動画の予算はいくらが適正か|広告宣伝費の相場から逆算する湘南の目安

湘南の明るい打ち合わせスペースで動画予算のタイムラインを確認する店主と動画制作者

「動画は年間いくら予算を組めばいいのか」——見積もりの相談の場で、私たちが経営者からよく受ける質問だ。相場を知らないまま金額を決めると、周りに合わせて多く払いすぎるか、逆に必要な分すら削ってしまうかのどちらかに傾きやすい。

結論から言えば、動画単体の相場を先に探すよりも、まず「自社の売上に対して広告宣伝費をどれだけ使うのが妥当か」を業種の相場から把握し、そのうちの何割を動画に回すかを考えるほうが、判断がぶれにくい。

この記事では、東京商工リサーチの宣伝費調査データをもとにした業種別の広告費比率、動画広告市場の伸び、そして湘南の店舗・企業がその中で動画予算をどう組み立てればよいかを、制作者の立場から整理する。

  • 結論:動画予算は「売上高に対する広告宣伝費の比率」を業種相場から把握し、その一部を動画に配分する形で逆算するとぶれにくい
  • 売上高に占める宣伝費の割合は全業種平均で1.3%(東京商工リサーチ・2023年度調査)。業種差は大きく、美容系・宿泊関連などは平均を大きく上回る
  • 動画広告市場は2025年に8,855億円(前年比122.2%)まで拡大しており、限られた広告費の中でも動画へ回す比率は高まる傾向にある

まず押さえたい全体像
——日本の広告費と動画の位置づけ

電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日発表)によると、2025年の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)で4年連続で過去最高を更新し、インターネット広告費は4兆459億円(同110.8%)と初めて総広告費の過半数(50.2%)を占めた。そのインターネット広告費の中でも、ビデオ(動画)広告は前年比121.8%の1兆275億円となり、統計開始以来初めて1兆円を突破している。

さらに、サイバーエージェントが2025年11月から2026年1月にかけて実施した「国内動画広告の市場調査」によると、2025年の動画広告市場は8,855億円(前年比122.2%)に達し、2026年には1兆437億円まで伸びると予測されている。特に縦型動画広告は2025年に前年比155.9%の2,049億円まで成長しており、スマートフォンでの視聴を前提にした動画の需要が急速に高まっていることがうかがえる。

こうした市場全体の伸びは、湘南の店舗や中小企業にとって直接の予算の目安にはならない。だが「広告費の中で動画に回す比率」が全国的に高まっている流れそのものは、限られた予算の配分を考えるうえで無視できない前提になる。

業種別に見る「広告費は売上の何%か」

売上に対する広告宣伝費の割合を円グラフで示すフラットイラスト

東京商工リサーチが企業の決算データをもとに集計した宣伝費の実態調査(2023年度・148,090社の5年連続データ、単年分析は265,253社が対象、2025年1月公表)によると、売上高に占める宣伝費の割合は全業種平均で1.3%だった。ただし業種によって差は大きく、以下のように整理できる。

以下に、湘南エリアの事業者に関わりの深い業種を中心に、売上高に対する宣伝費比率を整理する。

業種 売上高に占める宣伝費の割合
全業種平均 1.3%
小売業 2.0%
情報通信業 3.1%
職業紹介業 18.8%
化粧品小売業 18.4%

同調査では業種平均の比率に加え、「売上高の5%以上を宣伝費に充てている企業の割合」も業種別に集計しており、結婚式場運営業で66.6%、エステ・美容関連業で47.6%にのぼっている。美容室・エステサロン・結婚式場のように、来店・成約の決め手が「その場の雰囲気や仕上がりが伝わるかどうか」に左右される業種ほど、宣伝費(その中でも動画の比重)を厚めに見ている企業が多いと読み取れる。

一方で製造業・卸売業のようなBtoB色の強い業種は、売上高に占める宣伝費の割合が0.1〜0.2%程度にとどまる傾向がある。これは「動画が不要」という意味ではなく、宣伝費より先に人づて・展示会・既存取引先経由の営業が優先されやすいという業種特性の表れだと私たちは捉えている。展示会・商談での動画活用については展示会・商談で効く会社紹介動画の作り方で詳しく解説している。

自社の年商から動画予算を逆算する早見表

業種相場が分かったところで、実際に自社の年商にあてはめて考えてみる。以下は、東京商工リサーチの比率レンジ(全業種平均1.3%〜、美容・宿泊関連など宣伝費に積極的な業種で5%程度)をもとに、年間の宣伝費目安と、そのうち動画(制作費+配信費)に回す目安を試算したものだ。動画への配分は、私たちが日々の相談の中で「まずはここから」とすすめている広告費全体の3〜5割を目安にしている。

