
「メニュー紹介の動画を撮ってSNSに上げてみたものの、3本目あたりでネタが尽きて、気づけば半年更新が止まっている」——湘南で飲食店を営む経営者からこの手の相談を受けることは少なくない。撮影自体は難しくない。難しいのは、続けることだ。
結論から言えば、メニュー紹介動画を内製で続けられるかどうかは、才能やセンスの問題ではなく「型」を持っているかどうかで決まる。撮る内容をその都度考えるのではなく、あらかじめ数パターンの型を用意しておけば、ネタ切れも編集の負担も大きく減らせる。
この記事では、飲食店の動画発信がなぜ止まりやすいのかを外食業界の統計から確認したうえで、内製を続けるための具体的な型と撮影のコツ、そして内製の限界を感じたときの判断基準までを、制作者として現場に立つ私たちの視点で解説する。
- 結論:内製が続くかどうかは「ネタの型」を持っているかで決まる
- 撮影は完璧を狙わず、決まった構図・手順をルーティン化するのが継続の近道
- ネタ切れ・時間不足を感じたら、編集だけ外注するハイブリッドも選択肢になる
なぜ今、飲食店にメニュー紹介動画が必要なのか
外食業界は今、これまでになく厳しい環境に置かれている。東京商工リサーチの調査によると、2025年の飲食業倒産は1,002件に達し、1996年以降の30年間で初めて年間1,000件を超えた。うち物価高が要因の倒産は136件で前年比126.6%増、人手不足倒産も55件で前年比161.9%増と、いずれも2倍以上に急増している。
帝国データバンクの調査でも、2026年上半期の飲食店倒産は473件で前年同期を15件上回り、過去最多を更新した。負債5,000万円未満の小規模倒産が全体の78.0%を占め、大手チェーンとの体力差が広がっていると指摘されている。値上げが難しい個人店・小規模店ほど、価格以外の理由で選ばれる仕組みが必要になっているということだ。
一方で、動画を見る習慣はすでに生活の一部になっている。総務省情報通信政策研究所の調査では、YouTubeの利用率は80.8%、TikTokも33.2%に達している。グルメサイトの評価やクーポンだけでなく、料理が湯気を立てる様子や店主の手元をSNSで見て来店を決める客は、今後も増える一方だろう。
内製が続かない、3つの壁
「必要なのは分かっている、でも続かない」という店には、共通する壁がある。現場で経営者と話していると、大きく3つに整理できると感じる。
ネタ切れの壁
毎回「今日は何を撮ろう」と一から考えていると、数本で疲弊する。営業後のわずかな時間で企画から撮影まで済ませようとすれば、なおさらだ。
時間の壁
仕込みと営業に追われる飲食店にとって、撮影や編集にまとまった時間を割くのは現実的に厳しい。前述の通り人手不足倒産が急増する業界であり、余力そのものが少ない店が多い。
編集への苦手意識の壁
撮ることまではできても、テロップを入れたりカットをつないだりする編集で挫折する経営者は多い。ここで手が止まり、素材だけがスマホに溜まっていくケースをよく見る。
続けるための具体的なコツ
続けるコツは、毎回ゼロから企画しないことに尽きる。撮る構図・尺・投稿のタイミングをあらかじめ決めておき、「その型に今日のメニューを当てはめるだけ」の状態を作るのが近道だ。

撮影そのものについては、私たちの現場感覚として一つ伝えたいことがある。発信で大事なのは、伝えたいことをできるだけ自然体で伝えることだ。私たちの撮影チームでは、常にカメラを目立たない場所に置き、「カメラを意識させない自然体」を意識して撮影している。飲食店の内製でも同じで、三脚を固定して同じ位置から撮る、店主が普段の動きの延長で調理する——それだけで、身構えた不自然な映像より伝わる仕上がりになることが多い。
編集についても、毎回ゼロから組み立てる必要はない。テロップの位置やBGMの選び方を最初の数本で決めてしまえば、以降は同じテンプレートに当てはめるだけで済む。無料の編集アプリでも、テンプレートを一つ作っておけば作業時間は大きく短縮できる。
- 今週出す一品を決める(仕込みのついでにメモしておく)
- 固定した位置にスマホを置き、いつもの動きのまま調理・盛り付けを撮る
- 使い回すテンプレートにテロップとBGMを当てはめる
- 決めた曜日・時間に投稿する(毎回考えず習慣化する)
ネタに困らない、メニュー動画の「型」
型をいくつか用意しておくと、その日の状況に合わせて選ぶだけで済み、ネタ切れが起きにくい。以下に代表的な型を整理する。

| 型 | 尺の目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 定番メニュー紹介 | 15〜30秒 | 看板メニューを新規客に知らせたいとき |
| 日替わり・黒板告知 | 10〜15秒 | 常連への日々の来店動機づくり |
| 調理シーン密着 | 20〜40秒 | こだわりや技術を伝えたいとき |
表の型を曜日ごとに割り振ってしまうのも一つの方法だ。「月曜は定番、水曜は黒板、金曜は調理シーン」のように決めておけば、当日はカメラを構えるだけで済む。
内製の限界を感じたら——外注・ハイブリッドの検討基準
型を作っても、営業が忙しい時期はどうしても手が回らなくなる。無理に続けて営業に支障が出るくらいなら、編集だけ外注する、あるいは月1〜2本だけプロに撮ってもらい残りは内製で埋めるハイブリッドも現実的な選択肢だ。内製と外注どちらが得かの判断基準は本数ではなく継続期間で考えるとよく、単発の力を借りたい場面と、日常的な発信を回す場面を分けて考えると判断しやすい。
実際に動画が来店にどう効くのかについては、飲食店の販促に動画は本当に効くのかで来店経路の観点から整理しているので、あわせて読んでほしい。
よくある質問
Q. スマホの動画で十分ですか?一眼カメラは必要ですか?
A. メニュー紹介動画であれば最近のスマホで十分だ。重要なのは画質よりも、固定した構図と自然な調理の動きが撮れているかどうかである。
Q. どのくらいの頻度で投稿すればよいですか?
A. 毎日である必要はなく、週1〜2本を決まった曜日に続ける方が挫折しにくい。型を曜日に割り振っておくと迷わず続けられる。
Q. スタッフに撮影・編集を任せても大丈夫ですか?
A. 型とテンプレートさえ共有できていれば問題ない。むしろ担当を固定した方が、判断に迷う時間が減り継続しやすくなる。
まとめ
飲食業の淘汰が進むなかで、価格以外の理由で選ばれる店になる重要性は増している。メニュー紹介動画はその手段として有効だが、続かなければ意味がない。
続けるための鍵は、毎回考えるのをやめて型に落とし込むことだ。撮る構図、投稿する曜日、編集のテンプレート——この3つを最初に決めてしまえば、日々の負担は驚くほど軽くなる。
まずは自店のメニューを型に当てはめてみて、無理なく回せるかどうかを1ヶ月試してみることをすすめる。それでも手が回らないと感じたら、編集や月1本の撮影だけを外部に頼るという選択肢も、遠慮なく検討してほしい。