
新しいメニューができたら写真を撮って、インスタに載せる。営業日のお知らせも欠かさない。それなのに、いいねはいつもの顔ぶれだけで、「インスタを見て来ました」というお客様にはなかなか会えない。そんなもどかしさを感じている店主の方も多いのではないでしょうか。
リールで撮るべきなのは、写真では止まってしまうものです。ふたを開けた瞬間の湯気、鉄板の上で脂がはぜる音、朝の仕込みで包丁がまな板を叩くリズム。そして、お客様が「この席に座ったら、こう見えるんだ」と想像できる景色。この二つがそろうと、見た人の頭の中で、お店に行く予定が少しずつ形になっていきます。
この記事では、飲食店のInstagramリールで何を撮ればよいか、どう撮れば最後まで見てもらえるか、そして見た人に足を運んでもらうための仕上げ方を、平塚・大磯でお店の動画を撮っている私の目線でお話しします。
「今日は何を載せよう」で
手が止まるのは、あなただけではありません
飲食店向けの情報サイト「飲食店ドットコム」が2024年5月に会員の飲食店393人に聞いた調査では、力を入れて運用しているSNSとしてInstagramを挙げたお店が79.1%ありました。Instagramで集客や認知の広がりに効果を感じているお店は48.3%です。
同じ調査で、SNSを運用していて難しいと感じることのいちばん上に来たのは「投稿の内容やネタを考えること」で、42.5%でした。投稿している中身は、営業日や営業時間のお知らせが79.6%、新メニューのお知らせが72.9%と続きます。
つまり、多くのお店がインスタを頑張っていて、半分ほどは手ごたえを感じている。その一方で、4割以上のお店が「何を載せるか」で悩んでいる、ということです。
営業日や新メニューのお知らせは、常連さんにとって大切な情報です。ただ、まだお店を知らない人にとっては「知らないお店の、知らないメニューのお知らせ」になってしまいます。リールでは、お知らせとは別に、知らない人でも思わず手を止めてしまう場面を撮るほうが、新しいお客様との出会いにつながりやすいと私は考えています。
リールで撮りたいのは
「写真だと止まってしまう」瞬間です
写真でも料理のおいしそうな見た目は伝わります。動画にしかできないのは、時間の流れと音です。ネタに迷ったら、次の四つから選んでみてください。
ふたを開ける、湯気が立つ
土鍋のふたを持ち上げた瞬間や、どんぶりに熱いつゆを注いだ瞬間。湯気は一瞬で消えてしまうので、写真ではうまく残せません。数秒の動画なら、できたての温度まで伝わります。湯気は後ろから光が当たると白く浮かび上がるので、窓を背にして撮るのがおすすめです。
それだけではなく、光の入り方や撮影時の角度、あらゆる側面から綺麗に見える画を意識することが飲食店の発信におけるシズル感に繋がります。
焼ける音、揚がる音
鉄板の上で脂がはぜる音、揚げ油の中で衣がしゅわっと鳴る音。こうした音は、それだけでお腹がすく人もいるほどです。音楽で上書きせず、調理の音をそのまま残すか、音楽を小さめにして重ねてみてください。
開店前の仕込み
朝いちばんに出汁を引く鍋、黙々と野菜を刻む手元、黒板にその日のメニューを書く手。お客様が普段は見ることのない時間には、「ここまで手をかけているんだ」と伝わる力があります。値上げをしたばかりのお店ほど、この場面を見てもらう意味は大きいと思います。
席から見える景色
見落とされがちなのが、お客様の目線で撮った映像です。入口の引き戸を開けて、カウンターに座り、目の前で料理が置かれるまでを一本で撮る。海沿いのお店なら、窓の外の夕方の光を少しだけ入れる。見た人が「自分が座ったらこう見える」と想像できると、行ってみたい気持ちがぐっと具体的になります。

どれも、特別な機材がなくてもスマホで撮れる場面です。ほかの飲食店向けの話は飲食店向けの記事一覧にもまとめています。
最後まで見てもらうために
気をつけたいこと
リールは、フォロワー以外の人の画面にも流れるのが強みです。誰の画面にどのリールを出すかについて、Instagramは2023年5月に公式ブログ「Instagram Ranking Explained」で考え方を説明しています。
