用される規制の枠組みそのものが異なる点や、体験談に頼らない具体的な企画例については、以前まとめたクリニック・治療院の動画集客|医療広告のルールと湘南の始め方で詳しく解説している。「何を撮るか」で迷っている場合はあわせて参考にしてほしい。

動画がどのように見つけられるかという検索環境の変化も、AI検索(AIO)の広がりとともに加速している。AI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるかもあわせて確認しておくと、発信全体の設計がしやすくなる。

よくある質問

Q. 医療広告のガイドラインは今後も改訂され続けるのか?

A. 過去3年の改訂ペースを見る限り、今後も年1回程度のペースで見直しが続く可能性が高い。SNS・動画の利用が増え続ける以上、事例解説書側も後追いで更新され続けると見ておくのが現実的だ。

Q. 過去に作った動画は改訂のたびに公開停止すべきか?

A. 体験談的な表現や効果を保証する表現を含んでいなければ、慌てて非公開にする必要は基本的にない。まずは棚卸しをして、該当する表現がないかを確認することをすすめる。

Q. 院長個人のSNSアカウントも規制の対象になるのか?

A. 医療機関や医師への特定性・誘引性が認められる場合は、個人アカウントでの発信も医療広告として扱われ得る。公式アカウントだけでなく個人アカウントも点検の対象に含めるべきだ。

まとめ

医療広告の事例解説書は令和6年3月の第4版以降ほぼ毎年改訂が続いており、2026年3月には第6版が公表されたばかりだ。改訂の中心は「広告に該当する範囲の細部」であり、体験談を扱わないという核となるルールは一貫している。

湘南でクリニック・治療院を運営しているなら、改訂のたびに動画を作り直すのではなく、既存の発信を定期的に棚卸しし、線引きが変わった部分だけを確認する体制を持つことをすすめる。

どこまでが表現できる範囲か、最新の改訂内容を踏まえて判断に迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。規制の変化を踏まえた企画づくりを、無理のない範囲で一緒に考えていきたい。

飲食店のメニュー紹介動画、内製で続けるコツ|湘南の現場ガイド

湘南の飲食店でスタッフがスマホでメニュー紹介動画を撮影する様子

「メニュー紹介の動画を撮ってSNSに上げてみたものの、3本目あたりでネタが尽きて、気づけば半年更新が止まっている」——湘南で飲食店を営む経営者からこの手の相談を受けることは少なくない。撮影自体は難しくない。難しいのは、続けることだ。

結論から言えば、メニュー紹介動画を内製で続けられるかどうかは、才能やセンスの問題ではなく「型」を持っているかどうかで決まる。撮る内容をその都度考えるのではなく、あらかじめ数パターンの型を用意しておけば、ネタ切れも編集の負担も大きく減らせる。

この記事では、飲食店の動画発信がなぜ止まりやすいのかを外食業界の統計から確認したうえで、内製を続けるための具体的な型と撮影のコツ、そして内製の限界を感じたときの判断基準までを、制作者として現場に立つ私たちの視点で解説する。

  • 結論:内製が続くかどうかは「ネタの型」を持っているかで決まる
  • 撮影は完璧を狙わず、決まった構図・手順をルーティン化するのが継続の近道
  • ネタ切れ・時間不足を感じたら、編集だけ外注するハイブリッドも選択肢になる

なぜ今、飲食店にメニュー紹介動画が必要なのか

外食業界は今、これまでになく厳しい環境に置かれている。東京商工リサーチの調査によると、2025年の飲食業倒産は1,002件に達し、1996年以降の30年間で初めて年間1,000件を超えた。うち物価高が要因の倒産は136件で前年比126.6%増、人手不足倒産も55件で前年比161.9%増と、いずれも2倍以上に急増している。

帝国データバンクの調査でも、2026年上半期の飲食店倒産は473件で前年同期を15件上回り、過去最多を更新した。負債5,000万円未満の小規模倒産が全体の78.0%を占め、大手チェーンとの体力差が広がっていると指摘されている。値上げが難しい個人店・小規模店ほど、価格以外の理由で選ばれる仕組みが必要になっているということだ。

一方で、動画を見る習慣はすでに生活の一部になっている。総務省情報通信政策研究所の調査では、YouTubeの利用率は80.8%、TikTokも33.2%に達している。グルメサイトの評価やクーポンだけでなく、料理が湯気を立てる様子や店主の手元をSNSで見て来店を決める客は、今後も増える一方だろう。

内製が続かない、3つの壁

「必要なのは分かっている、でも続かない」という店には、共通する壁がある。現場で経営者と話していると、大きく3つに整理できると感じる。

ネタ切れの壁

毎回「今日は何を撮ろう」と一から考えていると、数本で疲弊する。営業後のわずかな時間で企画から撮影まで済ませようとすれば、なおさらだ。

時間の壁

仕込みと営業に追われる飲食店にとって、撮影や編集にまとまった時間を割くのは現実的に厳しい。前述の通り人手不足倒産が急増する業界であり、余力そのものが少ない店が多い。

編集への苦手意識の壁

撮ることまではできても、テロップを入れたりカットをつないだりする編集で挫折する経営者は多い。ここで手が止まり、素材だけがスマホに溜まっていくケースをよく見る。


続けるための具体的なコツ

続けるコツは、毎回ゼロから企画しないことに尽きる。撮る構図・尺・投稿のタイミングをあらかじめ決めておき、「その型に今日のメニューを当てはめるだけ」の状態を作るのが近道だ。

動画撮影のルーティン化を表すフラットデザインの図解

撮影そのものについては、私たちの現場感覚として一つ伝えたいことがある。発信で大事なのは、伝えたいことをできるだけ自然体で伝えることだ。私たちの撮影チームでは、常にカメラを目立たない場所に置き、「カメラを意識させない自然体」を意識して撮影している。飲食店の内製でも同じで、三脚を固定して同じ位置から撮る、店主が普段の動きの延長で調理する——それだけで、身構えた不自然な映像より伝わる仕上がりになることが多い。

編集についても、毎回ゼロから組み立てる必要はない。テロップの位置やBGMの選び方を最初の数本で決めてしまえば、以降は同じテンプレートに当てはめるだけで済む。無料の編集アプリでも、テンプレートを一つ作っておけば作業時間は大きく短縮できる。

  1. 今週出す一品を決める(仕込みのついでにメモしておく)
  2. 固定した位置にスマホを置き、いつもの動きのまま調理・盛り付けを撮る
  3. 使い回すテンプレートにテロップとBGMを当てはめる
  4. 決めた曜日・時間に投稿する(毎回考えず習慣化する)

ネタに困らない、メニュー動画の「型」

型をいくつか用意しておくと、その日の状況に合わせて選ぶだけで済み、ネタ切れが起きにくい。以下に代表的な型を整理する。

メニュー紹介動画の型を曜日ごとに整理するイメージ図
尺の目安 向いている場面
定番メニュー紹介 15〜30秒 看板メニューを新規客に知らせたいとき
日替わり・黒板告知 10〜15秒 常連への日々の来店動機づくり
調理シーン密着 20〜40秒 こだわりや技術を伝えたいとき

表の型を曜日ごとに割り振ってしまうのも一つの方法だ。「月曜は定番、水曜は黒板、金曜は調理シーン」のように決めておけば、当日はカメラを構えるだけで済む。

内製の限界を感じたら——外注・ハイブリッドの検討基準

型を作っても、営業が忙しい時期はどうしても手が回らなくなる。無理に続けて営業に支障が出るくらいなら、編集だけ外注する、あるいは月1〜2本だけプロに撮ってもらい残りは内製で埋めるハイブリッドも現実的な選択肢だ。内製と外注どちらが得かの判断基準は本数ではなく継続期間で考えるとよく、単発の力を借りたい場面と、日常的な発信を回す場面を分けて考えると判断しやすい。

