
求人サイトに募集を出して、店の入口にも「アルバイト募集」の貼り紙をした。それなのに、2週間たっても応募の電話が鳴らない。やっと来た応募者も、面接の日に現れなかったり、入って数週間で辞めてしまったり。仕込みと接客で手一杯の中、採用のことまで考えるのは本当に大変ではないでしょうか。
アルバイト募集に動画を使うと変わるのは、応募する人の「不安」です。時給やシフトの条件は求人票の文字で伝わります。でも、どんな人と、どんな空気の中で働くのかは、文字ではなかなか伝わりません。開店前の厨房や、レジ横で交わす何気ない会話を30秒見るだけで、応募する側は「ここで働く自分」を想像しやすくなります。
この記事では、アルバイト探しをしている人が何を見てお店を決めているのかを調査の数字で確かめたうえで、求人動画で撮りたい場面と、載せる場所、撮るときの注意を、平塚・大磯でお店の動画を撮っている私の目線でお話しします。
「応募が来ない」のは
お店だけのせいではありません
まず、いまの採用がどれくらい難しいのかを数字で見ておきます。厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」によると、2026年8月のハローワークでの有効求人倍率(パートタイムを含む常用、原数値)は、仕事全体では1.06倍でした。それに対して、飲食物調理の仕事は2.21倍、接客・給仕の仕事は2.31倍、商品販売の仕事は1.72倍です。
有効求人倍率は、仕事を探している1人に対して求人がいくつあるかを表す数字です。接客・給仕で2.31倍ということは、1人の応募者を2つ以上のお店が取り合っている計算になります。飲食店や小売店の採用が苦しいのは、店主の努力が足りないからではなく、そもそも取り合いになっている仕事だからです。
採用する側の実感も同じです。株式会社マイナビの「アルバイト採用活動に関する企業調査 2025年」(2025年12月調査、アルバイト採用担当者1,500人)では、アルバイトの人手が足りないと感じている人が57.5%と、半分を超えていました。
取り合いになっている以上、時給を上げるのも一つの手です。ただ、個人のお店にとって時給を何十円も上げ続けるのは簡単ではありません。そこで考えたいのが、同じ条件でも「このお店がいい」と思ってもらう材料を増やすことです。
応募する人は
求人票の「外側」を知りたがっています
株式会社マイナビの「アルバイト就業者調査(2026年)」(2026年2〜3月調査、全国のアルバイト就業者9,000人)では、いまのアルバイト先に決めた理由も聞いています。いちばん多かったのは「応募後にすぐに企業から連絡がきた」で39.9%。続いて「すぐに合否通知の連絡がきた」が30.1%でした。
その下を見ていくと、「採用担当者が話しやすい雰囲気だった」が23.2%、「仕事内容の詳細が知れて働くイメージが沸いた」が13.5%、「どんな人が働いているか知れて安心できた」が11.5%と続きます。どれも、求人票の時給やシフトの欄には書けない情報です。
同じ調査では、すぐに辞めてしまった経験がある人に理由を聞いています。上位には「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」が挙がっていました。入ってみて「思っていたのと違う」と感じることが、早く辞める大きなきっかけになっているわけです。
応募の前に職場の空気が分かれば、合わない人は最初から応募しませんし、合いそうな人は安心して応募できます。動画がいちばん役に立つのは、この「入る前と入った後のずれ」を小さくするところだと私は考えています。

実際に私も多くの飲食店経営者の方からお話を聞いていますが、お仕事を初めてみると「こんなことまでするとは思わなかった」「こんな仕事もあるのか」といったギャップが生じて離職に繋がることが多いようです。
求人動画で撮りたいのは
この三つの場面です
求人動画といっても、お店の紹介動画のようにきれいに作り込む必要はありません。応募する人が見たいのは、自分がそこに立ったときの景色です。迷ったら、次の三つから撮ってみてください。
開店前の準備と、一日の流れ
シャッターを開けて、テーブルを拭いて、黒板にその日のおすすめを書く。仕込みの鍋から湯気が上がる。最初の日に何をするのかが分かるだけで、未経験の人の不安はぐっと小さくなります。「ランチのピークはこれくらい忙しい」という場面も、隠さずに少し入れておくと、入ってからの「こんなはずじゃなかった」を防げます。
一緒に働く人の手元と声
どんな人が働いているかは、顔を大きく映さなくても伝わります。カウンター越しの「お願いします」「はーい」というやりとり、片付けをしながらの短い会話、手元の動き。年齢や雰囲気が何となく分かれば十分です。店主ご自身が「最初はこれだけ覚えてもらえれば大丈夫です」と一言話す場面があると、応募する側はぐっと話しかけやすくなります。