それによると、リールのおすすめで重く見られるのは、見る人がこれまでにどんなリールに「いいね」や保存、シェアをしてきたか。そして、使われている音や映像の中身、そのリールがどれくらい反応を集めているか、といった点です。あわせて、他のアプリの透かしロゴが入ったリール、周りに枠がついたリール、音が消されたリールは、表示されにくくする対象として挙げられています。
お店に置きかえると、気をつけたいことは三つです。ほかの動画アプリで作った動画を、ロゴが入ったまま載せ直さないこと。縦長の画面いっぱいに撮って、黒い枠を残さないこと。そして、調理の音を消してしまわないこと。どれも、撮り方と書き出し方を少し変えるだけで避けられます。
もう一つ、撮影で私が大事にしているのは、伝えたいことをできるだけ自然体で伝えることです。私たちの撮影チームでは、目立たない場所にカメラを置いて、カメラを意識させない自然な姿を撮るようにしています。店主やスタッフがカメラに向かって構えてしまうと、いつもの手つきや表情が消えてしまうからです。出来るだけ自然体で撮る方が視聴者にも伝わりやすく、訴求がしやすくなります。
「行ってみたい」を
「行く」に変える仕上げ方
リールを見て「おいしそう」と思った人が、実際にお店まで来るには、もうひと押しが必要です。見終わった瞬間に「どこにあって、いつ開いているのか」が分からないと、その気持ちは次の動画に流れていってしまいます。

投稿する前に、次の四つだけ確かめてみてください。
- キャプションの1行目に、店名と最寄り駅(「平塚駅から徒歩5分」など)を書いたか
- 投稿に位置情報(お店の場所)を付けたか
- そのメニューがいつ食べられるか(ランチだけ、週末限定など)を書いたか
- プロフィールに営業時間と予約の方法を載せているか
湘南のお店は、週末に海へ遊びに来た人と、近所の常連さんの両方がお客様です。遠くから来る人ほど、駅からの道のりや駐車場の有無を気にします。動画の最後の数秒で、店の外観や入口ののれんを映しておくと、初めての人でも迷わずに来やすくなります。
どの場面が反応されるかを試したいときは、Instagramが2024年12月に公式に発表した「トライアルリール」という機能も役立ちます。フォロワー以外の人にだけリールを見せて、約24時間後に再生数や「いいね」、シェアの数を確かめられる仕組みです。いつものフォロワーさんの画面を埋めずに、湯気と仕込み、どちらの場面が知らない人に響くのかを比べられます。
当社では、飲食店に対してもサポートを行っていますが。やはりSNSにおける動画での発信は客数だけでなく、常連のお客様にも新たな発見をもたらします。
よくある質問
Q. 飲食店のリールは、何秒くらいがいいですか?
A. 決まった正解はありませんが、まずは15〜30秒ほどで、湯気や焼ける音など一つの場面に絞ると最後まで見てもらいやすくなります。慣れてきたら、仕込みから盛り付けまでを少し長めにまとめる回を混ぜてみてください。
Q. 店主が顔を出さないとだめですか?
A. 顔を出さなくても大丈夫です。手元や後ろ姿、調理の音だけでも、お店の空気は十分に伝わります。出したくなったときに、少しずつ映る時間を増やしていけば構いません。
Q. 営業日や新メニューのお知らせは、もう投稿しなくていいですか?
A. お知らせは常連さんにとって大切なので、続けてください。リールでは、お知らせとは別に、まだお店を知らない人が手を止めたくなる場面を撮る、と役割を分けて考えるのがおすすめです。
まとめ
飲食店のリールで撮りたいのは、湯気や音、仕込みの時間のように、写真では止まってしまう瞬間です。そこに「この席に座ったら、こう見える」という景色と、店名や場所が分かる一言を添えると、見た人が実際に足を運ぶところまでつながりやすくなります。
次の一歩として、明日の仕込みの時間に、スマホを棚に立てかけて10分だけ回しっぱなしにしてみてください。その中に、きっと一つは使える場面があります。
自分で撮るのが難しいとき、プロに頼むとどう進むのかは相談までの流れを描いた漫画で見られます。まだ何を撮るか決まっていなくても、話を聞くところから始めます。