実際に動画が来店にどう効くのかについては、飲食店の販促に動画は本当に効くのかで来店経路の観点から整理しているので、あわせて読んでほしい。

よくある質問

Q. スマホの動画で十分ですか?一眼カメラは必要ですか?

A. メニュー紹介動画であれば最近のスマホで十分だ。重要なのは画質よりも、固定した構図と自然な調理の動きが撮れているかどうかである。

Q. どのくらいの頻度で投稿すればよいですか?

A. 毎日である必要はなく、週1〜2本を決まった曜日に続ける方が挫折しにくい。型を曜日に割り振っておくと迷わず続けられる。

Q. スタッフに撮影・編集を任せても大丈夫ですか?

A. 型とテンプレートさえ共有できていれば問題ない。むしろ担当を固定した方が、判断に迷う時間が減り継続しやすくなる。

まとめ

飲食業の淘汰が進むなかで、価格以外の理由で選ばれる店になる重要性は増している。メニュー紹介動画はその手段として有効だが、続かなければ意味がない。

続けるための鍵は、毎回考えるのをやめて型に落とし込むことだ。撮る構図、投稿する曜日、編集のテンプレート——この3つを最初に決めてしまえば、日々の負担は驚くほど軽くなる。

まずは自店のメニューを型に当てはめてみて、無理なく回せるかどうかを1ヶ月試してみることをすすめる。それでも手が回らないと感じたら、編集や月1本の撮影だけを外部に頼るという選択肢も、遠慮なく検討してほしい。

個人店の動画予算はいくら?|湘南の小規模店舗向けガイド

スマホで動画のタイムラインを確認する個人店の店主

「動画をやったほうがいいのは分かっている。でも、うちみたいな小さな店に一体いくらかけていいのか見当がつかない」——平塚や大磯で個人店を営む経営者から、私たちがよく受ける相談だ。

結論から言えば、個人店・小規模店舗の動画予算は「大きな制作会社に大金を払うか、諦めるか」の二択ではない。数千円のクラウドソーシング発注から、内製でほぼゼロ円まで、選べる幅は思っている以上に広い。

この記事では、動画市場全体の伸びと個人店の実際の予算感のギャップ、発注先別の費用の目安、公的な補助金の使い方までを、制作者の立場から整理する。

  • 結論:個人店の動画予算は「内製」「クラウドソーシング外注」「制作会社に外注」の3段階で考えると判断しやすい
  • クラウドソーシングの相場はショート動画編集が3,000円〜、企業・店舗紹介ムービーは120,000円〜が目安(クラウドワークス公式データ)
  • 小規模事業者持続化補助金のウェブサイト関連費(動画制作を含む)は上限50万円・補助率2/3で活用できる

動画広告市場は1兆円超え——
だが個人店の予算感はそこと別物だ

電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日発表)によると、動画(ビデオ)広告市場は前年比121.8%の1兆275億円となり、統計開始以来初めて1兆円を突破した。2026年は前年比114.7%の1兆1,783億円まで伸びると予測されている。

この数字だけを見ると、動画に大きな予算を割かなければ取り残される、と身構える個人店主もいるかもしれない。だが実際にこの1兆円市場を動かしているのは、広告代理店を通じて数百万円単位の運用型広告を回す大手企業群だ。平塚・大磯で数人規模の店を切り盛りする経営者が、同じ土俵で予算を張り合う必要はない。

私たちが個人店の相談を受けるときにまず伝えるのは、「動画市場の伸び」と「あなたの店にとって必要な予算」は別の数字だということだ。市場全体が伸びているからこそ、逆に低予算でも動画を出している店とそうでない店の差が、検索結果やSNSのタイムライン上で目立ちやすくなっている——というのが正しい捉え方だと考えている。

発注先別・個人店が動画にかけられる費用の目安

大きな市場規模と個人店の予算規模の差を表すフラットイラスト

以下に、個人店が実際に選べる発注先ごとの費用目安を整理する。

発注先・手段 想定内容 費用目安
内製(スマホ撮影・編集) ショート動画1本 実質0円(機材はスマホのみ)
クラウドソーシング(個人) ショート動画の編集のみ依頼 3,000円〜/本
クラウドソーシング(個人) YouTube動画編集(15分尺) 8,000円〜/本
クラウドソーシング(個人) 商品PRムービーの撮影 100,000円〜
動画制作会社 企業・店舗紹介ムービー(絵コンテ・素材あり) 120,000円〜

表からも分かる通り、「撮る」だけなら数千円から始められるが、「構成を考えて、撮って、編集して、一つの動画にまとめる」までを丸ごと任せると、桁が一つ上がる。個人店の多くは、まず自分たちで撮影しクラウドソーシングで編集だけを依頼する、というハイブリッドから始めるのが現実的だ。この内製と外注の使い分けの考え方は動画制作は内製と外注どちらが得か?判断基準と費用比較で詳しく解説している。

小規模事業者持続化補助金——
個人店が使える公的支援

個人店が公的な補助金支援を受けるイメージのフラットイラスト

予算そのものを増やす手段として見落とされがちなのが、公的な補助金だ。中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」は、一般型(通常枠)で補助上限50万円、賃金引上げ特例などの要件を満たせば最大250万円まで引き上げられる、小規模事業者向けの代表的な補助金だ。補助率は2/3(赤字事業者は3/4)となっている。

この補助金では、動画制作費は「ウェブサイト関連費」という経費区分に計上できる。ただしウェブサイト関連費は、補助金交付申請額全体の1/4かつ上限50万円までという制約があり、動画単体で申請額を組み立てることはできない。あくまで販路開拓の取り組み全体の一部として、動画を位置づける必要がある。詳しい活用の判断基準は動画制作に補助金・助成金は使えるかにまとめている。

私たちの現場感覚でも、平塚・大磯エリアの個人店から「補助金を使って動画を作りたい」という相談は年々増えている印象がある。ただし補助金は採択後の入金であり、制作費は基本的に事業者側が一旦立て替える必要がある点は、資金繰りの面で必ず押さえておいてほしい。

限られた予算でも成果を出す、個人店の動画の始め方

スマホと三脚で自然体の店内風景を撮影する様子

予算をかけられないなら、質を落とすしかないのか——そう思われがちだが、必ずしもそうではない。私たちが撮影の現場で常に意識しているのは、カメラを意識させない自然体を撮ることだ。凝った台本や高価な機材よりも、被写体に「撮られている」ことを意識させすぎない距離感のほうが、見る人の心に残る。これは大掛かりな予算がなくても、個人店が自力で実践できる考え方だ。

例えば大磯の雑貨店であれば、開店前の品出しの様子をスマホで数十秒撮るだけでも十分な素材になる。学習塾であれば、講師と生徒の何気ないやり取りを切り取るだけで、パンフレットには出せない「教室の空気」が伝わる。業種を問わず、まずは1本、低予算で作ってみて、反応を見ながら次の予算配分を決めていく——という順序をすすめたい。

よくある質問

Q. 個人店の動画予算は、最低いくらから始められますか?

A. スマホでの撮影・編集を内製で完結させれば、実質0円から始められる。外部に一部だけ依頼する場合は、クラウドソーシングでのショート動画編集が3,000円程度から選べる。

Q. 動画制作会社に頼むと高くなりすぎますか?

A. 企業・店舗紹介ムービーのような凝った内容は120,000円前後からが目安になる。ただし内容によって幅が大きいため、内製できる部分とプロに任せる部分を切り分けて相談すると、想定より費用を抑えられることが多い。

Q. 補助金は動画制作だけのために使えますか?

A. 小規模事業者持続化補助金では、動画制作費は「ウェブサイト関連費」の枠内(交付申請額の1/4・上限50万円)に含まれる形になり、動画単体を目的とした申請にはならない。販路開拓の取り組み全体の一部として位置づける必要がある。

まとめ

個人店・小規模店舗の動画予算は、動画広告市場全体の伸び(電通調査で1兆円超)とは切り離して考えてよい。内製ならほぼ0円、クラウドソーシングなら数千円〜、制作会社なら10万円台からと、選べる幅は広い。

まずは自分たちの店が「単発で試したいのか」「継続して発信したいのか」を言語化することをすすめる。単発であれば内製かクラウドソーシング、継続するなら補助金の活用も含めて予算計画を立てるとよい。動画制作費用の全体像は動画制作の費用相場【完全ガイド】にも整理しているので、あわせて参考にしてほしい。

私たちも無料相談を受け付けている。平塚・大磯エリアで動画にどのくらいの予算をかけるべきか迷っている個人店の方は、まず今感じている悩みを気軽に聞かせてほしい。

美容室の採用動画、何を見せれば応募が増える?費用相場も解説

湘南の明るい美容室でスタッフを自然体で撮影する動画クルー

「求人サイトに載せても、美容師からの応募がまったく来ない」——平塚や大磯でサロンを経営するオーナーから、私たちがよく聞く相談だ。カットやカラーの技術を丁寧に紹介する動画を作ってはみたものの、応募の数字にはつながらなかった、という声も少なくない。