休憩や帰り道のような、求人票に書けないこと
まかないが出るお店なら、まかないの一皿。休憩をとる場所。湘南の海沿いのお店なら、仕事帰りに見える夕方の海。こうした小さなことは、条件の欄には書きにくいものの、「ここで働いてみたい」と思うきっかけになります。

撮るときに私が大切にしているのは、働いている人が自然体でいられることです。私たちの撮影チームでは、いつも目立たない場所にカメラを置き、カメラを意識させない自然体の姿を撮るようにしています。求人動画で見せたいのはいつもの職場なので、スタッフに演技をしてもらう必要はありません。スマホで撮る場合も、棚の上などに立てかけて回しっぱなしにしておくほうが、いい表情が残りやすくなります。
とくにおすすめな撮り方としてはキッチンの隅やカウンターにアクションカメラを置いて回しておくこと。アクションカメラは物理的に小さい分目立ちにくく、気にならないため
いつもの自然な調理風景が撮れます。
撮る前に確かめたいことと
動画を載せる場所
求人動画は、お店の外の人に職場を見せるものです。撮影を始める前に、次の四つだけは確かめておいてください。
- 映るスタッフに、どこに載せるのか、いつまで載せるのかを伝えて了解をもらう
- お客様の顔や、伝票・予約表など個人の情報が映り込んでいないかを確かめる
- 動画の中で話す時給やシフトの条件が、求人票の内容と食い違っていないかを確かめる
- 募集が終わったら、動画を消すか「募集は終了しました」と分かるようにする
三つめと四つめは、2022年10月に施行された改正職業安定法で、求人の情報を正確で新しい状態に保つことが求められるようになったこととも関係します。動画で「時給は〇〇円から」と話したあとに条件を変えたら、動画も合わせて見直してください。
載せる場所は、まずお店のInstagramが手軽です。リールで流すだけでなく、プロフィールのハイライトに「スタッフ募集」としてまとめておくと、あとから見に来た人にも届きます。求人サイトによっては動画を載せられる枠があるので、使っているサイトで確認してみてください。店頭の貼り紙に動画へつながるQRコードを添えるのも、通りがかった人に見てもらう方法です。
一つだけ忘れないでほしいのは、先ほどの調査で決め手のいちばん上にあったのが「応募後にすぐに企業から連絡がきた」だったことです。動画で応募したい気持ちが高まっても、返事が何日も来なければ、その人は別のお店に決めてしまいます。動画を載せるときは、応募が来たらその日のうちに返事をする段取りもあわせて決めておくと安心です。
積極的に動画を活用しておくことで面接時に「いつもSNSを見ています」という会話からスタートすることが結構多いです。
ほかの飲食店の店主向けの記事は、飲食店・カフェの記事一覧にまとめています。
よくある質問
Q. 求人動画は、スマホで撮ったものでも大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。求人動画で見たいのは映像のきれいさより、どんな人とどんな空気の中で働くかです。スマホを棚などに置いて、開店前の準備をそのまま撮るところから始めてみてください。
Q. スタッフが動画に出るのを嫌がったら、どうすればいいですか?
A. 無理に出てもらう必要はありません。手元や後ろ姿だけでも職場の空気は伝わります。撮る前に、どこに載せるのか、いつまで載せるのかを伝えて、了解をもらってから撮影してください。
Q. 動画を載せれば、時給を上げなくても応募は増えますか?
A. 動画だけで時給や通いやすさの差を埋められるとは限りません。ただ、条件が近いお店同士なら、働く様子が想像できるお店のほうが応募するときの不安は小さくなります。条件を整えたうえで、最後のひと押しとして使うのがおすすめです。
まとめ
アルバイト募集に動画を使うと変わるのは、応募する人が感じている「どんな職場なんだろう」という不安です。飲食や接客の仕事は人の取り合いになっていて、応募する人は時給やシフトに加えて、どんな人と、どんな空気の中で働くのかを知りたがっています。それを伝えられるのが動画です。
次の一歩として、明日の開店前の準備を、スマホを棚に置いて10分だけ撮ってみてください。その中から30秒を選んで、Instagramのハイライトに「スタッフ募集」として置いておくだけでも、求人票だけのときとは伝わるものが変わります。
自分たちで撮るのが難しいとき、プロに頼むとどう進むのかは相談までの流れを描いた漫画で見られます。求人動画を作るかどうか決まっていなくても、話を聞くところから始めます。
















