小売店の動画活用術|湘南で「また来たくなる店」になる方法

湘南の雑貨店で店主がスマートフォンとミニ三脚を使い商品陳列を撮影している様子

「うちみたいな小さな雑貨店やアパレルショップが動画をやっても、大手チェーンには勝てない」——湘南エリアの小売店のオーナーと話していると、そう感じている人は少なくない。SNSはなんとなく大手や有名インフルエンサーのものというイメージが根強く、動画に手を出す発想自体が遠いという声もよく聞く。

結論から言えば、その前提は逆だ。動画は資本力ではなく「店主の人柄」や「その場の空気」で見られるメディアであり、むしろ個人店・小規模店舗のほうが向いている場面が多い。この記事では、総務省・経済産業省という2つの公的統計と、SNS広告経由の購買行動を調べた民間調査という一次データをもとに、小売店にとって動画がなぜ必要なのかを検証し、実際に何を撮ればいいか、どう続ければいいかまでを制作者の視点で整理する。

この記事では、動画視聴・SNS利用の実態データから、EC拡大時代における実店舗の動画の役割、具体的な撮影企画例、無理なく続けるステップまでを一気に解説する。

  • 結論:動画は資本力より「店主の人柄」と「その場の空気」で見られるため、小規模な小売店ほど向いている
  • YouTubeの利用率は80.8%、Instagramも52.6%に達し、動画視聴は幅広い世代の日常的な習慣になっている(総務省調査)
  • SNS広告経由で商品を購入した人の75.1%は「買う予定はなかった」と回答しており、動画は「偶然の来店」を生む力を持つ(リンクアンドパートナーズ調査)

小売店に動画は必要か
——SNS動画がもう「特別」ではない理由

総務省情報通信政策研究所が2025年6月に公表した「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、全年代でのSNS・動画サービスの利用率はLINEが91.1%、YouTubeが80.8%、Instagramが52.6%、TikTokも33.2%に達している。動画共有サービスはもはや若年層だけの習慣ではなく、幅広い世代の生活に溶け込んだ日常的な情報収集の入り口になっている。

さらに株式会社リンクアンドパートナーズが2024年7月に発表した「SNS広告の購買行動調査」(SNS広告経由の購入経験者623人対象)では、動画広告を見て商品を購入した人が全体の55.9%にのぼり、購入者の75.1%が「買う予定はなかった」と回答している。これは、動画が「探していたものを見つける」だけでなく「思いがけず欲しくなる」という衝動的な購買・来店のきっかけを作れることを示している数字だ。実店舗に足を運んでもらう小売店にとって、これは見逃せない意味を持つ。

EC市場が拡大するほど
「リアルな店」の動画が効く理由

スマートフォンの動画から来店・購入につながる流れを示すフラットイラスト

経済産業省が2025年8月に公表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26兆1,225億円(前年比5.1%増)、うち物販系分野は15兆2,194億円(同3.7%増)に達した。ネットで買える選択肢は年々増え続けている。

こう聞くと「ECが伸びるほど実店舗は不利になる」と感じるかもしれないが、私たちの見方は逆だ。何でもネットで買える時代だからこそ、消費者はスマートフォンの中で「行く価値のある店」を先に見極めてから足を運ぶようになっている。店内の雰囲気や店主の人柄、商品の質感が伝わる動画は、EC化が進む世の中で実店舗を選んでもらうための、いわば来店前の「下見」の役割を果たす。以下に、小売店で反応が取れやすい動画の種類と、尺・向いている媒体の目安を整理する。

動画の種類 尺の目安 向いている媒体
新入荷・季節商品の紹介 15〜30秒 TikTok・Instagramリール
商品の使い方・着こなしデモ 20〜40秒 Instagram・YouTubeショート
店主・スタッフの人柄 20〜40秒 Instagram・YouTube
店内・陳列の雰囲気 15〜30秒 Googleビジネスプロフィール・Instagram