結論から言えば、美容室・サロンの採用動画で応募を増やす鍵は「技術力の高さ」を見せることではない。求職者が本当に知りたいのは、そこで働く人の人柄と、一日がどんな空気で流れているかだ。ここを取り違えると、凝った技術デモを作っても応募にはつながりにくい。

この記事では、美容業界の深刻な人手不足を示す統計データと、採用動画に求職者が何を求めているかという調査データをもとに、湘南のサロンが今日から企画できる採用動画の中身と、無理のない費用感を制作者の視点で解説する。

  • 結論:美容室の採用動画は「技術」より「人柄」と「働く一日」を見せると応募が増える
  • 美容師の有効求人倍率は5.73倍(令和6年度・厚生労働省)で全職業平均1.28倍の4倍超
  • 求職者が動画で見たい内容は「仕事のやりがい」「1日の流れ」「職場の雰囲気」が上位(moovy調査2026)

美容師の有効求人倍率5.73倍——
「普通の採用活動」が通じない理由

まず押さえておきたいのは、美容業界の人手不足が「なんとなく厳しい」レベルではなく、数字で見ても突出しているという事実だ。厚生労働省の職業情報提供サイトが公表するハローワーク求人統計データによると、美容師の有効求人倍率は5.73倍(令和6年度)。同年度の全職業平均は1.28倍(厚生労働省「一般職業紹介状況」令和6年度分)なので、美容師の求人は全職業平均の4倍以上の激しさで人材の取り合いが起きていることになる。

求人を1件出せば5人以上の会社が同じ1人を取り合っている、という状況だと考えれば、条件面(給与・休日)を他店と横並びに整えるだけでは選ばれない理由が見えてくる。求職者は複数の候補を比較検討できる立場にあり、最後に決め手になるのは「この店で働く自分がイメージできるか」という、条件表には書けない部分だ。私たちが採用動画の相談を受けるときも、まずこの需給の非対称性を経営者に共有することから始めている。

求職者が採用動画に求めているのは「技術」より「人柄」と「1日」

美容師の有効求人倍率の高さと人材不足の深刻さを表すフラットイラスト

では、求職者は採用動画に何を見たいのか。moovyが2026年に実施した「採用動画トレンド調査2026」によると、求職者が「動画だからこそ見たい」と回答した内容の上位は「仕事紹介・やりがい」28.2%、「1日の流れ」27.6%、「職場の雰囲気」27.0%、「求める人物像」27.0%の順で、いずれも3割前後で拮抗している。施術の技術力そのものよりも、働く実感が伝わる情報が優先されていることが分かる。

採用動画そのものの効果を裏づけるデータもある。プルークスがレバレジーズの「career ticket」と合同で実施した2021年6月の調査(2022卒の学生417人が対象)では、採用動画を視聴して志望度が「上がった」と答えた学生は7割超、「採用動画はあったほうがいい」と答えた学生は9割を超えた。業種や年代の違いはあるものの、「働く姿を映像で見せられると意思決定が動く」という傾向自体は、美容業界の採用でも十分に参考になる。

美容室で特に効く3つの切り口

  • スタッフの人柄が伝わる自己紹介(技術より「どんな人か」)
  • 出勤から退勤までの一日の流れ(施術以外の時間の過ごし方も含めて)
  • スタッフ同士の掛け合いや店内の空気感(飾らない自然なやり取り)

何を撮ればいいのか——現場で意識している「自然体」という切り口

求職者が採用動画で見たい要素(人柄・1日の流れ・職場の雰囲気)を表すフラットイラスト

人柄や雰囲気を撮ると言われても、いざカメラを向けると誰でも身構えてしまう。私たちが撮影の現場で常に意識しているのは、できるだけ自然体で伝えることだ。カメラを目立たない場所に置き、被写体に「撮られている」ことを意識させすぎないようにする。構えたインタビューの受け答えより、施術の合間にふと出る素の表情や会話のほうが、見る人の心に残る。

これは新規客向けのショート動画でも私たちが大切にしている考え方だが(美容室のショート動画集客術)、採用動画では狙いが少し違う。集客動画が「この店に行きたい」を作るのに対し、採用動画は「この職場で働きたい」を作る。見せる相手は変わっても、飾らない自然体が信頼を生むという原則は同じだ。

撮る内容に迷ったら、まずは1人のスタッフに密着し、出勤の挨拶から、施術中の会話、休憩中の様子までを短く追うだけでよい。台本を作り込みすぎるとかえって不自然になる。聞きたいことを2〜3個決めておき、あとは自然な受け答えを拾う形が、小規模なサロンには現実的だ。採用動画そのものの基本的な作り方は採用動画とは?応募が増える理由と費用・作り方の解説にも整理している。

採用動画の費用感——
湘南の小さなサロンが選べる3つの型

施術の合間に自然な笑顔で会話する美容室スタッフの様子

美容室・サロンは中小企業の中でもさらに小規模な事業者が多く、採用にかけられる予算も限られる。以下に、私たちが実際に提案することが多い3つの型を、費用の目安とともに整理する。

尺の目安 費用目安 向いているサロン
スタッフ紹介ショート型(内製) 15〜60秒 実質数千円〜(スマホ撮影) まず1本、低予算で試したい店
スタッフ密着ミニドキュメンタリー型 2〜3分 20万〜50万円程度 採用ページやSNSで差別化したい店
会社紹介+複数スタッフインタビュー型 3〜5分 30万〜80万円程度 複数名を積極採用中・複数店舗展開の店

会社紹介・インタビュー型の価格帯は、業種を問わない採用動画全体の相場感とも大きくずれない(採用動画の費用相場はいくら?|湘南の中小企業向け価格ガイドで詳しく解説している)。ただし美容室の場合、スタッフ本人がスマホで撮る「スタッフ紹介ショート型」から始めても十分に効果が見込める点が特徴だ。予算をかけられない店ほど、まずは内製の1本から試してほしい。

よくある質問

Q. 採用動画は何分くらいが目安ですか?

A. スタッフ紹介であれば15秒〜1分程度のショート動画で十分に効果が見込める。応募検討の材料として使う採用ページ用なら2〜3分程度にまとめるのが目安だ。長ければよいわけではなく、飽きずに見終えられる長さを優先してほしい。

Q. カットやカラーの技術力をアピールしなくていいのですか?

A. 技術紹介が不要というわけではないが、優先順位は人柄・雰囲気のほうが上だ。技術は入社後の研修やポートフォリオで伝えられるが、「この職場で働く自分」がイメージできるかどうかは、動画でなければ伝わりにくい。

Q. スタッフの顔出しに抵抗がある場合はどうすればいいですか?

A. 全員の顔を大きく映す必要はない。手元や後ろ姿、店内の空気感を中心に構成し、出られるスタッフだけ短く登場する形でも十分に人柄は伝わる。無理強いはせず、出演できる範囲で企画を組み立てることをすすめる。

まとめ

美容師の有効求人倍率5.73倍という数字が示すとおり、美容室・サロンの採用は「求人を出せば人が来る」時代ではすでにない。そんな中で応募を増やす採用動画は、技術力の高さを競うものではなく、そこで働く人の人柄と一日の空気を、自然体で見せるものだと私たちは考えている。

moovyの2026年調査が示すように、求職者が動画に求めているのは「仕事のやりがい」「1日の流れ」「職場の雰囲気」であり、いずれも技術デモでは伝えられない情報だ。まずはスタッフ1人の1日に密着したショート動画を、スマホでいいので1本作ってみることをすすめる。

本格的な採用動画を検討する段階になったら、費用の内訳や規模感を相談してみてほしい。私たちも無料相談を受け付けているので、湘南でサロンの採用に悩んでいるなら、まず何を見せるべきかを言語化するところから、気軽に声をかけてほしい。

クリニック・治療院の動画集客|医療広告のルールと湘南の始め方

湘南のクリニックの明るい受付・待合室とさりげなく撮影する動画制作クルー

「動画で集客したい気持ちはあるが、医療広告のルールが厳しくて何を撮っていいか分からない」——湘南エリアのクリニックや整骨院・治療院の院長と話していると、この壁にぶつかっている人が多い。飲食店や美容室であれば撮って出しで良かった映像も、医療・施術の現場では同じようにはいかない。

