
「動画を作れば飲食店も集客できると聞くが、うちのような小さな店で本当に効果があるのか」——湘南エリアで飲食店を営むオーナーと話していると、この疑問を投げかけられることが少なくない。
結論から言えば、動画は飲食店の販促に効く。ただし「動画を作れば何でも効く」わけではなく、効くのは消費者が普段から見ている動画の文脈に合った動画だけだ。宣伝色の強い作り込んだCM風の映像は、むしろ見向きもされないことが多い。
この記事では、飲食店のSNS活用に関するアンケート調査と、動画視聴という行動そのものがどれだけ社会に根づいているかを示す公的統計という2つの一次データから「動画は本当に効くのか」を検証したうえで、飲食店で実際に反応が取れる動画の中身と、無理なく続けるための始め方までを制作者の視点で解説する。
- 結論:動画は飲食店の販促に効くが、「効果を実感できるかどうか」はSNSをやっているかどうかより中身で分かれている
- 飲食店経営者の79.1%がInstagramを活用する一方、効果を実感しているのは48.3%にとどまる(飲食店ドットコム調査)
- YouTubeの利用率は81.5%、TikTokも36.7%に達し、動画視聴はもはや一部の若年層だけの習慣ではない(総務省調査)
飲食店経営者が「動画は本当に効くのか」と迷う理由——SNS活用と効果実感のギャップ
飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード運営)が2024年5月15日〜20日に飲食店経営者・運営者393名(72%が1店舗運営、東京49.9%・首都圏67.3%)を対象に実施した調査によると、SNSでは「Instagram」が79.1%と最も多く活用されており、実に98.6%の飲食店が何らかの形で自店のSNSを運用している。集客・認知拡大の手段として、ほぼ全ての飲食店がすでにSNSに取り組んでいるという状況だ。
ところが同じ調査で、Instagram運用によって集客・認知拡大の効果を実感していると答えたのは48.3%にとどまる。8割近い飲食店がSNSを運用していながら、効果を実感できているのは半分に満たない——このギャップこそが「動画は本当に効くのか」という疑問の正体だと私たちは見ている。運用していないから効かないのではなく、運用していても中身が伴っていないケースが多いということだ。それでも52.5%が「さらに注力したい」と回答しており、多くの飲食店が可能性自体は感じていることも分かる。
消費者は動画を「見て終わり」にしていない——動画視聴という習慣そのものの広がり

総務省情報通信政策研究所が2026年6月26日に公表した「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、YouTubeの利用率は全年代で81.5%、TikTokも36.7%、Instagramは54.8%に達している。動画共有サービスは、もはや若年層だけが使う特別なメディアではなく、幅広い世代の生活に溶け込んだ日常的な情報収集の入り口になっている。
この数字が意味するのは、飲食店を探す・選ぶという行為自体が、検索窓に文字を打ち込むだけでなく、動画を眺めながら「気になる店」を見つけていく行動に置き換わりつつあるということだ。メニューの写真を並べただけのプロフィールと、実際に厨房や店内の空気が伝わる動画があるプロフィールとでは、見た瞬間の説得力がまるで違う。
以下に、飲食店で反応が取れやすい動画の種類と、尺・向いている媒体の目安を整理する。
| 動画の種類 | 尺の目安 | 向いている媒体 |
|---|---|---|
| 仕込み・調理の手元 | 15〜30秒 | TikTok・Instagramリール |
| 看板メニューの紹介 | 15〜30秒 | TikTok・YouTubeショート |
| 店主・スタッフの人柄 | 20〜40秒 | Instagram・YouTube |
| 店内の雰囲気・空気感 | 15〜30秒 | Googleビジネスプロフィール・Instagram |
「効く動画」と「なんとなく続けている動画」の違い

SNS運用率と効果実感のギャップを踏まえると、飲食店の動画で分かれ目になるのは「何を撮るか」より「どう撮るか」だと私たちは考えている。宣伝としてきれいに作り込んだ紹介映像より、仕込み中の手元や、常連客とのちょっとしたやり取りをそのまま切り取った映像のほうが、見る側の反応は良い傾向にある。
私たちが撮影で常に意識しているのは、カメラの存在をできるだけ消すことだ。目立たない場所にカメラを置き、スタッフに「カメラを意識させない自然体」を心がけてもらう——現場感覚として、この自然さこそが動画で信頼を生む一番の近道だと感じている。宣伝然としたカット割りより、普段どおりの一場面のほうが結果的に見られる、というのが私たちの実感だ。
効きにくい動画の共通点
逆に反応が伸びにくいのは、テロップと音楽で作り込みすぎたCM風の動画や、料理を一切見せずに店主の説明だけで終わる動画だ。消費者は動画に「情報」だけでなく「その場の空気」を求めている。
こうした短尺動画での集客の考え方は、業種は違えど美容室・サロンがショート動画で新規客を増やすにはで扱った内容とも重なる部分が多いので、あわせて参考にしてほしい。Googleマップからの来店につなげたい場合は、Googleマップ(MEO)×動画で地域集客を強くするも参考になる。
無理なく続けるための実践ステップ

動画というと特別な機材や撮影スキルが必要に思えるが、実際に必要な工程はシンプルだ。以下の順で進めれば、スマートフォン1台からでも始められる。
- 自店の一番の強み(メニュー・仕込み・接客のどれか)を1つだけ決める
- 15〜30秒に収まる一場面をスマートフォンで撮影する
- TikTok・Instagramリール・Googleビジネスプロフィールなど反応が見える媒体に投稿する
- 週1本を目安に、3〜6か月は同じテーマで続けて反応を比較する
動画をどこでどう使うか全体像を先に整理しておきたい場合は、作った動画、どこでどう使う?活用先マップ【完全版】も参考にしてほしい。
よくある質問
Q. 動画は毎日投稿しないと効果が出ないのか?
A. 毎日投稿する必要はない。週1本を目安に3〜6か月続け、反応の出るテーマを見極めるほうが優先度が高い。
Q. 撮影機材にお金をかけたほうがいいのか?
A. 最初の一本はスマートフォンの手持ち撮影で十分だ。機材より、普段の一場面を自然体で撮ることのほうが反応に直結する。
Q. どのSNSから始めればいいか?
A. 利用率の高いYouTube・Instagramに加え、若年層への新規リーチを狙うならTikTokも候補になる。まずは1つに絞って継続することをすすめる。
まとめ
飲食店ドットコムの調査が示すように、8割近い飲食店がすでにSNSに取り組みながら、効果を実感できているのは半分に届いていない。一方で総務省の調査が示す通り、動画を見るという行動そのものは世代を問わず生活の一部になっている。動画は効くか効かないかではなく、消費者が普段見ている動画の文脈に合わせられるかどうかで結果が分かれる、というのが私たちの見立てだ。
湘南のような顔の見える経済圏では、店の宣伝文句よりも、現場のありのままの空気のほうが強い説得力を持つ。まずは自店の動画が「見せるための映像」になっていないか、普段の一場面をそのまま撮れているかを振り返ることをすすめる。
どの一場面を切り取ればいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。無理のない範囲で、続けられる動画活用の形を一緒に考えていきたい。