
「見積書の金額で発注したはずなのに、納品直前になって追加請求が来た」——湘南エリアで動画制作を発注した事業者から、こうした戸惑いの声を聞くことがある。修正を1回お願いしただけのつもりが、気づけば数万円の追加費用になっていたというケースも珍しくない。
結論から言えば、動画制作の追加費用のほとんどは「修正回数」「撮影の延長」「素材の差し替え」という、あらかじめ決まったパターンから発生する。逆に言えば、発注前にこの3つを見積書・発注書で確認しておけば、大半のトラブルは防げるということだ。
この記事では、動画制作で追加費用が発生しやすい代表的な項目を価格帯とともに整理し、なぜ「言った言わない」のトラブルが起きるのかを制度の面から確認したうえで、契約前に確認しておきたいチェックポイントを、制作の現場に立つ私たちの視点でまとめる。
- 結論:追加費用の大半は「修正回数超過」「撮影延長」「素材差し替え」の3パターンに集約される
- 2024年11月施行のフリーランス新法により、発注時の取引条件の書面明示が発注事業者側の義務になっている
- 業種によって適正な発注金額の相場感が異なるため、自社の業種の相場を知っておくと予算感がぶれにくい
追加費用が発生しやすい代表的な項目
——価格帯の目安
動画制作の見積もりには、通常「修正2〜3回まで」といった条件が織り込まれている。それを超えたとき、あるいは当初の想定にない作業が発生したときに、追加費用が上乗せされる。私たちが現場で請求することが多い項目を、価格帯とともに以下に整理する。
| 項目 | 発生する場面 | 追加費用の目安 |
|---|---|---|
| 修正回数の超過 | 既定回数(多くは2〜3回)を超えて修正を依頼 | 1回あたり1万〜5万円 |
| 撮影の延長・追加日 | 想定時間内に撮り切れない、後日追加撮影が必要 | 半日3万〜8万円、1日5万〜15万円 |
| ナレーション・BGMの差し替え | 完成後にナレーターや音源を変更 | 1万〜5万円 |
| 交通費・ロケ地使用料 | 遠方ロケ、商業施設や公共空間での撮影 | 実費〜数万円 |
| フォーマット・サイズ変換 | 縦型SNS用・複数尺への書き出し追加 | 1本あたり0.5万〜3万円 |
表の金額はあくまで目安であり、制作会社やフリーランスによって幅がある。重要なのは金額そのものより、「どの項目が、いくらから追加費用になるのか」を発注前に確認しておくことだ。

なぜ「言った言わない」のトラブルが起きるのか
追加費用そのものは悪いことではない。問題は、発注時に条件が明確になっていないために、あとから「そんな話は聞いていない」という認識のズレが起きることだ。特に動画制作会社は小規模事業者やフリーランスが多く、口頭ベースの発注が今も少なくない業界だと私たちは感じている。
この状況に対して、制度面からの後押しも進んでいる。公正取引委員会・中小企業庁が所管する「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、通称フリーランス新法)が2024年11月1日に施行され、発注事業者はフリーランスへの業務委託にあたって、業務内容・報酬額・支払期日などの取引条件を書面または電磁的方法で明示することが義務づけられた(公正取引委員会・中小企業庁「フリーランス・事業者間取引適正化等法 説明資料」)。動画制作をフリーランスの制作者や一人親方に発注する場合、この書面明示は発注事業者側の義務であることを知っておいてほしい。
また、公正取引委員会が2025年5月に公表した令和6年度の下請法運用状況では、支払遅延189件・代金の減額139件・買いたたき106件が改善指導の対象となり、この3類型で禁止行為違反の87%を占めたと報告されている(公正取引委員会「令和6年度における下請法の運用状況」)。金額や条件があいまいなまま取引が進むことが、業界を問わずトラブルの温床になっていることがうかがえる。動画制作でも、見積書や発注書に「追加費用が発生する条件」まで明記してもらうことが、双方にとっての防御線になる。

業種によって変わる、動画制作費用の相場感
追加費用の話と合わせて、そもそもの発注金額の相場感を業種別に知っておくと、見積もりが高いのか妥当なのかを判断しやすくなる。動画制作の発注データを集計する「動画幹事」の調査によれば、動画制作全体の平均発注金額は81.5万円(中央値54.0万円)で、50万〜100万円の価格帯が28%と最多になっている(動画幹事「動画制作の相場・料金」調査)。
業種別に見ると差はさらにはっきりする。同調査では「サービス業・小売業・店舗」の平均制作費用が131.0万円である一方、「人材・コンサル・士業」は70.6万円にとどまるとされている。湘南エリアで見ても、店舗や小売業は撮影点数や商品カットが多くなりがちで、コンサルや士業は取材・インタビュー中心でシンプルに収まる傾向があり、この傾向は実感に近い。

自社の業種の相場感を知らないまま見積もりを見ると、「高い」「安い」の判断が感覚頼りになってしまう。動画制作の費用相場【完全ガイド】もあわせて確認し、種類別の目安を押さえたうえで個別の見積もりを見ることをすすめる。
契約前に確認しておきたい5つのチェックポイント
私たちが小売店から士業・コンサル会社まで多様な業種の制作を担当してきた中で、契約前に確認しておくとトラブルを避けやすいポイントは次の5つだ。
- 修正対応の回数と範囲(「軽微な修正」と「作り直し」の線引きが明記されているか)
- 修正回数を超えた場合の追加費用の単価
- 撮影延長・追加日が発生した場合の費用
- 取引条件を明示した書面(見積書・発注書・契約書のいずれか)が発行されるか
- 納品後の著作権・二次利用の範囲(SNS転載や広告出稿への流用が可能か)
特に5つ目の著作権・使用範囲は見落とされやすい。せっかく作った動画をSNS広告に転用しようとしたら、想定外の追加費用が必要だったというケースもある。内製と外注どちらが得かを検討する段階から、この5点を発注先に確認しておくと、あとから慌てずに済む。
よくある質問
Q. 修正は何回まで無料が一般的ですか?
A. 多くの制作会社・フリーランスで2〜3回までが目安になっている。ただし「軽微な修正」と「構成からの作り直し」を同じ1回として扱うかは発注先によって差があるため、見積もり段階で範囲を確認しておくのがよい。
Q. 追加費用が発生しない見積もりを選ぶべきですか?
A. 一概にそうとは言えない。追加費用ゼロを謳う見積もりほど、当初の作業範囲が小さく設定されていて結局は別途費用がかかる場合もある。金額の大小より、条件が明記されているかどうかで判断することをすすめる。
Q. フリーランスの制作者に直接発注する場合も書面は必要ですか?
A. 必要になる。フリーランス新法により、フリーランスへの業務委託では発注事業者側に取引条件の書面明示義務があるため、個人の制作者に直接依頼する場合ほど書面での確認を意識してほしい。
まとめ
動画制作の追加費用は、修正回数の超過・撮影の延長・素材の差し替えという決まったパターンから発生することが大半だ。金額そのものを恐れるより、どの条件で追加費用が発生するのかを発注前に言語化しておくことが、湘南の事業者にとって一番の防御策になる。
2024年のフリーランス新法施行により、書面での条件明示は発注事業者側にも求められる時代になった。見積もりをもらったら金額だけでなく、修正回数・追加費用の単価・著作権の範囲まで書面で確認する習慣をつけてほしい。
次のステップとして、まずは自社の業種の相場感を把握し、見積書の中で「追加費用が発生する条件」がどこまで明記されているかを確認することをすすめる。判断に迷う場合は、私たちのような制作者に見積書の見方から相談してもらってもかまわない。