結論から言えば、クリニック・治療院でも動画集客は使える。ただし「治療効果をアピールする動画」ではなく「来院前の不安をやわらげる動画」に狙いを絞る必要がある。ここを取り違えると、集客どころか広告規制に抵触するリスクを抱えることになる。

この記事では、患者側が医療機関の情報発信に何を求めているかを示す調査データと、クリニック・治療院それぞれに適用される広告規制という一次情報をもとに、規制の枠内で「効く動画」を作るための考え方を制作者の視点で解説する。

  • 結論:クリニック・治療院の動画集客は「治療効果の訴求」ではなく「来院前の不安解消」に絞ると規制と両立しやすい
  • 口コミサイト利用患者の87.6%が「医療機関がSNSで情報発信してくれると助かる」と回答している(カルー株式会社調査)
  • クリニックは医療法の医療広告ガイドライン、整骨院・接骨院は柔道整復師法と、適用される規制の枠組みが異なる

患者は医療機関の動画発信を求めている——ただし見たい中身は「治療の宣伝」ではない

カルー株式会社が2024年5月1日〜14日に病院口コミ検索サイト利用者293名を対象に実施した調査によると、「医療機関がSNSで情報発信をしてくれると助かる」と回答した患者は87.6%にのぼる。発信を望むSNSはLINEが57.7%で最多、次いでYouTubeが51.8%と、動画メディアへの期待も高いことが分かる。

注目したいのは、同調査でYouTubeコンテンツとして最も興味を持たれているのが「病気・治療法の解説」で78.3%と突出している点だ。患者が動画に求めているのは、施術風景の華やかな演出ではなく「自分の症状や不安について、専門家がどう考えているか」という実用的な情報だと私たちは見ている。ここを押さえられれば、規制を過度に恐れなくても「求められている動画」は十分に作れる。

動画を作る前に知っておきたい規制の壁——クリニックと整骨院・治療院では枠組みが違う

クリニックと治療院で異なる広告規制の枠組みを表すフラットイラスト

ここが最も誤解されやすいポイントだが、「クリニック(医業・歯科医業)」と「整骨院・接骨院・治療院」では、動画・広告に適用される法律そのものが異なる。同じ「医療っぽい情報発信」でも、根拠となるルールが別物だと理解しておく必要がある。

クリニックには医療法にもとづく医療広告ガイドラインが適用される。厚生労働省が公開する「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」は令和7年3月に第5版が作成されており、YouTube動画やSNS投稿における具体的なNG・OK事例が拡充されている。とりわけ「患者の体験談」を紹介すること自体が原則として禁止されている点は、動画企画の段階で見落としやすい。

一方、整骨院・接骨院・鍼灸院などの治療院は柔道整復師法などの規制対象で、広告できる事項(施術者の氏名・住所、施術所の名称・電話番号・所在地など)が限定的に列挙される仕組みになっている。医療広告ガイドラインとは条文の立て付けが異なるため、「クリニックはOKだったから治療院も同じでよい」という判断はできない。以下に、両者の違いを整理する。

区分 主な根拠法令 動画で特に注意したい点
クリニック(医業・歯科医業) 医療法・医療広告ガイドライン 患者の体験談・ビフォーアフター・効果の保証表現は原則禁止
整骨院・接骨院・治療院 柔道整復師法など 広告できる事項自体が限定列挙。範囲外の訴求は避ける

どちらの立場でも共通するのは「疑わしい表現は事前に判断に迷わず確認する」姿勢だ。動画は一度公開すると拡散しやすい分、企画の段階で線引きを決めておくことが結果的に一番の近道になる。

規制の中で「効く動画」に絞り込む考え方

動画で発信してよい内容とよくない内容を仕分けるチェックリストのフラットイラスト

規制を踏まえると、クリニック・治療院の動画は「治療の効果を語る」のではなく「来院までの不安を減らす」ことに徹するのが安全かつ効果的だ。私たちが企画するときに軸にしているのは、次のような切り口である。

撮って発信しやすいテーマの例

  • 院内・受付・待合室の雰囲気(初めての来院で一番不安なのは「どんな場所か分からないこと」)
  • 院長・スタッフの人柄が伝わる自己紹介(治療内容ではなく、人となり)
  • 予約から来院、受付までの流れの案内(初診のハードルを下げる)
  • 一般的な症状の解説・セルフケアの豆知識(個別の治療結果に触れない範囲で)

逆に、施術中の患者の様子をそのまま見せる動画や、「こんなに良くなりました」という体験談的な演出は、たとえ患者本人の同意があっても医療広告ガイドライン上グレー〜アウトになりやすい。効果を語りたい気持ちをぐっとこらえ、「安心して来院できる」という一段手前の情報に絞ることが、結果的に規制と集客の両立につながる。

撮影の現場では、私たちはカメラの存在感をできるだけ消すことを意識している。目立たない場所にカメラを置き、スタッフや院内の雰囲気を過度に演出せず自然体で撮ることで、患者にとっても「作り込まれた宣伝」ではなく「実際の空気感」が伝わる動画になる——これは業種を問わず私たちが現場で大切にしている考え方だ。

短尺動画での見せ方という点では、業種は異なるが美容室・サロンがショート動画で新規客を増やすにはで扱った「宣伝色を抑えて日常を見せる」考え方が参考になる部分も多い。

湘南のクリニック・治療院が今日から始められる一歩

湘南の治療院でスタッフが自然体で患者に対応している様子

動画は検索エンジンだけでなく、AI検索(AIO)や地図アプリからも見つけられる時代になっている。動画がどのように見つけられるかという全体像はAI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるかでも解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

まず取り組みやすいのは、院内・受付の雰囲気を1分程度で紹介する動画を1本作ることだ。治療効果に触れる必要がないため規制上の判断もしやすく、初診の患者が最も知りたい「どんな場所か」という不安に直接答えられる。多業界(呉服・不動産・アパレル・製造・教育など)で企画から撮影・編集まで手がけてきた経験から言えば、業界特有のルールを最初に整理してから撮影に入る案件ほど、後の修正が少なく済む傾向にある。

動画をどこに置くか迷う場合は、Googleビジネスプロフィールへの掲載やホームページへの埋め込みなど、活用先を先に整理しておくと企画がぶれない。作った動画、どこでどう使う?活用先マップ【完全版】も参考にしてほしい。

よくある質問

Q. 患者さんの「治って良かった」という声を動画で紹介してはいけないのか?

A. クリニック(医業・歯科医業)では、患者の体験談を広告として紹介すること自体が医療広告ガイドライン上原則禁止されている。整骨院・治療院でも効果を保証する内容は避けるべきで、体験談に頼らない企画に切り替えることをすすめる。

Q. 整骨院・接骨院はクリニックより規制がゆるいのか?

A. ゆるいわけではない。柔道整復師法では広告できる事項自体が限定列挙されており、枠組みが異なるだけで、範囲外の訴求ができない点は同様に注意が必要だ。

Q. 動画制作にどれくらいの本数から始めればいいか?

A. まずは院内紹介・スタッフ紹介など1〜2本で十分だ。規制上の線引きが明確な企画から着手し、反応を見ながら本数を増やしていくのが安全な進め方だ。

まとめ

カルー株式会社の調査が示すように、患者側は医療機関からのSNS・動画発信を望んでいる。一方で、クリニックには医療広告ガイドライン、整骨院・治療院には柔道整復師法という、それぞれ異なる規制の枠組みが存在する。この2つを踏まえたうえで「治療効果を語る動画」ではなく「来院前の不安を減らす動画」に狙いを絞れば、規制と集客は十分に両立できる、というのが私たちの見立てだ。

湘南エリアでクリニック・治療院を運営しているなら、まずは自院がどちらの規制の枠組みに属するのかを確認したうえで、院内紹介やスタッフ紹介といった「安心を伝える動画」から企画を言語化することをすすめる。

どこまでが表現できる範囲か迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。規制を踏まえた企画づくりから、無理のない範囲で一緒に考えていきたい。

飲食店の販促に動画は効くのか|湘南の店が今日から使える活用法

湘南の飲食店の厨房で仕込みをする手元とそれをさりげなく撮影するカメラ

「動画を作れば飲食店も集客できると聞くが、うちのような小さな店で本当に効果があるのか」——湘南エリアで飲食店を営むオーナーと話していると、この疑問を投げかけられることが少なくない。