年商 年間宣伝費の目安(比率1.3〜5%) うち動画に回す目安(宣伝費の3〜5割)
1,000万円 13万〜50万円 4万〜25万円
3,000万円 39万〜150万円 12万〜75万円
5,000万円 65万〜250万円 20万〜125万円
1億円 130万〜500万円 40万〜250万円

あくまで目安であり、この通りに使い切る必要はない。ただ「うちは動画に何十万円かけていいのか分からない」という状態から、「業種相場に照らすとこのレンジで検討できる」という状態に変わるだけで、発注時の値付けの妥当性を判断しやすくなる。実際の制作費の内訳は動画制作の費用相場【完全ガイド】もあわせて参考にしてほしい。


予算をどこに厚く配分すべきか
——制作費と運用費の考え方

予算が制作費と広告運用費に分かれる様子を示すフラットイラスト

動画予算の使い道は、大きく分けて「制作費(撮影・編集)」と「運用費(配信・広告出稿)」の2つがある。予算の逆算表を作ったあと、次に悩むのがこの2つの配分だ。

  1. 初年度は資産として残る「会社紹介動画」「採用動画」など単発の制作費を優先的に確保する
  2. 継続発信(SNSショート動画など)は、内製または低コストの外注と組み合わせ、運用費は少額から様子を見て増減する
  3. 広告出稿(SNS広告・YouTube広告)は、まず反応の良かった動画に絞って予算を投じる
  4. 1年運用してみて、反応の良かった配分に翌年の予算を寄せていく

私たちの現場感覚では、予算をかけるべきは機材のグレードそのものよりも、撮影現場で被写体に「カメラを意識させない自然体」を引き出す工夫だと実感している。凝った機材や派手な演出よりも、目立たない場所にカメラを置き、自然な表情や言葉を拾う撮り方のほうが、視聴者の記憶に残りやすい。この考え方は予算規模を問わず、美容室でもクリニックでも宿泊施設でも変わらない。

湘南の店舗・企業が実際に予算を組むときの手順

美容室と小売店の店主が動画制作者と予算計画を話し合う様子

最後に、実際に予算を組む際の手順を整理する。美容室・宿泊施設・小売店・クリニックなど業種は違っても、考え方の骨格は共通している。

まず自社の年間売上高を確認し、業種相場(前述の表)に照らして宣伝費全体の目安を出す。次に、その中で動画に何割回すかを、競合の発信状況や自社の課題(認知不足なのか、来店直前の後押し不足なのか)に応じて決める。認知拡大が課題であれば運用費(広告出稿)の比重を上げ、来店直前の後押しが課題であれば制作費(接客の様子や施術風景が伝わる動画)を厚くする、といった具合だ。

美容室・エステサロンのように東京商工リサーチの調査で宣伝費比率が高めに出ている業種は、動画への投資を積極的に検討する余地が大きい。逆に製造業・建設業のようにBtoB色が強く比率が低い業種でも、展示会や採用の場面に絞って単発の動画を持つことは十分に費用対効果が見込める。業種の平均値はあくまで出発点であり、自社の商流に合わせて調整する姿勢が大切だ。

よくある質問

Q. 動画予算はまず何から決めればいいか?

A. 自社の年間売上高に、業種相場の宣伝費比率(全業種平均1.3%が目安)をかけて宣伝費全体の枠を出し、その3〜5割程度を動画に回すところから逆算するのがすすめやすい。

Q. 宣伝費比率が低い業種(製造業など)は動画に予算をかけなくてよいか?

A. 比率が低いのは業種特性上、広告より人づてや展示会経由の営業が優先されやすいためであり、動画が不要という意味ではない。展示会・採用など目的を絞った単発の動画であれば、比率が低い業種でも費用対効果は見込める。

Q. 動画予算は毎年同じ金額を確保すべきか?

A. 初年度から固定額を決め打ちする必要はない。反応の良かった動画・チャネルに翌年の予算を寄せていく形で、1年ごとに配分を見直すほうが無駄が少ない。

まとめ

動画の予算は、市場全体の伸び(電通調査で動画広告費1兆円超・サイバーエージェント調査で市場8,855億円)を眺めているだけでは決まらない。東京商工リサーチの調査が示すように、業種によって売上高に対する宣伝費比率は0.1%台から18%台まで大きく異なり、まず自社の業種相場を把握することが予算の出発点になる。

次のステップとして、自社の年商と業種相場から宣伝費全体の目安を出し、そのうち動画に回す割合を、認知拡大と来店後押しのどちらが自社の課題かに応じて決めることをすすめる。自社の業種でどのくらいの予算感が妥当か迷う場合は、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。