実際に何を撮ればいいか
——小売店ならではの企画例

湘南の小さなアパレルショップでスタッフが商品を紹介する様子をミラーレスカメラで撮影する制作者

小売店の動画で私たちが特に反応を感じるのは、商品そのものより「その商品が店主やスタッフの手を通ったとき」の場面だ。雑貨店なら仕入れたばかりの商品を棚に並べる手元、アパレルショップなら店員が実際に袖を通して着こなしを見せる瞬間、農産物の直売所なら朝どれの野菜を並べる様子——どれも台本なしで自然に撮れる素材ばかりだ。

  • 新商品・入荷速報:箱を開けて棚に並べるまでの一連の流れ
  • 使い方・コーディネート提案:実際に使う/着る場面をそのまま見せる
  • 店主・スタッフ紹介:仕入れへのこだわりや接客への想いを短く語ってもらう
  • お客様とのやり取り:許可を得たうえで、常連客との自然な会話の一場面

私たちは呉服・アパレル・不動産・製造・教育など幅広い業種の映像制作に関わってきたが、業種を問わず共通して言えるのは「作り込みすぎた紹介動画」より「自然体の一場面」のほうが反応が良いということだ。撮影で常に意識しているのは、カメラの存在をできるだけ消すこと——目立たない場所にカメラを置き、スタッフに「カメラを意識させない自然体」を心がけてもらう。この自然さこそが動画で信頼を生む一番の近道だと、現場感覚として実感している。

こうした店舗の動画活用の考え方は、業種は違えど大磯の店舗がInstagramで集客するにはで扱った内容とも重なる部分が多いので、あわせて参考にしてほしい。Googleマップからの来店につなげたい場合はGoogleマップ(MEO)×動画で地域集客を強くするも参考になる。

無理なく続けるための実践ステップ

小売店が動画を無理なく続けるステップを表すフラットイラスト

動画というと特別な機材や編集スキルが必要に思えるが、小売店の場合はスマートフォン1台と自然光があれば十分に始められる。以下の順で進めてみてほしい。

  1. 自店の一番の強み(品揃え・接客・店内の雰囲気のどれか)を1つだけ決める
  2. 15〜30秒に収まる一場面をスマートフォンで撮影する
  3. Instagramリール・TikTok・Googleビジネスプロフィールなど反応が見える媒体に投稿する
  4. 週1本を目安に、3〜6か月は同じテーマで続けて反応を比較する

縦型・短尺のどの形式から手をつけるか迷う場合は、リールとショート、結局どっちを選ぶ?も参考にしてほしい。

よくある質問

Q. 商品数が少ない小さな店でもネタは続くか?

A. 続く。商品そのものより「店主・スタッフが商品を扱う場面」がネタになるため、品数の多さよりも撮る視点の工夫のほうが重要だ。

Q. 顔出しをしたくない場合はどうすればいいか?

A. 手元や商品のアップだけでも十分成立する。無理に顔を出す必要はなく、まずは手元の作業や陳列の様子から始めるとよい。

Q. どのSNSから始めればいいか?

A. 利用率の高いInstagram・YouTubeに加え、新規層への露出を狙うならTikTokも候補になる。まずは1つに絞って継続することをすすめる。

まとめ

総務省の調査が示す通り、動画を見るという行動は世代を問わず生活の一部になっている。そしてリンクアンドパートナーズの調査が示すように、動画は「買う予定のなかった人」を動かす力を持つ。経済産業省のデータが示すEC拡大の流れは、実店舗にとって逆風ではなく、動画で「行く価値」を伝えられる店が選ばれる時代への転換だと私たちは捉えている。

湘南のような顔の見える経済圏では、大きな予算をかけた宣伝映像よりも、店主やスタッフの自然な一場面のほうが強い説得力を持つ。まずは自店の一番の強みを1つだけ決めて、スマートフォンで15秒撮ってみることをすすめる。

どの一場面を切り取ればいいか迷ったときは、私たちのような制作者に一度相談してみてほしい。無理のない範囲で、続けられる動画活用の形を一緒に考えていきたい。