結論から言えば、動画は飲食店の販促に効く。ただし「動画を作れば何でも効く」わけではなく、効くのは消費者が普段から見ている動画の文脈に合った動画だけだ。宣伝色の強い作り込んだCM風の映像は、むしろ見向きもされないことが多い。

この記事では、飲食店のSNS活用に関するアンケート調査と、動画視聴という行動そのものがどれだけ社会に根づいているかを示す公的統計という2つの一次データから「動画は本当に効くのか」を検証したうえで、飲食店で実際に反応が取れる動画の中身と、無理なく続けるための始め方までを制作者の視点で解説する。

  • 結論:動画は飲食店の販促に効くが、「効果を実感できるかどうか」はSNSをやっているかどうかより中身で分かれている
  • 飲食店経営者の79.1%がInstagramを活用する一方、効果を実感しているのは48.3%にとどまる(飲食店ドットコム調査)
  • YouTubeの利用率は81.5%、TikTokも36.7%に達し、動画視聴はもはや一部の若年層だけの習慣ではない(総務省調査)

飲食店経営者が「動画は本当に効くのか」と迷う理由——SNS活用と効果実感のギャップ

飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード運営)が2024年5月15日〜20日に飲食店経営者・運営者393名(72%が1店舗運営、東京49.9%・首都圏67.3%)を対象に実施した調査によると、SNSでは「Instagram」が79.1%と最も多く活用されており、実に98.6%の飲食店が何らかの形で自店のSNSを運用している。集客・認知拡大の手段として、ほぼ全ての飲食店がすでにSNSに取り組んでいるという状況だ。

ところが同じ調査で、Instagram運用によって集客・認知拡大の効果を実感していると答えたのは48.3%にとどまる。8割近い飲食店がSNSを運用していながら、効果を実感できているのは半分に満たない——このギャップこそが「動画は本当に効くのか」という疑問の正体だと私たちは見ている。運用していないから効かないのではなく、運用していても中身が伴っていないケースが多いということだ。それでも52.5%が「さらに注力したい」と回答しており、多くの飲食店が可能性自体は感じていることも分かる。

消費者は動画を「見て終わり」にしていない——動画視聴という習慣そのものの広がり

SNS活用率と効果実感のギャップを表すフラットイラスト

総務省情報通信政策研究所が2026年6月26日に公表した「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、YouTubeの利用率は全年代で81.5%、TikTokも36.7%、Instagramは54.8%に達している。動画共有サービスは、もはや若年層だけが使う特別なメディアではなく、幅広い世代の生活に溶け込んだ日常的な情報収集の入り口になっている。

この数字が意味するのは、飲食店を探す・選ぶという行為自体が、検索窓に文字を打ち込むだけでなく、動画を眺めながら「気になる店」を見つけていく行動に置き換わりつつあるということだ。メニューの写真を並べただけのプロフィールと、実際に厨房や店内の空気が伝わる動画があるプロフィールとでは、見た瞬間の説得力がまるで違う。

以下に、飲食店で反応が取れやすい動画の種類と、尺・向いている媒体の目安を整理する。

動画の種類 尺の目安 向いている媒体
仕込み・調理の手元 15〜30秒 TikTok・Instagramリール
看板メニューの紹介 15〜30秒 TikTok・YouTubeショート
店主・スタッフの人柄 20〜40秒 Instagram・YouTube
店内の雰囲気・空気感 15〜30秒 Googleビジネスプロフィール・Instagram

「効く動画」と「なんとなく続けている動画」の違い

湘南の飲食店で料理を自然な様子で盛り付けるスタッフ

SNS運用率と効果実感のギャップを踏まえると、飲食店の動画で分かれ目になるのは「何を撮るか」より「どう撮るか」だと私たちは考えている。宣伝としてきれいに作り込んだ紹介映像より、仕込み中の手元や、常連客とのちょっとしたやり取りをそのまま切り取った映像のほうが、見る側の反応は良い傾向にある。

私たちが撮影で常に意識しているのは、カメラの存在をできるだけ消すことだ。目立たない場所にカメラを置き、スタッフに「カメラを意識させない自然体」を心がけてもらう——現場感覚として、この自然さこそが動画で信頼を生む一番の近道だと感じている。宣伝然としたカット割りより、普段どおりの一場面のほうが結果的に見られる、というのが私たちの実感だ。

効きにくい動画の共通点

逆に反応が伸びにくいのは、テロップと音楽で作り込みすぎたCM風の動画や、料理を一切見せずに店主の説明だけで終わる動画だ。消費者は動画に「情報」だけでなく「その場の空気」を求めている。

こうした短尺動画での集客の考え方は、業種は違えど美容室・サロンがショート動画で新規客を増やすにはで扱った内容とも重なる部分が多いので、あわせて参考にしてほしい。Googleマップからの来店につなげたい場合は、Googleマップ(MEO)×動画で地域集客を強くするも参考になる。

無理なく続けるための実践ステップ

スマートフォンの動画から来店につながる流れを示すフラットイラスト

動画というと特別な機材や撮影スキルが必要に思えるが、実際に必要な工程はシンプルだ。以下の順で進めれば、スマートフォン1台からでも始められる。

  1. 自店の一番の強み(メニュー・仕込み・接客のどれか)を1つだけ決める
  2. 15〜30秒に収まる一場面をスマートフォンで撮影する
  3. TikTok・Instagramリール・Googleビジネスプロフィールなど反応が見える媒体に投稿する
  4. 週1本を目安に、3〜6か月は同じテーマで続けて反応を比較する

動画をどこでどう使うか全体像を先に整理しておきたい場合は、作った動画、どこでどう使う?活用先マップ【完全版】も参考にしてほしい。

よくある質問

Q. 動画は毎日投稿しないと効果が出ないのか?

A. 毎日投稿する必要はない。週1本を目安に3〜6か月続け、反応の出るテーマを見極めるほうが優先度が高い。

Q. 撮影機材にお金をかけたほうがいいのか?

A. 最初の一本はスマートフォンの手持ち撮影で十分だ。機材より、普段の一場面を自然体で撮ることのほうが反応に直結する。

Q. どのSNSから始めればいいか?

A. 利用率の高いYouTube・Instagramに加え、若年層への新規リーチを狙うならTikTokも候補になる。まずは1つに絞って継続することをすすめる。

まとめ

飲食店ドットコムの調査が示すように、8割近い飲食店がすでにSNSに取り組みながら、効果を実感できているのは半分に届いていない。一方で総務省の調査が示す通り、動画を見るという行動そのものは世代を問わず生活の一部になっている。動画は効くか効かないかではなく、消費者が普段見ている動画の文脈に合わせられるかどうかで結果が分かれる、というのが私たちの見立てだ。

湘南のような顔の見える経済圏では、店の宣伝文句よりも、現場のありのままの空気のほうが強い説得力を持つ。まずは自店の動画が「見せるための映像」になっていないか、普段の一場面をそのまま撮れているかを振り返ることをすすめる。

どの一場面を切り取ればいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。無理のない範囲で、続けられる動画活用の形を一緒に考えていきたい。

観光DXと地域PR動画の潮流|湘南の事業者が押さえるべき変化

湘南の海岸沿いの町並みを俯瞰で捉えたドローン視点の風景

観光協会や商店会の集まりで「うちの地域も動画で盛り上げたいが、観光DXという言葉が先行していて何から手をつければいいのか分からない」という声を聞く機会が増えている。

結論から言えば、観光庁が進める観光DXの本丸は予約・決済システムやデータ分析だが、その手前にある「地域の魅力をどう伝え、見つけてもらうか」という入り口の部分で、動画コンテンツの重要性はむしろ増す一方だ。

この記事では、観光庁が掲げる観光DXの狙い、実際に拡散した自治体PR動画の一次データ、そして訪日外国人が動画をどれだけ情報源として頼っているかを一次情報で押さえたうえで、湘南の事業者が観光DXの流れをどう自分ごと化できるかを、制作者の現場感覚も交えて解説する。

  • 結論:観光庁の観光DXは予約・データ基盤の整備が中心だが、その手前で「見つけてもらう」入り口を担うのは地域PR動画である
  • 訪日外国人が出発前に役立った情報源は「動画サイト」21.4%で、SNS(21.9%)や親族・知人(22.8%)に迫る規模(JNTO調査・2023年時点)
  • 北九州市のPR動画「COME ON!関門!」は公開から2年余りで再生1億回を突破しており、地域PR動画の拡散力は自治体規模でも実証済み

観光DXの本丸はデータ基盤、その入り口を担うのが動画

動画を起点に予約・データ活用へつながる観光DXの流れを示すフラットイラスト

観光庁は「持続可能な観光地域づくり戦略」のなかで観光DXの推進を掲げ、その目的を「旅行者の利便性向上及び周遊促進、観光産業の生産性向上、観光地経営の高度化」と説明している。具体的には、宿泊や体験の予約・決済をシームレスに行える地域サイトの構築、DMOにおける「旅マエ・旅ナカ・旅アト」のデータ分析、地域単位でのレベニューマネジメントの推進などが柱になっている。

これらは主に予約システムやデータ基盤の整備であり、動画そのものが観光DXの中心施策として名指しされているわけではない。ただし、私たちが現場で見ている限り、こうした基盤がどれだけ整っても、旅行者がその地域を「知り」「行きたい」と思う最初のきっかけがなければ、そもそも予約サイトにたどり着かない。観光DXが整える「受け皿」の手前にある「発見される入り口」を担っているのが、地域PR動画だと私たちは捉えている。観光・地域PR動画そのものの作り方については観光・地域PR動画とは?人を呼び込む映像の作り方で解説しているので、あわせて読んでほしい。

地域PR動画は本当に拡散するのか——北九州市の事例に見る規模感

地域PR動画の拡散力を示す実例として、北九州市・下関市が制作した関門海峡PRムービー「COME ON!関門!」がある。2017年3月に公開されたこの動画は、北九州市の発表によれば2019年7月7日時点で再生回数が100,088,455回に達し、「1億回」を突破した。英語のセリフを中心に据え、「関門」という地名をとにかく知ってもらうことに絞り込んだシンプルな構成が特徴で、その後多言語版を含めて再生回数はさらに伸びている。

1本の地域PR動画が多言語・多地域へ拡散する様子を示すフラットイラスト

以下に、この事例の推移を整理する。

確認時点 累計再生回数 主な特徴
2019年7月7日時点 約1億回 単一言語(英語セリフ中心)で「関門」の認知に特化
2022年6月時点 約4億回 6言語版の合計。日本語・英語・タイ語・韓国語・繁體中文・簡体中文に展開

数字の規模は自治体の投下予算や偶発的なバイラルの要素も大きく、そのまま中小の事業者や観光協会に当てはまるわけではない。ただし「メッセージを一つに絞り込む」「余力に応じて多言語で展開の余地を残す」という設計の考え方自体は、湘南のような地域でPR動画を作るときにも参考になる視点だと私たちは考える。

訪日外国人にとって動画は情報源としてどれだけ重要か

JNTO(日本政府観光局)がまとめた訪日旅行の実態データでは、訪日外国人が出発前に役立ったと答えた情報源として、「日本在住の親族・知人」が22.8%、「SNS」が21.9%、「動画サイト」が21.4%という結果が出ている(2023年時点)。動画サイトは、個人のブログや従来型の旅行ガイドブックと肩を並べるか、それ以上に重要な情報源になっている計算だ。

この数字が示すのは、観光DXがどれだけ予約や決済の仕組みを整えても、その手前で「動画を見て行きたいと思う」きっかけ自体は、口コミやSNSと並ぶ比重で動画に委ねられているということだ。地域の宿泊施設や飲食店にとっても、自社の魅力を映像で発信することは、観光DXの恩恵を受け取るための前提条件になりつつある。SNSでの集客の考え方については湘南・大磯のSNS集客術|地域ブランドで選ばれる中小企業になる方法でも詳しく取り上げている。

湘南の事業者は観光DXの流れをどう自分ごと化するか

湘南の宿の入り口をミラーレスカメラで撮影するビデオグラファー

では湘南のような、北九州市規模の予算を持たない地域の事業者や観光協会は、この流れにどう向き合えばよいのか。私たちが撮影で大切にしているのは、作り込みすぎた宣伝映像よりも、現場の自然な空気をそのまま拾うことだ。カメラの存在をできるだけ意識させない場所に置き、スタッフに自然体でいてもらうことを心がけている——これは私たちの現場感覚として、美容室の撮影でも観光・地域PRの撮影でも変わらない考え方だ。

具体的には、観光協会が地域の祭りや商店街の日常風景を撮る場合も、旅館やゲストハウスが宿の朝の空気を撮る場合も、飲食店が仕込みの様子を撮る場合も、「見せたいものを作り込む」よりも「そこにある本物の空気を撮る」ほうが、結果的に見る人の心に残りやすいというのが私たちの現場感覚だ。

地域PR動画を作るときにまず押さえておきたいのは次の3点だ。

  1. 伝えたいメッセージを一つに絞り込む(欲張って詰め込まない)
  2. 誰に見てもらいたいか(観光客なのか、移住検討者なのか)を先に決める
  3. YouTubeやSNSへの投稿後、自社サイトや観光協会のページにも同じ動画を置き、文字情報を添えて検索・AI経由でも見つけてもらえるようにする

この「文字情報を添えて見つけてもらう」という視点はAI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つけられるか|湘南版でも詳しく解説している。

よくある質問

Q. 観光DXと地域PR動画は同じものか?

A. 同じではない。観光DXは主に予約・決済システムやデータ分析による観光地経営の高度化を指す施策で、地域PR動画はその手前にある「知ってもらう・行きたいと思ってもらう」入り口を担うコンテンツだ。両者は補完関係にある。

Q. 地域PR動画はどのくらいの規模の事業者でも効果があるのか?

A. 北九州市の事例のような数億回再生は自治体規模の予算とバイラル要素があってこそだが、メッセージを一つに絞り込む・自然な現場の空気を撮るという設計の考え方は、規模を問わず地域の小さな事業者にも応用できる。

Q. 訪日外国人向けに動画を作る場合、何語で用意すべきか?

A. 必ずしも多言語版を最初から揃える必要はない。まずは日本語で「その地域・その店にしかない魅力」を自然な形で撮り、余力があれば主要言語の字幕を足していく順番で十分だ。

Q. 動画を作った後、観光DXの恩恵をどう受け取ればよいか?

A. 動画をYouTubeやSNSに置くだけでなく、自社サイトや観光協会のページにも同じ動画と文字による要約を併記しておくことをすすめる。検索エンジンやAI検索からも見つけてもらいやすくなり、観光DXが整備する予約・情報基盤ともつながりやすくなる。

まとめ

観光庁が進める観光DXの中心は予約・決済システムやデータ分析による観光地経営の高度化だが、そうした基盤が整っても、旅行者がその地域を「知り」「行きたい」と思う入り口がなければ意味を持たない。

北九州市のPR動画が公開から2年余りで再生1億回を超えた事例や、訪日外国人の2割超が動画サイトを出発前の情報源として挙げているデータは、地域PR動画がその入り口として無視できない存在であることを示している。

湘南の事業者にとっても、作り込みすぎない現場の空気を撮り、メッセージを一つに絞り込み、文字情報を添えて発信することが、観光DXの流れに乗るための現実的な一歩になる。まずは自分たちの地域・お店の「一番伝えたいこと」を一つに絞り込むことから始めてみてほしい。どこから手をつければいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみることをすすめる。

AI検索(AIO)時代に動画コンテンツはどう見つかるか|湘南版

スマートフォンでAI検索の要約結果を一緒に確認する湘南の事業者と動画制作者

「うちの動画、YouTubeにはアップしているが、それがGoogleの検索結果とどう関係しているのか正直よく分からない」——湘南エリアの事業者と話していると、この手の戸惑いを聞く機会が増えている。

結論から言えば、検索エンジンはいま「リンクの一覧を並べる」ものから「AIが要約して答える」ものへと姿を変えつつあり、その変化のなかで動画は「見てもらう」だけでなく「AIに読み取られ、回答の材料として引用される」対象になり始めている。動画をアップロードして終わりにしていると、この新しい検索の土俵に乗れないまま埋もれてしまいかねない。

この記事では、AI検索(AIO)がどれほどの速さで広がっているかを一次データで押さえたうえで、AIがどんな動画を選んで引用しているのか、そして湘南の事業者が今日から取り組める実務のポイントを、制作者の現場感覚も交えて解説する。

  • 結論:日本のAI Overview表示率は2026年4月時点で全検索の47%、前年同月比2.4倍に拡大している
  • AIが動画を引用するとき、その94%は長尺の説明的な動画で、ショート動画はわずか5.7%にとどまる
  • 動画は「クリックさせる」設計から「AIに正しく理解・引用させる」設計への切り替えが必要になっている

なぜ今、動画にもAI検索(AIO)対策が必要なのか

SEO分析ツールを提供するAhrefsの「AI Overview Tracker」(2026年4月版)によれば、日本市場でGoogle検索結果にAI Overview(AIによる要約)が表示される割合は全検索の47%に達し、前年同月比で2.4倍に拡大した。半分近くの検索で、ユーザーは個別サイトのリンク一覧より先に、AIがまとめた回答をまず目にしている計算になる。

この流れは、検索結果をクリックしない「ゼロクリック検索」の広がりとも重なる。株式会社博報堂DY ONE 次世代検索研究所が2025年11月に実施した「AI検索白書2026」の調査では、ビジネスシーンでAI検索サービスを利用する人は29.9%(前回2025年3月調査の9.4%からおよそ3倍)に増え、生成AIの回答のみ、または生成AIへの追加質問だけで情報収集を完結させた「ゼロクリックサーチ」該当者は23.9%、およそ4人に1人にのぼった。

自社サイトへのクリックを起点に考えてきた従来のSEOの感覚だけでは、この4人に1人には最初から情報が届いていないことになる。動画についても、「サイトに来てもらってから見てもらう」動線に加えて、「AIの回答の中で紹介・引用される」動線を意識する必要が出てきている。

AIはどんな動画を「引用」しているのか——長尺動画が94%

検索結果の一覧がAIによる要約ボックスに置き換わる様子を示すフラットイラスト

AI検索エンジンが動画そのものを実際にどう扱っているかを示すデータもある。SEO/AIO分析を手がけるOtterly.AIが2026年3月に公開した「YouTube AI Citation Study 2026」は、ChatGPT・Google AI Overviews・AI Mode・Perplexity・Microsoft Copilot・Geminiの6つのAIプラットフォームを対象に、30日間で1億件を超えるAI引用を分析したものだ。それによると、ソーシャルメディア全体の引用のうちYouTube動画が占める割合は31.8%で、プラットフォーム別ではPerplexityで38.7%、Google AI Overviewsで36.6%がYouTube動画への引用だった。

注目すべきは動画の「長さ」による差だ。同調査では、AIによる引用の94%が長尺(ロングフォーム)動画に集中し、TikTokやYouTube Shortsのような短尺動画への引用はわずか5.7%にとどまった。さらに、Google AI Overviews上でYouTube動画が引用される際、動画内の該当シーンへ直接飛べる「タイムスタンプ付き」で示されるケースが73%にのぼるという。

この結果は、私たちが現場で見ている感覚とも重なる。ショート動画は認知を一気に広げる瞬発力に長けているが、AIが「回答の根拠」として参照するのは、ハウツーや解説、インタビューのように、ひとつの問いにきちんと答えきる構成を持った動画のほうだ。ショート動画の位置づけについては2026年のショート動画トレンド|湘南の事業者が押さえる3つの変化でも触れているので、両方の使い分けを考えるうえで参考にしてほしい。

以下に、動画の形式ごとのAI引用のされやすさを整理する。

動画の種類 AI引用に占める割合 向いている役割
長尺動画(ハウツー・解説・インタビュー等) 94% 検索意図に正面から答える「参照元」
ショート動画(TikTok・YouTube Shorts等) 5.7% 認知拡大・SNS上での接触機会づくり

数字が示す通り、AI検索に「引用される」ことを狙うなら、まず優先すべきは長尺側の動画をきちんと用意することだ。

AIに見つけてもらう動画をどう作るか——実務のポイント

美容室でカメラの存在を意識させないように自然な様子を撮影するビデオグラファー

AIが動画を引用するときにまず頼っているのは、動画そのものの画や音ではなく、タイトル・概要欄・字幕・チャプターといった「文字情報」だ。動画がどれだけ良い内容でも、そこに何が写っているかをAIが文字から読み取れなければ、回答の材料として選ばれる可能性は低くなる。

実務としてまず取り組みたいのは次の3点だ。

  1. 動画タイトルと概要欄に、その動画が答えている「問い」を具体的な言葉で書く
  2. YouTubeでチャプター(タイムスタンプ)を区切り、見どころごとに何が分かるかを示す
  3. 自社サイトの記事本文でも、動画の内容を文章で要約して添える

私たちが撮影で大切にしているのは、カメラの存在をできるだけ消し、目立たない場所にカメラを置いて、スタッフや職人にカメラを意識させすぎないことだ。作り込まれた宣伝映像よりも、現場の自然な言葉や手の動きのほうが、見る人にも——そしておそらくAIにとっても——「本物の情報」として伝わりやすいというのが、私たちの現場感覚だ。美容室の撮影現場でも同じ考え方で臨んでおり、スタイリストと客の自然なやり取りをそのまま拾うことを意識している。AIとの向き合い方についてはAI動画生成ツールの現在地と人が撮る映像の価値|湘南の事業者向けでも詳しく取り上げている。

ゼロクリック時代に、動画を作る意味はどこにあるのか

1本の動画が複数のAIアシスタントに引用され枝分かれする様子を示すフラットイラスト

ここまでの数字だけを見ると、「クリックされないなら動画を作っても意味がないのでは」と感じるかもしれない。だが、博報堂DY ONEの調査が示すゼロクリックサーチの広がりは、逆に言えば「AIの回答の中で自社の名前や動画が紹介されるかどうか」の重要性が増しているということでもある。

AIの回答の中で自社の動画やサイトが引用元として名前を出されれば、その場でクリックされなくても、後日の指名検索や問い合わせにつながる可能性がある。湘南のように地域内の紹介や口コミが起きやすい商圏では、この「AIの回答の中に登場している」こと自体が、ちょっとした信頼の裏付けになり得る。動画とAI時代の関わり方についてはAI動画・SNS時代に「人が関わる」ことで価値が上がる理由でも論じているので、あわせて読んでほしい。

つまりAI検索の時代は、動画の意味がなくなる時代ではなく、「誰に何を見せて選ばれるか」の設計をやり直す時代だと私たちは捉えている。

よくある質問

Q. AI検索(AIO)対策として動画は必須か?

A. 必須ではないが、有利に働く。テキストだけのサイトより、動画とそれを説明する文字情報がセットになっているほうがAIに内容を理解されやすく、回答の引用元として選ばれやすくなる。

Q. ショート動画はAI検索に不利ということか?

A. 認知拡大やSNS上での接触機会づくりには引き続き有効だ。ただしOtterly.AIの調査ではAI引用の94%が長尺動画に集中しており、AIの「回答の根拠」としては長尺・説明的な動画のほうが選ばれやすい。両者は役割を分けて使うのがよい。

Q. 動画をAIに見つけてもらうために最低限やるべきことは?

A. 動画タイトルと概要欄に、その動画が答えている問いを具体的に書き、チャプター(タイムスタンプ)を区切ることだ。AIはまず文字情報から動画の中身を理解する。

Q. AI Overviewの表示率は今後も上がり続けるのか?

A. 少なくとも2026年前半までは急拡大が続いており、業種によっては表示率が8割を超える領域も出てきている。今後は精度重視の調整局面に入る可能性もあるが、AI検索が検索体験の一部として定着した流れ自体は変わらないと見てよい。

まとめ

日本のAI Overview表示率が半年足らずで2倍以上に拡大し、ビジネスシーンでのAI検索利用も3倍近くに増えている以上、動画コンテンツの見つけられ方が変わりつつあるのは間違いない。

そのなかでAIが実際に引用しているのは、瞬発力のあるショート動画よりも、ひとつの問いにきちんと答えきる長尺動画だ。タイトル・概要欄・チャプターといった文字情報を整え、動画の中身をAIが読み取れる形にしておくことが、これからの動画運用の土台になる。

まずは自社の動画のタイトルと概要欄が、来訪者だけでなくAIにも「何を答えている動画か」が伝わる書き方になっているかを、一度見直すことをすすめる。どこから手をつければいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。

展示会・商談で効く会社紹介動画の作り方|湘南の中小企業ガイド

展示会に向けて会社紹介動画を確認する食品メーカーの担当者と制作者

展示会に出展したものの、名刺は集まるのに商談につながらない――そう漏らす湘南エリアの経営者と話す機会が、ここ最近増えている。

結論から言えば、展示会や商談の場で会社紹介動画を使う企業は着実に増えており、動画活用で得られる効果として最も多く挙げられているのは「展示会・イベントでの集客数の増加」だ。動画は今、ブースの装飾品ではなく、商談化率そのものに関わる実務ツールになりつつある。

この記事では、展示会・商談の現場で実際に効く会社紹介動画をどう作るか、一次データと制作者としての現場感覚の両方から解説する。

  • 結論:動画活用に効果ありと答えた企業は60.6%、効果の中身で最多は「展示会・イベントでの集客数増加」
  • ブース用の動画と商談テーブルで見せる動画は、尺も役割も分けて作るのが基本
  • 動画をきっかけに得た名刺情報の活用まで設計しないと、商談化率は伸びない

なぜ今、展示会・商談に会社紹介動画が効くのか

アルファノート株式会社が2026年6月9日〜10日に実施した「BtoB企業における動画マーケティングの実態調査」(動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者500名が対象)によると、動画活用で「期待以上の効果があった」「ある程度の効果があった」と回答した企業は合わせて60.6%にのぼる。そのなかで最も多く挙げられた効果が、35.0%が回答した「展示会・イベントでの集客数の増加」だった。

同じ調査では、来期以降に「商談時の会社・サービス紹介動画」を制作予定と回答した企業も15.2%あり、ブース集客だけでなく商談の場そのものに動画を持ち込む動きが広がっていることがうかがえる。

来場者は限られた時間で多くのブースを回る。文字と写真だけのパネルの前で足を止めてもらうより、動いている画面のほうが「自分に関係がありそうか」を一瞬で判断させやすい――これは私たちが現場で撮影してきた実感とも一致する。

「ブース用」と「商談テーブル用」は分けて作る

1本の会社紹介動画がブース用と商談用に枝分かれする様子を示す図解

展示会で使う動画は、実は1本で全部を賄おうとすると中途半端になりやすい。私たちが制作するときは、通行人の足を止める「ブース入口用」と、着席した相手に信頼を積み上げる「商談テーブル用」を、最初から別物として設計する。

ブース入口用は、音声なしでも伝わる字幕付きの短尺ループが基本だ。会場は周囲の音が大きく、来場者はイヤホンをしていないことが多いため、映像だけで内容が伝わる作りにする必要がある。一方、商談テーブル用は名刺交換のあと椅子に座って見せる動画なので、代表者のインタビューや製造工程など、じっくり見てもらえる内容に踏み込める。

以下に、用途別の尺と使いどころを整理する。

種類 尺の目安 使いどころ
ブース入口ループ映像 15〜30秒 通行中の来場者の足を止める。字幕付き・無音再生前提
商談テーブル用会社紹介動画 2〜4分 代表者インタビュー・実績・製造工程で信頼を積み上げる
追客用ダイジェスト動画 1分前後 名刺交換後のお礼メールに添付し、記憶を呼び戻す

表の3種類を全部そろえる必要はないが、少なくともブース用と商談用の2本立てにするだけで、動画1本を無理に使い回すより手応えが変わってくる。この考え方は、商品・サービス紹介動画とは?売上につながる作り方を解説で扱った「見る人の状況に合わせて動画の役割を分ける」発想と共通する。

動画をきっかけにした商談を逃さない――名刺・追客とのセット設計

名刺交換から動画による追客までの流れを示す図解

動画を用意しただけでは、商談化率は上がらない。株式会社ハンモックが2022年12月13日〜14日に実施した「展示会出展の課題に関する実態調査」(展示会出展経験のある営業・マーケティング担当者301名が対象、2022年12月26日発表)では、展示会で接点を得た顧客との商談化率について「20%以下」と回答した企業が52.5%を占めた。

同調査では、名刺情報を「あまり活用できていない」「全く活用できていない」と答えた企業がおよそ4割にのぼる一方、デジタルツールで名刺情報を管理・活用している企業は8割以上が平均商談化率10%以上を達成していた。つまり、ブースでどれだけ良い動画を見せても、そのあとの名刺管理と追客の設計が伴わなければ、動画の効果は商談の手前で止まってしまう。

私たちがすすめているのは、商談テーブルで見せた動画をそのままお礼メールに添付し直す方法だ。展示会場での記憶は数日で薄れるが、動画を再送するだけで「あのブースの人だ」と思い出してもらいやすくなる。湘南のように地域内での紹介や再会が起きやすい商圏では、この一手間が次の商談につながることも少なくない。

展示会で効く会社紹介動画、撮影・準備の実務ポイント

食品加工の検品ラインを撮影するビデオグラファー

展示会用の会社紹介動画で見せるべきなのは、パンフレットには載らない「現場の空気」だ。食品加工業であれば検品ラインの手元、雑貨や染物のような伝統工芸に近い業種であれば職人の指先――カタログ写真では伝わらない部分こそ、動画で見せる価値がある。

カメラを意識させないことが自然な表情につながる

私たちが撮影で常に意識しているのは、カメラの存在をできるだけ消すことだ。目立たない場所にカメラを置き、スタッフや職人にカメラを意識させすぎないようにすると、普段どおりの自然な表情や手の動きが映る。展示会用の動画は「作り込まれた宣伝」よりも、この自然体の説得力のほうが来場者の信頼を得やすいというのが、私たちの現場感覚だ。

工場や作業場の現場風景をしっかり見せる作り方については、工場見学動画が営業を変える|平塚・湘南の製造業BtoB戦略でも詳しく触れているので、あわせて参考にしてほしい。

撮影を計画するときは、次の順で決めていくとブレにくい。

  1. 展示会の出展目的(新規リード獲得か既存客へのアピールか)を言語化する
  2. ブース用・商談用のどちらを先に作るか優先順位を決める
  3. 現場の「見せたい瞬間」を1〜2シーン選ぶ(検品・仕込み・接客など)
  4. 撮影後、追客メール用の短尺ダイジェストも同じ素材から切り出す

よくある質問

Q. 展示会用の会社紹介動画は何分くらいが適切か?

A. ブース前で足を止めてもらう入口用は15〜30秒、商談テーブルで見せる動画は2〜4分が目安だ。長尺のドキュメンタリー的な映像は、商談後の個別送付用として別に用意するのが現実的だ。

Q. 動画があれば商談化率は上がるのか?

A. 動画単体で商談化率が上がるわけではない。ハンモックの調査では商談化率20%以下と回答した企業が過半数を占めており、動画は名刺情報の管理・追客の仕組みとセットで設計して初めて効果が出る。

Q. 展示会用の動画は内製と外注どちらで作るべきか?

A. ブース内ループのような編集主体の動画は内製でも対応しやすいが、商談テーブルで信頼を積み上げる会社紹介動画は代表者インタビューや現場撮影を含むため、外注も含めて検討したい。判断基準は動画制作は内製と外注どちらが得か|平塚の中小企業向け費用比較で整理しているので参考にしてほしい。

Q. 展示会シーズンの直前でも間に合うか?

A. ブース入口用の短尺ループであれば、既存の撮影素材や写真から2〜3週間程度で用意できることが多い。商談テーブル用のインタビュー撮影を含める場合は、出展日から逆算して1か月以上の余裕を持って相談することをすすめる。

まとめ

動画活用に効果ありと答えた企業が6割を超え、なかでも展示会・イベントの集客数増加が効果の筆頭に挙がっている以上、展示会に会社紹介動画を持ち込むこと自体はもう特別な工夫ではなくなりつつある。

一方で、商談化率の過半数が20%以下にとどまっているというデータが示すとおり、動画は名刺管理や追客とセットで設計して初めて力を発揮する。ブース用・商談用・追客用と役割を分けて考えるだけで、同じ撮影素材でも使い道は大きく広がる。

まずは次の出展で「何を見せたら来場者の足が止まるか」「商談テーブルで何を見せたら信頼してもらえるか」を、社内で言葉にしてみることをすすめる。どのシーンを撮ればいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。